私が教えている名古屋市立大学芸術工学部のコンセプトについて述べよう。その名の通り芸術つまりここではデザインの専門家と工学の専門家とが手を伸ばした二つの軸が直行したところに芸術工学というものがある。
だから育って欲しい人物像は、デザイナーでもなくエンジニアーでもない、私たちが予期しなかった分野の人材である。それは一つの実験だと言ってよい。日本の大学は、実験を行いながら人材教育を行ってきた。事実私の出身校である筑波大学でもそうであった。
では芸術工学部の現実はどうかというと、やはりデザイナーかエンジニアになる者が圧倒的に多い。両方の人材を育てていると言えば聞こえはよいが、実力という点では、美大出身のデザイナーと工学系学部出身のエンジニアにはかなわないといってよい。
デザイナーで言えば、デッサンをほとんど勉強していない学生達が来て少しばかり絵を描いても遅すぎる。エンジニアで言えば基本的なメカニズムがわからない。それも実験を工学系学部ほどしていないのだから、当然である。
ではどんな人材を育てるのかと私流にいえば、デザインと工学の二つの眼差しを持った物事を統括する仕事である。例えばプロデューサー。ただ社会的にそうしたプロデュース的な仕事が我が学部に来るということもないし、学生達もそうした仕事を目指そうという気力も少ない。
芸術工学をめざしながら、幻術工学、えせ工学あたりだろうと悪口を言われても反論できないのが今の現実だ。ただし将来は未知数であるが。
二つの軸を直行させるというマトリックス型のコンセプトは、私がいた浜野商品研究所が30年以上前に企画したAXISプロジェクトのコンセプトでもある。
あえていえならば、プログラムが書けなくても世界一の情報ツールを作り続けてきたスティーブ・ジョブスのような人物が現れることを我々は期待したい。彼の伝記を読むと人文社会学と工学の軸が交差するところ、という記述が随所にあり、我々と同じコンセプトである。
二つの軸が交差するところ、いまの我々にはそこまでしか見えていない。あとは巣立った人間達次第だろう。
京都駅,2012年2月19日
OLYMPUS PEN E-PM1,M ZUIKO DIGITAL12mm/f2.0
ISO1000,露出補正-1/3,f2.1/60,モノトーン
だから育って欲しい人物像は、デザイナーでもなくエンジニアーでもない、私たちが予期しなかった分野の人材である。それは一つの実験だと言ってよい。日本の大学は、実験を行いながら人材教育を行ってきた。事実私の出身校である筑波大学でもそうであった。
では芸術工学部の現実はどうかというと、やはりデザイナーかエンジニアになる者が圧倒的に多い。両方の人材を育てていると言えば聞こえはよいが、実力という点では、美大出身のデザイナーと工学系学部出身のエンジニアにはかなわないといってよい。
デザイナーで言えば、デッサンをほとんど勉強していない学生達が来て少しばかり絵を描いても遅すぎる。エンジニアで言えば基本的なメカニズムがわからない。それも実験を工学系学部ほどしていないのだから、当然である。
ではどんな人材を育てるのかと私流にいえば、デザインと工学の二つの眼差しを持った物事を統括する仕事である。例えばプロデューサー。ただ社会的にそうしたプロデュース的な仕事が我が学部に来るということもないし、学生達もそうした仕事を目指そうという気力も少ない。
芸術工学をめざしながら、幻術工学、えせ工学あたりだろうと悪口を言われても反論できないのが今の現実だ。ただし将来は未知数であるが。
二つの軸を直行させるというマトリックス型のコンセプトは、私がいた浜野商品研究所が30年以上前に企画したAXISプロジェクトのコンセプトでもある。
あえていえならば、プログラムが書けなくても世界一の情報ツールを作り続けてきたスティーブ・ジョブスのような人物が現れることを我々は期待したい。彼の伝記を読むと人文社会学と工学の軸が交差するところ、という記述が随所にあり、我々と同じコンセプトである。
二つの軸が交差するところ、いまの我々にはそこまでしか見えていない。あとは巣立った人間達次第だろう。
京都駅,2012年2月19日
OLYMPUS PEN E-PM1,M ZUIKO DIGITAL12mm/f2.0
ISO1000,露出補正-1/3,f2.1/60,モノトーン