デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

テディ・チャールズの実験は成功したか

2012-06-17 07:23:30 | Weblog
 テディ・チャールズ。久しく忘れていた名前をジャズ誌の訃報欄で見た。本国ではその音楽性が高く評価されていたようだが、日本では人気がないヴァイヴ奏者である。ライオネル・ハンプトンとミルト・ジャクソンの二人が独走状態だったヴァイブ界で頭角を現すのは容易なことではないし、ゲイリー・バートンやボビー・ハッチャーソンでさえも名前が挙がるのは巨匠の次ページで、あとは余白に近い。

 その片隅に名前があるのがチャールズで、唯一語られるアルバム「テンテット」はその後のジャズの方向を示唆したうえで重要な1枚と思われるが、これも大きな話題を呼んだことはなかった。傑作とか意欲作という褒め言葉の次に判を押したよう添えられるのは、「実験的」である。保守的なジャズを好む日本では、この「実験的」なジャズに拒否反応を起こす傾向にあり、ジミー・ジェフリーやドン・エリスが人気がないのもここにある。かく言う小生も忘れていたのだから偉そうなことは言えないが、「テンテット」こそ新しいハードバップの形で、その形が変化したのがフリージャズであり新主流の方向性でもあると思う。

 久しぶりに不気味な縞の陰影のジャケットを取り出してみる。その実験的な作品を聴きかえしてみよう。改めてメンバーを確認するとアート・ファーマー、ジジ・グライス、マル・ウォルドロン、そして異色のJ.R.モンテローズ、更にチューバも入っている。メンバー構成だけでも実験的だし、更にギル・エバンスやジョージ・ラッセルという理論派のアレンジャーが並ぶ。さて内容は・・・ミンガスの「直立猿人」を思わせる・・・数十年前に初めて聴いたときの印象は変わらない。一言でいうなら「ハード・バップ型集団即興演奏」とでもいえば分かりやすいだろうか。録音された1956年という時代には早過ぎたのかもしれない。

 76年発行の世界ジャズ人名辞典には、53年に立ち上げたバンド「ニュー・ディレクション」を64年に再結成したあと音楽とヨット・クラブ経営の両面で活動している、と記されている。ヨットはまっすぐ風上の方向に進めないが、チャールズはジャズの風上に向かって帆走した数少ないプレイヤーではなかろうか。人名辞典に、実験に成功したヴァイヴ奏者、享年84歳、と書き足しておこう。
コメント (26)
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