デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ヴァイオリンでラウンド・ミッドナイトを聴いてみよう

2007-07-01 07:40:55 | Weblog
 江戸川柳に「忍ぶ夜の蚊はたたかれてそっと死に」とある。情景が見える艶っぽい句で、今も昔もこれからの時期、蚊に悩まされるのは同じようだ。テレビで金鳥蚊取り線香のCMが流れ始めた。今年のCMにはジャズ・ヴァイオリニストの寺井尚子さんが起用されていて、弦楽器特有の豊かな響きのある音色は初夏の訪れにふさわしい。

 ジャズ・ヴァイオリニストというと古くはエディ・サウス、ジョー・ヴェヌーティ、ステファン・グラッペリの3名手がいたが、モダンジャズ期では殆ど聴かれない。管楽器が主役になりバップのリズムにヴァイオリンが適さないのだろうか。そんな中50年代に吹き込まれたハリー・ルーコフスキーの「Stringsville」は珍しい作品だ。クラシックの分野で活躍している人でジャズ・アルバムは少ないものの、この作品はボブ・ブルックマイヤー、ハンク・ジョーンズ、ポール・チェンバース、エルヴィン・ジョーンズ等のサイドメンが加わり一級のセッションを聴ける。

 オープニングはセロニアス・モンクの名曲「ラウンド・ミッドナイト」でジャズ・ファンを唸らせる好スタートだ。ラテンを思わせるリズムから滑らかに溶け込むメロディラインはこの曲が持つ美しさを際立たせている。ヴァイオリンを弾く上で重要なボウイングも見事なもので一気に起伏のあるアドリブに移り、後半にはピチカートでアクセントを付けるという展開であまりジャズ・ヴァイオリンを聴く機会がないだけに新鮮だ。4分足らずの短い演奏ながら楽器の特性をちりばめた快作であろう。

 今では蚊取り線香やエアコンの普及により蚊帳は滅多に見られなくなったが、電気を使わない蚊帳が防蚊手段としてエコロジーの観点から見直されているという。蚊帳は細い網目で中が見え難い。中を隠し、国民を蚊帳の外に置くのはどこかの国の国民年金をみるようだ。
コメント (34)
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