デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

チューンアップしたジャンニ・バッソの Tune Up

2015-05-17 09:34:11 | Weblog
 連休中、馴染みの中古レコード店でバーゲンセールが開かれた。たまに掘り出し物もあるので見逃せない。レコードの新入荷コーナーを見てからCDの棚に移ると「Idea6 / Steppin' Out」というタイトルが目に飛び込んできた。全く知らない名前だが、2枚組の紙ジャケットで背の幅が広いので目立つ。「Idea6」というのはグループ名で、メンバーの筆頭にいるのは「Gianni Basso」だ。ジャンニ・バッソという発音だったか・・・

 見たことのある名前なのだが、咄嗟に思い出せない。確かビッグネームと共演していたような気がするのだが、そのプレイヤーもレコードも出てこない。いよいよ認知症か?もしや音を聴いたら思い出せるかもしれない、と思ったものの残念ながらそれほど音の記憶も良くないのでそのテナーを聴いても混乱するばかりだ。オリジナル中心の選曲でスタンダードはガーシュウィンの「It Ain't Necessarily So」と、マイルスの「Tune Up」が収録されている。この「Tune Up」、何とヴォーカルが入っているのだ。歌詞が付いているとは知らなかった。作詞者はTerry Crosaraで、歌っているのはFrancesca Sortinoだ。

 ドラムとピアノの短いイントラから軽快にこのフランチェスカ嬢が歌いだす。この曲の初演である1953年のマイルスのセッションではジョン・ルイスの短いソロから一気に吹き上げているのだが、それを彷彿させる。ジャケット写真はトロンボーン奏者のディノ・ピアナでバッソとともにこのバンドの中心メンバーだ。録音日は明らかではないがおそらくリリースされた2007年と思われる。トランペッターのファブリツィオ・ボッソも参加した3管編成は遅れてきたハードバップという印象で、やや古くささを感じるもののスウィング感は抜群だ。フロント陣は皆70代なので、老いてますます元気といったところか。

 この「Tune Up」という曲からようやく思い出した。チェット・ベイカーが1959年にミラノで録音したレコードに収録されていた。そうそう、このセッションに参加しているのがジャンニ・バッソだ。バッソはこのとき28歳だった。大物と共演するという緊張感からやや上擦ったプレイが目立つが、50年近く経った「Tune Up」は実に安定感がある。日々のチューンアップの賜物かもしれない。
コメント (10)
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