チェコのプラハで行われたカフカ賞授賞式の模様を新聞が報じた。作家デビュー前は国分寺で、「ピーター・キャット」というジャズ喫茶を開いていた村上春樹氏は、記念のカフカ像を手にして感慨深そうだ。カフカ賞は01年創設の新しい賞がだ、04年、05年の受賞者が連続してノーベル文学賞に選ばれている。このことから村上氏が最有力視されていたが、残念ながらノーベル文学賞はトルコのオルハン・パムク氏に決定した。
上下巻併せて200万部売れたという村上氏のベストセラー小説「ノルウェイの森」にこんな件がある。『・・・紀伊國屋書店の裏手の地下にあるDUGに入ってウォッカ・トニックを二杯ずつ飲んだ。・・・僕は黙ってセロニアス・モンクの弾く「ハニサックル・ローズ」を聴いていた』 この曲は「ザ・ユニーク」というモンクの56年のアルバムに収められている。アート・ブレイキー、オスカー・ペティフォードと組んだセッションで、スタンダード中心の選曲だが、タイム感覚や音使いはユニークそのものだ。
孤高のピアニスト、バップの高僧とも呼ばれるモンクは、「ラウンド・ミッドナイト」、「ストレート・ノー・チェイサー」等の作曲者として評価されていたものの、ピアニストとして世間が認めるに至ったのは後年のことだ。54年のパリ公演では聴衆からそっぽを向かれたという。ステージで突然踊りだしたり、気に入らないとソロも中断する奇行ぶりは常人には異様にしか映らない。独創的な芸術は、いつの時代も理解され難く、また個性的な音楽家への正しい評価はいつも遅れる。
57歳の村上氏の作品はユニークではないが、その背景には大学闘争やジャズの青春体験がある。団塊世代特有の蹉跌と、現代の人間が抱える孤独と焦燥を見つめる眼差しはいつも温かい。ノーベル賞を逃した村上文学が、モンクのそれのように国境を越える日は何時のことであろうか。週刊漫画雑誌のほとんどを読み流していると豪語している大臣もいるようだが、アニメやマンガばかりが日本発の文化と思われては困る。
上下巻併せて200万部売れたという村上氏のベストセラー小説「ノルウェイの森」にこんな件がある。『・・・紀伊國屋書店の裏手の地下にあるDUGに入ってウォッカ・トニックを二杯ずつ飲んだ。・・・僕は黙ってセロニアス・モンクの弾く「ハニサックル・ローズ」を聴いていた』 この曲は「ザ・ユニーク」というモンクの56年のアルバムに収められている。アート・ブレイキー、オスカー・ペティフォードと組んだセッションで、スタンダード中心の選曲だが、タイム感覚や音使いはユニークそのものだ。
孤高のピアニスト、バップの高僧とも呼ばれるモンクは、「ラウンド・ミッドナイト」、「ストレート・ノー・チェイサー」等の作曲者として評価されていたものの、ピアニストとして世間が認めるに至ったのは後年のことだ。54年のパリ公演では聴衆からそっぽを向かれたという。ステージで突然踊りだしたり、気に入らないとソロも中断する奇行ぶりは常人には異様にしか映らない。独創的な芸術は、いつの時代も理解され難く、また個性的な音楽家への正しい評価はいつも遅れる。
57歳の村上氏の作品はユニークではないが、その背景には大学闘争やジャズの青春体験がある。団塊世代特有の蹉跌と、現代の人間が抱える孤独と焦燥を見つめる眼差しはいつも温かい。ノーベル賞を逃した村上文学が、モンクのそれのように国境を越える日は何時のことであろうか。週刊漫画雑誌のほとんどを読み流していると豪語している大臣もいるようだが、アニメやマンガばかりが日本発の文化と思われては困る。