デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

デューク・ピアソンのクリスマス・プレゼント

2007-12-23 07:24:53 | Weblog
 競売大手クリスティーズが開いたオークションで、ノーマン・ロックウェルが描いた「サンタクロースの旅行計画」が2億数千万円で落札された。ロックウェルは、米サタデー・イブニング・ポスト紙の表紙を長きに亘って描いた画家で作品の価値は高い。落札された作品も39年の同紙を飾ったもので、サンタが世界地図を見ている場面が描かれている。サンタのプレゼントを楽しみにしてる世界中の子どもたちに夢を与える絵だ。

 こちらのデューク・ピアソンの「メリー・オール・ソウル」というサンタは、69年に録音されたジャズの楽しさを贈ってくれるアルバムである。「ジングル・ベル」を初めお馴染みのクリスマス・ソング集なのだが、おどけたジャケットとは違い1曲ごと丁寧に演奏されたものだ。曲こそこの時期よく耳にするポピュラーなものだが、アドリブラインの膨らみは知的センスに溢れ、時にユーモラスなフレーズも飛び出し、「きよしこの夜」はゴスペル・タッチで敬虔な祈りを表現している。派手なクリスマスパーティより、家族で過ごす聖夜に相応しい作品である。

 ピアソンのタッチは歯切れが良く、ブルージーで優れた資質の持ち主なのだが人気とは無縁のピアニストであった。そのスタイルがファンキー時代には知的過ぎたのかもしれないし、同じタイプのソニー・クラークの前で霞んでしまったとも思えるが、知的なセンスを買われブルーノートのA&Rマンに就任している。シーンが目まぐるしく変化する70年前後は名門ブルーノートですらレコードのセールは芳しくなかった。硬派なブルーノートが一般受けするクリスマス・アルバムを作った背景にはプロデューサーとしてのピアソンの思惑があったのかもしれない。

 競売にかけられた「サンタクロースの旅行計画」の所有者は俳優の津川雅彦氏で、氏が経営するおもちゃ店「グランパパ」の破産危機を免れるために出品したようだ。落札額は意に沿わぬものだったらしいが、共同経営に手を差し延べた企業があるという。おもちゃへの夢が途絶えないよう、これもサンタの旅行計画のひとつだったのだろう。
コメント (22)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする