デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ヘレン嬢は美人のこころだぁ

2010-10-03 08:23:24 | Weblog
 もうじき1万回目を迎える小沢昭一さんのラジオ番組「小沢昭一的こころ」は、自ら「口演」と称するだけあり語り口は絶妙だ。いつだったか、ヘレンという名の女性は美人が多い、という話をされていた。ヴォーカル・ファンなら何人かのヘレン嬢を思い出されるだろう、皆美人である。ニューヨークのため息メリル、若くして亡くなったカー、ベニー・グッドマン楽団のウォード、アーティ・ショウ楽団のフォレスト、ヘレンカーチス・ナチュレーヌ、これは違ったか。

 そしてジミー・ドーシー楽団のヘレン・オコネル。スイング・ジャズ黄金時代のバンド・シンガーにヘレン嬢が多いのは偶然かもしれないが、看板歌手だけあり美女揃いだ。緑色のパーティー・ドレス、テーブルに置かれているグラスのカクテルは、その色から推測してジンベースのエメラルド・シティ・マティーニだろうか。ドーシー楽団時代にヒットした「グリーン・アイズ」をタイトルにして緑で統一されたジャケットはオコネルの美しさを際立たせているし、スタンダードとラテンをほどよく配した選曲は、アルバム全体の調和がとれていてやすらぎさえ覚える。色彩心理学にみると緑は、やすらぎや安心感を与える色だという。

 アルバムはドーシー楽団時代の43年に大ヒットした「スター・アイズ」で始まる。オリジナル編曲を使用しているようだが、57年録音とはいえ古さはなく、今の時代にも通用する編曲は見事なものだ。当時のアレンジャーは不明だが、踊る音楽から聴く音楽へとジャズが芸術としての高みを予見した質の高いものといえる。ゆったりとしたビギンのリズムに乗って歌うオコネルの声は透明で、それでいてビッグバンドを背にしても負けない通る声が何とも心地良い。出だしの「♪Star Eyes」は曲中4回出てくるが、それぞれに違う表情をみせる。星が輝いたり、曇ったり、泣いたり、笑ったり、情感溢れる歌唱は希望の星だったことだろう。

 小沢さんが美人と言ったヘレン嬢が気になるところだが、女優や歌手ではない。小沢さんの口演を聞かれた方なら凡そ察しはつくだろうが、「踊り子さんには手を触れないでください」とアナウンスが流れる妖しいステージに登場するヘレン嬢である。顔が美しいだけが美人ではない、裸も重要なのだと美人観を説いておられた。「エロ事師たちより 人類学入門」に主演された小沢さんらしい。
コメント (20)
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