デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

デンマーク発ハッシャ・バイ

2013-03-03 11:23:27 | Weblog
 最近の報道写真を使ったかのようなジャケットがある。数字とアルファベットを組み合わせたナンバープレートなのでヨーロッパ諸国のそれとわかるが、この背景で省や自治区を示す1文字の漢字が入っていれば間違いなく大気が汚染された中国だ。北京市内では昼間でもヘッドライトをつけて走る車が多いというからそれだけ有害濃霧が酷いのだろう。その有害物質を含んだ大気が海を越えて日本に飛来してくるから穏やかな話ではない。

 さて、マスクをしなければ歩けそうもない風景のジャケットは、デンマークのピアニスト、オリヴィエ・アントゥネスが師であるケニー・ドリューに捧げたものだ。北欧のピアニストというとクラシックの素養があり、それを原点とするので本来ジャズが持つスウィング感よりもクラシック的発想の弾き方になる。それはそれでジャズピアノのひとつのスタイルとして今では確立されているが、静かに縦に揺れるよりも、やはり激しく横に揺れるほうが面白い。オリヴィエも勿論その北欧スタイルなのだが、ドリューの影響もありアメリカ的な感覚によるピアノで、バネが利いたスウィング感も身に着けているようだ。

 タイトルは映画「Elvira Madigan」の主題歌で、邦題は「みじかくも美しく燃え」と付けられていたが、モーツァルトのピアノ協奏曲の一部である。当然だがさすがにクラシック曲は上手い。この曲やアルバム・トップに収められている「いつか王子様が」は、メロディの美しさを際立たせる静のピアノだが、「ハッシャ・バイ」は動のピアノだ。元はユダヤの子守唄なので静かな曲と思われるが、サミー・フェインが手を加えたことでリズミカルに演奏されるようなった曲である。ジョニー・グリフィンが得意としているので、その後の演奏はそれに倣うように豪快な味付けが多いが、オリヴィエもアメリカ流に飛ばしながらも幼いときから培ってきた歌心も忘れない。

 ジャケットの写真は今飛んでくる有害濃霧というより、色合からすると春に降ってくる黄砂といったほうが正しいか。黄砂は中国西部のタクラマカン砂漠や、北部のゴビ砂漠の砂塵が上空に巻き上げられ、国境を跨いで飛んできては田畑や健康に被害を与えるもので、日本でも毎年多くの被害が報告されている。まさか射撃用のレーダーばかりでなく有害濃霧や黄砂を日本に照射しているわけではあるまい。
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする