先日、第141回芥川賞の受賞作品が発表され、磯崎憲一郎さんの「終の住処」に決定した。文藝賞を受賞した「肝心の子供」で注目され、昨年は「眼と太陽」が芥川賞の候補にも挙がった作家で、日常という地味な材料を、人生の大きな時間の流れで見つめる作風は、それ相応の経験がなければ書けない。現在44歳の磯崎さんは、40歳を前に小説を書き出した遅咲きの人である。
ジャズ界にも遅咲きの人がいて、ピアニストのジャッキー・バイアードは、ミンガスのグループでにわかに脚光を浴びたのは40歳を過ぎてからであった。出身地であるマサチューセッツの地元ローカルバンドで腕を磨いた人で、バップは勿論のこと、ファッツ・ウォーラー流のハーレム・ストライド・ピアノから、セシル・テイラーを思わせるフリーな奏法まで、ジャズ・ピアノのあらゆるスタイルを身に着け、どの奏法においても表面上の真似ではないバイアードの一味も二味も違いスパイスが効いている。バイアードだけが弾きこなせるテクニックに裏打ちされた幅広いスタイルは、その長い下積みで培った種に咲いた花の如く目映い。
写真のアルバムは、65年にボストンの「レニーの店」でライヴ・レコーディングされたもので、後にエルヴィン・ジョーンズやチック・コリアのバンドで活躍するジョー・ファーレルが参加している。針を降ろすと同時にコルトレーンを彷彿させる激しいテナーから始まり、縦横無尽に鍵盤を走るバイアードにソロが引き継がれ、その変幻自在なスタイルをサポートするのはともに名手のジョージ・タッカーのベースとアラン・ドウソンのドラムだ。スタイルも豪快なら唸り声も豪快で、唸るより吠えるといったほうが正しいだろうか。オープニングはバイアードの曲で、タイトル「Twelve」、演奏時間ジャスト12分、万華鏡のピアニストはタイトルには拘らないようだ。
作家や音楽家に限らず、人は豊かな才能に恵まれながらもなかなか芽が出ないこともあるが、いつかはその才能を開花させるチャンスに出会うかもしれない。長い人生のその一瞬のチャンスをつかみ生かすには、下積み時代にどれだけのものを学び、それを消化した知識と努力と忍耐という栄養を蓄えるかに左右される。十分な栄養を摂った種は開花したとき枯れることをしらないという。
ジャズ界にも遅咲きの人がいて、ピアニストのジャッキー・バイアードは、ミンガスのグループでにわかに脚光を浴びたのは40歳を過ぎてからであった。出身地であるマサチューセッツの地元ローカルバンドで腕を磨いた人で、バップは勿論のこと、ファッツ・ウォーラー流のハーレム・ストライド・ピアノから、セシル・テイラーを思わせるフリーな奏法まで、ジャズ・ピアノのあらゆるスタイルを身に着け、どの奏法においても表面上の真似ではないバイアードの一味も二味も違いスパイスが効いている。バイアードだけが弾きこなせるテクニックに裏打ちされた幅広いスタイルは、その長い下積みで培った種に咲いた花の如く目映い。
写真のアルバムは、65年にボストンの「レニーの店」でライヴ・レコーディングされたもので、後にエルヴィン・ジョーンズやチック・コリアのバンドで活躍するジョー・ファーレルが参加している。針を降ろすと同時にコルトレーンを彷彿させる激しいテナーから始まり、縦横無尽に鍵盤を走るバイアードにソロが引き継がれ、その変幻自在なスタイルをサポートするのはともに名手のジョージ・タッカーのベースとアラン・ドウソンのドラムだ。スタイルも豪快なら唸り声も豪快で、唸るより吠えるといったほうが正しいだろうか。オープニングはバイアードの曲で、タイトル「Twelve」、演奏時間ジャスト12分、万華鏡のピアニストはタイトルには拘らないようだ。
作家や音楽家に限らず、人は豊かな才能に恵まれながらもなかなか芽が出ないこともあるが、いつかはその才能を開花させるチャンスに出会うかもしれない。長い人生のその一瞬のチャンスをつかみ生かすには、下積み時代にどれだけのものを学び、それを消化した知識と努力と忍耐という栄養を蓄えるかに左右される。十分な栄養を摂った種は開花したとき枯れることをしらないという。