デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

マリリン・スコット、パリを歌う

2014-03-16 08:40:48 | Weblog
札幌のススキノにオールディーズのリクエストに応えてくれる「ザ・キッパーズ」という同名のバンドが入っているライブスポットがあり、連夜賑わっている。団塊世代の紳士淑女がひととき青春時代に戻れる場所だ。先日、居合わせた小生より一回り年上の方と、バンドが「ラヴ・ミー・テンダー」を歌ったことから、プレスリーの話題になった。「G.I.ブルース」にイカす女が出ていてね、なんて名前だったかなぁ・・・確かジュリエット・プラウズのはずだ、と言う。

 知らない名前だったが、イカす女となれば気になる。他にどんな映画に出ていたのかと聞くと、シナトラとも共演していたそうだ。調べてみると1953年のミュージカルを1960年に映画化した「カンカン」に出演していた。音楽を担当したのはコール・ポーターで、このミュージカルからは「It's Alright with Me」や「C'est Magnifique」が生まれているが、主題歌として書かれた「I Love Paris」はパリを訪れたことがないシンガーでも取り上げるほどの名曲だ。ポーターがパリの屋根を描いたセットの素晴らしさに驚嘆し、僅か30分で作詞作曲したという。その目で見た美をそのまま音符に書き換えたメロディは実に美しい。

 最近はあまり歌われなくなったが、2007年にAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の歌姫と呼ばれたマリリン・スコットが録音している。ソウルフルで垢抜けた声は気持ちがいい。「Every Time We Say Goodbye」と題されたアルバムはタイトル曲をはじめ、「ニューヨークの秋」、「クライ・ミー・ア・リバー」といったスタンダード中心の選曲で、バックもサイラス・チェスナットやケン・ペプロウスキーらのジャズ陣がかためている。違うフィールドで歌っていたシンガーがバックにジャズプレイヤーを配するだけでジャズヴォーカルにはならないが、このアルバムが一級品に仕上がったのは天性のジャズセンスのなせる技なのだろう。

 ジュリエット・プラウズの映画は観ていないが、シナトラが一目惚れして婚約までしたというから間違いなくイカす女だ。婚約後、プラウズが芸能界引退を拒否したため婚約破棄になったが、もし引退していたらプレスリーとの共演もなかった。「I Love Movie」といったとこか。そういえば、一回り年上のプレスリー・ファンの記憶にあった名前もイカす女も当たっていた。今度お会いしたら「ぴったしカンカン」と言おう。
コメント (6)
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