デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

Little Girl Blue をピンキーで聴いてみよう

2015-02-08 09:03:26 | Weblog
 先週話題にした「Stompin’ At The Savoy」は、ビッグバンド物とコンボ物が分けて挙げられたほど録音が多かった。それもそれぞれの部門でベストが割れるだけ甲乙付け難い名演が揃っている。多くのプレイヤーが取り上げているなら手本となる決定的名演と呼ばれるものがありそうだが、意外にも決定打は見当たらない。それはスウィングからモダンまでどんなスタイルでも様になるし、ソロピアノからビッグバンドまで、どの編成でも形になる曲だからだろう。

 さて、ヴォーカルで録音が多い曲といえば何か?この時期集中して流れる「My Funny Valentine」、毎年売れる「White Christmas」、不朽の名作「Stardust」等、ジャズを聴かない方でも知っているスタンダードは別として、少々地味な曲だが「Little Girl Blue」は意外とカヴァーが多い。リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの名コンビによる楽曲だ。このタイトルで検索をかけると真っ先に出てくるニーナ・シモンをはじめ、ドリス・デイやジョニ・ジェイムスのポピュラーなものからアニタ・オデイやエセル・エニスのジャジーなもの、更にジャニス・ジョプリンと幅広い。

 当地は今、冬の風物詩である「さっぽろ雪まつり」が開催中なので、ピンキー・ウィンターズで聴いてみよう。1954年に録音されたデビュー盤で、オリジナルのVantage10吋盤は恐ろしい価格で取引されていた。バックはバド・ラヴィン・トリオだ。バドといえば同レーベルの「Moods In Jazz」は、文句なしの名盤、いや、ジャケ買いのベスト盤として知られるが、唄伴も上手い。ピンキーはこの時23歳なのだが、デビュー盤らしく瑞々しい一面と、曲によっては大人の色気を匂わせる。例えるなら見た目には初々しいが、味わってみると深いコクがあるピンクシャンパンだろうか。

もしこの曲が収録されている日本盤をお持ちならライナーノーツをご覧いただきたい。他の曲は歌詞に言及しているのに、どういうわけかこの曲の歌詞の意味に触れらているものはない。ハートの歌詞は、この曲が使用されたミュージカル「Jumbo」の筋を知らないと理解し難くなっているようだ。その難解さが逆に面白いのだろう。カヴァーが多いわけはそこにあるのかもしれない。
コメント (10)
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