心に残る名作「誰が為に鐘は鳴る」や「シェーン」をはじめ映画主題歌を数多く作曲したヴィクター・ヤングは、アカデミー作曲賞や音楽賞に22回ノミネートされたが、生前に受賞することができなかった。野口久光さんによると、当時のアカデミー審査委員の風潮として、ヒット性のある映画の主題歌が受賞すると、映画製作会社は主題歌だけ重要視するようになり、サウンドトラックを対象にした受賞目的とかけ離れるばかりか、その作品自体の評判に大きく影響されるからだという。
生涯350曲もの美しい曲を書いたなかで、最もジャズメンに愛されたのは、「星影のステラ」と邦題が付いた「Stella By Starlight」だろうか。タイトルだけでホラー映画とわかる「呪いの家」の主題歌だが、メロディは格段に美しく、その映像と反する美が恐怖を緩和させたり、逆に増幅させる効果があり、不思議と怖い映画ほど美しいメロディが似合う。ステラは女性の名前で、ラテン語の「星」という意味だからタイトルも凝っている。パーカー、マイルス、エヴァンス等、細かく転調する独特のコード進行に基づいたアドリブの妙も面白いが、1コーラス32小節の美しいテーマをより美しく表現しているのがスイング派のトランペッター、チャーリー・シェイヴァースだ。
ハリー・ジェイムスやロイ・エルドリッジ、バック・クレイトンの影に隠れて人気はなかったが、モダンな味付けでよく歌う。人気もなければ当然、過少評価された人で、それはリーダー作で決定的なものがなく、ベツレヘムのデビューアルバム「Horn O'Plenty」も再発された形跡がない。せいぜい語られるのは、ジーン・ノーマン主催のジャズ・ジャスト・コンサートの「スターダスト」のソロくらいなものだ。ストリングスを配した「The Most Intimate」は、その「スターダスト」や、「星影のステラ」という美しい曲を取り上げ、高らかに歌い上げている。甘い曲はどこまでも甘いほうがいい。甘美なこの表現こそシェイヴァースの持ち味である。
女性なら必ずや涙する「シェーン」のラストシーンや、ヤングの死後、功績が認められてアカデミー作曲賞を受賞した「八十日間世界一周」の世界各国の多彩な風景は、主題歌を聴くだけで映画を想い出すが、「星影のステラ」、「愚かなり我が心」、「ラブレター」になると、メロディは流れても映画の筋は怪しい。アカデミー審査委員が危惧したように音楽の方が映画より後世に残ることを実証したのがヤングだろう。
生涯350曲もの美しい曲を書いたなかで、最もジャズメンに愛されたのは、「星影のステラ」と邦題が付いた「Stella By Starlight」だろうか。タイトルだけでホラー映画とわかる「呪いの家」の主題歌だが、メロディは格段に美しく、その映像と反する美が恐怖を緩和させたり、逆に増幅させる効果があり、不思議と怖い映画ほど美しいメロディが似合う。ステラは女性の名前で、ラテン語の「星」という意味だからタイトルも凝っている。パーカー、マイルス、エヴァンス等、細かく転調する独特のコード進行に基づいたアドリブの妙も面白いが、1コーラス32小節の美しいテーマをより美しく表現しているのがスイング派のトランペッター、チャーリー・シェイヴァースだ。
ハリー・ジェイムスやロイ・エルドリッジ、バック・クレイトンの影に隠れて人気はなかったが、モダンな味付けでよく歌う。人気もなければ当然、過少評価された人で、それはリーダー作で決定的なものがなく、ベツレヘムのデビューアルバム「Horn O'Plenty」も再発された形跡がない。せいぜい語られるのは、ジーン・ノーマン主催のジャズ・ジャスト・コンサートの「スターダスト」のソロくらいなものだ。ストリングスを配した「The Most Intimate」は、その「スターダスト」や、「星影のステラ」という美しい曲を取り上げ、高らかに歌い上げている。甘い曲はどこまでも甘いほうがいい。甘美なこの表現こそシェイヴァースの持ち味である。
女性なら必ずや涙する「シェーン」のラストシーンや、ヤングの死後、功績が認められてアカデミー作曲賞を受賞した「八十日間世界一周」の世界各国の多彩な風景は、主題歌を聴くだけで映画を想い出すが、「星影のステラ」、「愚かなり我が心」、「ラブレター」になると、メロディは流れても映画の筋は怪しい。アカデミー審査委員が危惧したように音楽の方が映画より後世に残ることを実証したのがヤングだろう。