Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編118. さびしいな

2015年04月03日 | Tokyo city
 小さい頃から床屋が嫌いだった。あろうことか、実家の隣2軒目が床屋だった。その町内の床屋に行っても紋切り型の髪型にされるのが一番のネックだった。もう美意識のかけらもない。それに 3週間に1回床屋に行くなんて実に面倒なことでもあった。
 だから、いつも親戚の美容院で髪を切ってもらった。美容院だとそのまま髪を伸ばしても自然と長髪になり違和感がなく、半年位持つのが気に入った。
 仕事をするようになってから、通い出したのが下北沢の美容院である。なんといってもカットが大変上手なのである。いつも一番似合う髪型にしてくれた。以来30年間通い続けた。だから「夏頭」というと、夏向きの調度良いカットにしてくれた。その主も65歳となり、店をたたむことになり実家の島根県に帰ることになった。創業39年目だそうである。
 自分の中から、大切にしていたものがまた一つポロッと落ちてゆくようだ。そうやって一つずつポロポロと落ちていって歳をとってゆくのだと思った。
 いつも帰りに予約の電話代として10円サービスしてくれる。その袋がこれなんだな。30年間もらい続けた。最後の袋は、もう記念品ですね。
 下北沢の街も小田急線が地下を走るようになり、青物市場はなくなり、美容院の小ぶりなビルの敷地も都市計画道路の話が出ているようだ。そんな背後要因もあるのだろうか。あの細い街路が続く人なつこい下北沢の街が、私の記憶の奥深くへ遠ざかりそうだ。
 人も街も私の記憶の中へ遠ざかってゆく。それは少しさびしいなと思う、今日はそんな一日だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする