デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

デイヴィッド・ベノワとエミリー・レムラーの邂逅

2013-02-10 07:55:34 | Weblog
 ここ札幌では、気温が1日中0度以下の日をさす真冬日が元旦から19日間続いたそうだ。1977年の25日連続に次ぐ記録というから三十数年ぶりの寒さになる。さらに雪も多く、積雪量は20日の大寒時で92センチと、こちらも例年にない量で、幹線道路はともかく一本裏道に入ると交差できないほど狭くなっている。春が来ると暖かくなり、自然と雪も融けるのだが、これだけ寒さが続くと何時になく春が待ち遠しい。

 そんな心情を切り取ったかのようなジャケットとタイトルのアルバムがあった。デイヴィッド・ベノワの「Waiting for Spring」で、ビル・エヴァンスに捧げたものだ。ベノワというとフュージョン界でコンポーザーやプロデューサーとして大活躍しているが、ピアニストとしても一流で多くの作品を残している。このアルバムは、89年に録音されたもので、ベースとドラムという基本編成に加え、女性ギタリストのエミリー・レムラーの参加が注目される。レムラーはこの録音の1年後に32歳の若さで亡くなっているので、大変貴重な録音であるし、何より女性らしい繊細なフレーズはその夭折と重ねると涙ものだ。

 ピアノとギターという組み合わせからはエヴァンスとジム・ホールを思い起こすが、あれほどの緊張感とはいわないまでも、ベノワが敬愛するエヴァンスに捧げるとなればやはり張り詰めたものがある。圧巻はリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートのコンビによる名作「マイ・ロマンス」で、エヴァンスの生涯の愛奏曲としてしられるナンバーだ。ゆったりとしたテンポのテーマから徐々にテンションを上げ、感極まるアドリブは特別な曲という想い入れが前面に出た結果だろう。そして続くレムラーのロマンティックなこと。もしかするモンティ・アレキサンダーとの蜜月を想い出したのかもしれない。

 先週5日から開催されている「さっぽろ雪まつり」の大通りメイン会場は連日多くの観光客で賑わい、迫力ある大雪像に歓声が上がる。よく行くススキノにも別会場が設けられ、毛がにや鮭を埋め込んだ芸術ともいえる氷彫刻に足を止めた酔客から感嘆の声も聞かれる。札幌の冬の一大イベントであるこの祭りは惜しくも明日11日までだが、この祭りが終わると春も近い。もう少しこの寒さを楽しんでみようか。
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