デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ファイン・アンド・ダンディなデイブ・マッケンナ

2008-12-14 08:16:27 | Weblog
 40年代のスウィング時代末期から50年代のモダン・ジャズ時代に至る過渡期に、黒人スウィング・ジャズメンを主体に盛んだったジャム・セッション形式による演奏を、欧米ではメインストリーム・ジャズと呼んでいた。日本でダンモという言葉が生まれたころである。モダン・ジャズが主流になりつつある日本で欧米の呼び方では混同するうえ、用語も意味するところが曖昧なことから適当な呼びかたはないかと考え、中間派ジャズという用語を提唱したのは大橋巨泉氏だった。

 今ではすっかり定着した中間派とよばれるピアニストに10月に亡くなったデイブ・マッケンナがいる。70年代に折からの中間派ブームに乗り、キアロスキューロやコンコードから多くのリーダーアルバムが発売されたが、全盛期であった時代に自己名義の作品は実に少ないことに驚く。リーダー作よりズート・シムズの「ダウン・ホーム」や、ミリー・ヴァーノンのストーリーヴィル盤で知られる人で、ときに主役を食う名脇役ぶりが頼もしい。テディ・ウィルソンの流れを汲むスウィンギーで軽妙なタッチと、バップ・フレーズを使うスタイルは中間派を超えた限りなくモダンジャズに近いピアニストであった。

 73年に録音された「Cookin' at Michael's Pub」は、ディック・ジョンソンのクラリネットとベースのバッキー・カラブレスという変則トリオだが、リズムを強調した左手の動きはドラムレスとは思えないほどビートが効いている。曲作りも上手いマッケンナのアルバムタイトル曲に始まり、「Dinah」、「Cheek to Cheek」と続くが、スウィング時代の薫りを残しながら味付けは斬新なもので今出来上がったばかりの輝きを持つ。「Fine and Dandy」も収録されていて明快なピアノラインはファインであり、オールバックの髪型はちょい悪オヤジ風でまさにダンディ、マッケンナの音楽と人を表現するならこのタイトルであろうか。

 49年にチャーリー・ヴェンチュラ楽団でデビュー以来、ジーン・クルーパやボビー・ハケットとの共演、そして70年代のソロアルバムまで鍵盤の上を踊るような軽やかな音とピアノスタイルは変ることがなかった。このアルバムのラスト曲は、ジミー・マクヒューの「Last Dance」である。
コメント (30)
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