ビルだろうか、船だろうか、ワイヤーで吊られた足場で看板を描いているから相当大きなものだろう。それに命綱も付けているので、地上からかなり高い位置にいることがわかる。命綱でワイヤーと結んでいるので、たとえ風に煽られても落下することはないだろうが、頭では安全だと分かっていても、落ちてしまったらという危機感は誰でもある。高所恐怖症の方は絶対に向かない職業だ。
ペンキで大きく塗られた「TAL FARLOW」は、コンコード盤の「A Sign of the Times」で、ハンク・ジョーンズと、レイ・ブラウンで組んだギター、ピアノ、ベースによるトリオである。このトリオ形態はもともとピアノ・トリオの基本編成で、古くはアート・テイタムやナット・キング・コール、オスカー・ピーターソンが用いていた。そのスタイルを踏襲したのが、56年にエディ・コスタ、ヴィニー・バークと組んだタル・ファーロウだ。ギターのトリオはドラムとの編成に比べるとよりメロディを強調し、ギターとピアノが重なった太いユニゾンと、対位的なハーモニーも構築できる。三者ともテクニックと歌心がないことには組めない編成だろう。
ファーロウは56年に結成した伝説のトリオで、58年まで活動を続けるが、その後ジャズシーンから姿を消し、再び表舞台に立つのは68年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルだった。そして77年に発売されたのがこのアルバムで、全盛期にみせたギターを同時に2本弾いているのではないかと思わせる華麗なテクニックは聴けないが、弦と一体となった左手と、絶妙なスウィング感を生むピッキングは以前と変らない。スタンダード中心の選曲で、決して派手さはないが艶やかな音色と、ギター・トリオだけが表現できる構築美は、ギターという楽器を極めたものだけが表現しえるものである。
ファーロウはチャーリー・クリスチャンの演奏に感銘し、21歳でギターを手にするまでは看板を描くペンキ職人で、一時シーンから去ったときは、本来の仕事に就いていたという。ファーロウほどの名手が仕事に恵まれなかったのは不思議だが、たとえピックを刷毛に持ち替えても、ギター同様、芸術的な美しいラインを描いていたのだろう。そんな裏事情を知るとニヤリとするジャケットである。
ペンキで大きく塗られた「TAL FARLOW」は、コンコード盤の「A Sign of the Times」で、ハンク・ジョーンズと、レイ・ブラウンで組んだギター、ピアノ、ベースによるトリオである。このトリオ形態はもともとピアノ・トリオの基本編成で、古くはアート・テイタムやナット・キング・コール、オスカー・ピーターソンが用いていた。そのスタイルを踏襲したのが、56年にエディ・コスタ、ヴィニー・バークと組んだタル・ファーロウだ。ギターのトリオはドラムとの編成に比べるとよりメロディを強調し、ギターとピアノが重なった太いユニゾンと、対位的なハーモニーも構築できる。三者ともテクニックと歌心がないことには組めない編成だろう。
ファーロウは56年に結成した伝説のトリオで、58年まで活動を続けるが、その後ジャズシーンから姿を消し、再び表舞台に立つのは68年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルだった。そして77年に発売されたのがこのアルバムで、全盛期にみせたギターを同時に2本弾いているのではないかと思わせる華麗なテクニックは聴けないが、弦と一体となった左手と、絶妙なスウィング感を生むピッキングは以前と変らない。スタンダード中心の選曲で、決して派手さはないが艶やかな音色と、ギター・トリオだけが表現できる構築美は、ギターという楽器を極めたものだけが表現しえるものである。
ファーロウはチャーリー・クリスチャンの演奏に感銘し、21歳でギターを手にするまでは看板を描くペンキ職人で、一時シーンから去ったときは、本来の仕事に就いていたという。ファーロウほどの名手が仕事に恵まれなかったのは不思議だが、たとえピックを刷毛に持ち替えても、ギター同様、芸術的な美しいラインを描いていたのだろう。そんな裏事情を知るとニヤリとするジャケットである。