外は寒いから仕事以外の時は、最近家にこもってクロッキーの着彩に励んでいる。
さてアチキの仕事は、大学の工学の先生だから都会の大学へ週2日通うことになる。どっちかといえば実技系の先生だから、今の大学の中では軽い存在だ。
というのも大学は座学系の先生が多く、実技系なんかなくてもいいんじゃないの、という輩ばかり。だからアチキがゆかなければ、実技がなくなると回りは歓迎している。さらに学生達も実技がなくてよかったなどといいだす始末だ。だからアチキもますますサボることになる。
困るのは、学生達が社会へ出てからだ。あらっ、設計なんかしたことない!、絵なんか描いたことがない!、漫画で好いかなぁー!!。そんな風に実力がない学生達が大量に育つことは間違いない。今は、社会がそれを望んでいるのだから仕方がない。こちらは、そんなエセ工学の先生さ。
さらに都合の良いことにコロナ禍で、リモート授業だ。だから小樽から講義をおこない、隔週で2日も通えば十分だ。つまり大学へ、あまり来るな!、というアチキにとってはありがたい時代になった。
・・・
翆が病院の日勤から戻ってきた。
新型肺炎がにわかに増えだし、年末は帰省する看護師さん達もいるから翆の仕事も増える。
翆「美人画家かいね?」
「いやぁー、絵心ある人間の戯れごとよ。なにしろエセ工学の先生ですから・・・」
翆「美人画家を目指すとか・・・」
「ハハハ! 、そりゃいやだよ。だって美人画家って超の字が沢山つくぐらいわがままよぉー」
翆「へぇーっ、そうなんだ」
「美人画家だから、綺麗なモデルさんを沢山描くじゃないですか。そのうちこのオンナは、いい絵が描ける、私好みだ!。よし後世に残る美人画を描いてやる。これから私のアトリエに来なさい!」
翆「いいじゃん、そんなに気に入られれば」
「私のアトリエに来なさいと言うのは、もう昼も夜も住んで一緒に暮らせという命令だよ。例え恋人がいようと、旦那がいようと関係なく、モデルさんは画家のもんさ」
翆「あら、超わがままな、お持ち帰りなんだ!」
「まあ、それで一緒に暮らしながら、美人画を描くぐらいだからオンナのあらゆるところを知りたいというのでセックスの日々を重ね、気狂いみたいに画業に専念する」
翆「まあ、そこまで気に入られればオンナも幸せか・・・」
「ちゃうねん。3年も同じオンナを描けば画家も飽きるんだよ。そうなるとオマエ、もういらない、邪魔だからてでいけ!。それでお終い」
翆「えっえーー、女の幸せは?」
「そんなの最初から画家の頭にはないよ。頭の中には、美人画へのこだわりだけだもん」
翆「画家って全然社会常識がないーーー」
「社会常識なんか最初からないから画家になっている。だからアチキが凡人で良かったでしょ」
翆「エセ工学の凡人なんだ・・・」
・・・
小樽の冬の夜も冷え込んできた。