寛いだ格好で譜面にペンを走らせるのはタッド・ダメロンだ。作曲をするときはピアノやギターで一音一音探りながら曲を完成させるのが通常のスタイルだが、楽器がなくとも閃いた音符を五線譜にのせるだけで素晴らしい曲ができる。エリントンはツアーに向かう列車の席で多くの楽曲を書いているし、エロール・ガーナーは飛行機の窓から霧を見ながら名曲を生み出しているが、ダメロンはこのスタイルで曲を書いていたそうだ。
ピアニストとして評価を受けたことはないダメロンだが、Record Review誌や、All Music Guide の編集を務めジャズの楽曲に精通しているスコット・ヤナウ氏が、「バップ時代を明確にした作編曲家」と絶賛したほど作編曲家としての評価は高い。バップナンバーというと喧しく騒がしいのが相場だが、ダメロンの曲の素晴らしさはその喧騒と程遠いものの、それでいてバップの本質を見事に備えている点だろう。挙げるときりがないが代表作でありサラ・ヴォーンの愛奏曲でもある「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」は、バップ特有の転調を巧みに使ったコード進行でありながら美しいバラードとして完璧な作品といっていい。
「ザ・マジック・タッチ」はダメロンが、48歳で亡くなる3年前のアルバムで、短いジャズ人生の集大成といえる。クラーク・テリーをはじめチャーリー・シェイヴァース、ジミー・クリーヴランド、ジョニー・グリフィン等々という強力なフロント陣とビル・エヴァンスの参加が注目されるビッグバンド作品だ。全曲ダメロンの曲で、編曲も指揮を手がけており細部に行き渡るアレンジのペンさばきは見事なオーケストレーションを描き出している。アレンジひとつで如何様にも曲は変化するものだが、聴き慣れたバップナンバーとは思えないほどの芸術的な組み立てと、随所に光るソロイストの配置が素晴らしい。まさにマジック・タッチだ。
さて、ダメロンの作曲時のスタイルだが、これはピアノがない環境でしばしば曲を書いていたからと推測される。この時代のジャズマンが誰でもがそうであったようにダメロンもまた麻薬に染まり長い刑務所暮らしを経験しており、それがピアニストとしての評価につながるのだろう。ピアノは弾けなくても譜面を起こすのは刑務所でもできる。編曲は楽譜を縦に書くと言われるが、この格好で鉄格子を縦や横に見て音を想像していたのかもしれない。
ピアニストとして評価を受けたことはないダメロンだが、Record Review誌や、All Music Guide の編集を務めジャズの楽曲に精通しているスコット・ヤナウ氏が、「バップ時代を明確にした作編曲家」と絶賛したほど作編曲家としての評価は高い。バップナンバーというと喧しく騒がしいのが相場だが、ダメロンの曲の素晴らしさはその喧騒と程遠いものの、それでいてバップの本質を見事に備えている点だろう。挙げるときりがないが代表作でありサラ・ヴォーンの愛奏曲でもある「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」は、バップ特有の転調を巧みに使ったコード進行でありながら美しいバラードとして完璧な作品といっていい。
「ザ・マジック・タッチ」はダメロンが、48歳で亡くなる3年前のアルバムで、短いジャズ人生の集大成といえる。クラーク・テリーをはじめチャーリー・シェイヴァース、ジミー・クリーヴランド、ジョニー・グリフィン等々という強力なフロント陣とビル・エヴァンスの参加が注目されるビッグバンド作品だ。全曲ダメロンの曲で、編曲も指揮を手がけており細部に行き渡るアレンジのペンさばきは見事なオーケストレーションを描き出している。アレンジひとつで如何様にも曲は変化するものだが、聴き慣れたバップナンバーとは思えないほどの芸術的な組み立てと、随所に光るソロイストの配置が素晴らしい。まさにマジック・タッチだ。
さて、ダメロンの作曲時のスタイルだが、これはピアノがない環境でしばしば曲を書いていたからと推測される。この時代のジャズマンが誰でもがそうであったようにダメロンもまた麻薬に染まり長い刑務所暮らしを経験しており、それがピアニストとしての評価につながるのだろう。ピアノは弾けなくても譜面を起こすのは刑務所でもできる。編曲は楽譜を縦に書くと言われるが、この格好で鉄格子を縦や横に見て音を想像していたのかもしれない。