デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

いつかどこかで聴いた Jazz Band Ball

2015-02-15 09:01:28 | Weblog
 昨夜、札幌駅直結のJRタワー展望室T38で、「そらのバレンタインコンサート」が開かれた。毎年恒例のイベントで、佐藤香織のピアノ、ベースは鈴木由一、そして佐々木慶一のドラムという「DAY BY DAY」のハウスバンドにシンガーの稲川由紀が加わってのミニライブである。ジャズと一面に広がる夜景、チョコレート片手に愛を語るには最高のシチュエーションかもしれない。

 お約束の「My Funny Valentine」も演奏された。このバレンタインは人名で、バレンタイン・デイにちなんだものではないが、いつの間にかこの日の定番になった曲だ。1937年にロジャースとハートの名コンビがミュージカル「Babes in Arms」のために書いたもので、この作品は名曲の宝庫と呼ばれている。ジュディ・ガーランドの名唱が聴こえてくる「I Wish I Were In Love Again」をはじめ、ジョージ・ウォーリントンがカフェボヘミアで毎晩演奏していた「Johnny One Note」、タイトルからはふしだらな女をイメージさせるが、自分に正直な女を表現している「The Lady Is A Tramp」・・・

 そして、「Where or When」、全て同じミュージカルの挿入歌だ。「My Funny Valentine」ほどではないが、ストリングスをバックに美しいメロディを際立たせたクリフォード・ブラウンや、甘いトーンながら刺激的なフレーズで魅了するジョニー・スミス、速いテンポでリズミカルに仕上げたエロール・ガーナー等、インストの録音も多い。面白さで群を抜いているのはヴァイヴ奏者3人の競演だ。テリー・ギブス、ヴィクター・フェルドマン、ラリー・バンカーという1957年の録音当時トップを走る3人が和気藹々とマレットを叩いている。バトルよりも調和を優先した同種楽器の組合せは楽しい。

 展望室は最上階の38階にあり、地上160mだという。ほとんどが若いカップルで、ジャズより360度に広がる札幌の夜景を楽しみに来たと思われるが、演奏中は静かに耳を傾けていた。生のジャズ演奏に初めて接する方もいたであろう。いつかどこかで夜景を眺めたとき、このライブを思い出すかもしれない。その夜の演奏はジャズファンをも唸らせる素晴らしい内容だった。

敬称略
コメント (10)
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