デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ソニームーンは今夜も目映い

2014-07-13 08:22:27 | Weblog
 「St. Thomas」、「Oleo」、「Doxy」、「Airegin」、「Alfie's Theme」・・・言わずと知れたロリンズが作った曲だ。どの曲もタイトルを聞くだけでテーマが頭を駆け抜けるほどメロディ・ラインがくっきりしている。鉛筆の硬さで言うなら2Bで楽譜を書いたほどはっきりしていて読みやすい。読みやすいというのは音楽で言うなら覚えやすいということになる。覚えやすいから親しみが湧いてくる。

 そして、「Sonnymoon For Two」もその1曲だ。初演は1957年11月3日のヴィレッジ・ヴァンガードのライブで、ウィルバー・ウェアとエルビン・ジョーンズに鼓舞されたロリンズが延々と吹きまくっている。ライブならではの熱演だ。更に翌日はプロデューサーにレナード・フェザーを迎えてジャズアルバムの制作に乗り出したクラシック専門のレーベル「ピリオド」に録音している。こちらはトロンボーンのジミー・クリーブランドやピアノのギル・コギンズを入れたスタジオ録音だが、豪快なロリンズ節は変わらない。ライブとスタジオの違いはあるものの、続けて演奏するほどロリンズ自身気に入っていたのだろう。

 1988年にこの曲を取り上げたのはフランク・モーガンだ。50年代は西海岸のパーカーと呼ばれながらも麻薬に侵されたことから長い獄中生活を送り、80年代に奇跡的にカムバックしたアルトサックス奏者である。この「Reflections」は、「All-Stars」の編成通りジョー・ヘンダーソンをはじめ、ボビー・ハッチャーソン、惜しくも昨年亡くなったマルグリュー・ミラー、ロン・カーター、そしてアル・フォースターというまさにオールスターが勢揃いして主役のモーガンを盛り立てている。更にプロデューサーはオリン・キープニュース。聴く前からホットな音が出てくるではないか。

 「Oleo」、「Doxy」、「Airegin」の3曲は、1954年のマイルスの「バグス・グルーヴ」が初演で、この録音のために用意した新曲である。のちにジャズ・スタンダードとして多くのプレイヤーが取り上げる曲を書いたこのときロリンズは25歳だ。世紀の大名盤「サキソフォン・コロッサス」が生まれたのは、マイルスと共演したことで大きな自信を得たセッションから2年後のことである。
コメント (7)
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