デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

アゲイン

2006-07-02 07:57:54 | Weblog
 春に始ったテレビドラマが最終回を迎える時期で、その中に「プリマダム」があった。黒木瞳さんが主演で、若い頃目指したプリマドンナの夢を再び実現しようと、バレエのレッスンに励む内容で、9時台の笑いと涙のお決まりのストーリーなのだがなかなかに面白い。最終回は感動的でもあった。中森明菜さんが「母親 A 」で出演していて、「少女 A 」時代からの明菜ファンの小生は毎週欠かさず観ていた。

 エロティックなジャケットが売りのヴィーナス・レコードから、32年生まれのエディ・ヒギンズのアルバムが大量に出ている。売れるから次から次へと出すのだろうが、どのアルバムもスタンダード中心の選曲で、確かに日本人向きではある。若い頃は VJ 盤でリー・モーガンやウエイン・ショーターと共演していて、ディキシー・バンド出身とは思えない、モダンなフレーズも随所で聴ける。ブランクもあり忘れられていた存在なのだが、日本でプロデュースし、再びの登場と相成ったようだ。

 バレエのレッスン風景のジャケットに惹かれて買った一枚が「アゲイン」と題されていて、これもスタンダードのオンパレードだ。円熟した味わいと評価する向きもあるが、ホテルのラウンジのアクセサリーのようなもので、どうにも印象薄い。ブランク期間に練習を怠ったのだろうか、スウィング感がない。サビの利いていない寿司とでもいうのか、ヘアのないヌードとでもいうのか、ジャケット写真ほどの刺激はなかった。何かと忙しいこの時代、癒し系のソフトなものが求められているのかもしれないが、こういう作品ばかりがセールを伸ばしているのは寂しい。

 「プリマダム」には元プロダンサーの小林十市さんも出演していてプロの妙技をみせてくれた。祖父は人間国宝の落語家、故五代目柳家小さんという家柄だ。同じダンサーの熊川哲也さんの著書「ドメイン」に、「バレエは一日レッスンを休めば自分にわかり、二日間休むと先生にわかり、三日間休むと観客にもわかる」という教示的な一節があった。バレエ、落語に限らず、一芸を極めるためには練習は欠かせない。
コメント (16)
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