デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

マイナーレーベル「Choice」から「Strings Attached」をチョイス

2015-05-24 09:19:04 | Weblog
 1972年にカール・ジェファーソンが設立した「Concord Jazz」をはじめ、キーノートのプロデューサー時代、中間派の名盤を数多く制作したハリー・リムが晩年に興した「Famous Door」、プレスティッジの路線を継続した「Muse」、ドン・シュリッテンの「Xanadu」、1970年代のブルーノートと称されたデンマークの「SteepleChase」、シリアスなジャズを追求したイタリアの「Black Saint」等々、70年代は各国で多くのジャズ専門レーベルが誕生した。

 各レーベルともオーナーの好みが色濃く反映されている。72年にジェリー・マクドナルドが作った「Choice」もその一つで、ローランド・ハナ以外は全て白人ジャズメンの作品だ。86年に活動を停止しているのでカタログは30数枚だが、リー・コニッツやサル・モスカ、レニー・ホプキンスのトリスターノ派、前衛的なジミー・ジェフリー、地味なジミー・ロウルズ、才媛ジョアン・ブラッキーン、ライト・ハウス・オールスターズで活躍したベニー・アロノフ、今ではコレクターズ・アイテムになったアイリーン・クラール等、知的なミュージシャンを録音しているのが特徴だ。

 このレーベルの一番の功績といえばアル・ヘイグとジミー・レイニーの再開セッションだろう。50年代にスタン・ゲッツのバンドで活躍した二人は、ジャズシーンから遠ざかっていたが、70年代にカムバックした。それを知ったマクドナルドが逸早く録音に取り掛かったのが「Strings Attached」だ。75年の作品だがゲッツ時代と変わらぬコラボレーションをみせる。「Freedom Jazz Dance」や「Dolphin Dance」という新スタンダードの選曲は意外に思えるが、これがどうしてなかなかのものだ。ともに空白とされる時代も練習を怠ることもなく、シーンの動向を見ていたことがうかがえる。 

 冒頭で挙げたレーベルは当時売り出し中の若者ではなく、名前を忘れかけた往年のプレイヤーの録音が多い。そしてスタイルも70年代を席巻したフュージョンではなく伝統に根ざしたオーソドックスなものだ。売上第一主義のメジャーでは不可能なアルバムを作るのがこうしたジャズ専門のマイナーレーベルの強みだろう。ジャズに一家言あるオーナーの手作りレコードはジャズ愛が詰まっている。
コメント (6)
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