過ぎた雑節の話で恐縮だが、節分といえば「鬼は外、福は内」の豆まきと相場は決まっている。ところがここ数年恵方巻なるものが流行のようで我が家の食卓にものぼった。福を呼ぶ方角を向いて太巻きを食べる関西の風習がコンビニの商業ベースに乗って全国に広がったようだ。今年の恵方は「北北西」とか。これを「きたきたにし」と読み間違えた女子アナウンサーがいたという。
北北西といえば「北北西に進路を取れ」というヒッチコック監督の名作を思い出すが、ここは間違ったついでに「来た来た西」でレコードを探した。西直樹がライブ録音するイイノ・ホールに到着が遅れたので、共演する山口和与と猪俣猛が言ったと仮定しよう(初リーダー作なのでおそらく一番乗りしたと思われる、誤解なきよう)。録音は1980年で、その年のSJ誌国内最優秀録音賞を受賞している。フュージョンが跋扈する時代ならではのヒップなジャケットだが、内容はストレートなピアノトリオだ。当時、まだ日本のジャズは大丈夫だなと思ったのを覚えている。
猪俣のバンド、ザ・フォース時代から注目されたピアニストのデビュー作は期待通りの素晴らしい内容だ。ダイナミック且つ繊細なタッチでグイグイ気持ちよく引っ張る。アルバムタイトル曲をはじめ「Doxy」、「A Train」という王道を行く選曲に加え、「Billy Boy」があった。曲名を聞くだけでマイルス・バンドを去るガーランドの胸中を察したくなるが、西は初めて鍵盤に触れた少年のような驚きで音を重ねていく。手塩に掛けて育てたピアニストの背中を優しく押す猪俣のサポートも見逃せない。ベテランの仕事で最も大事なのは若手の育成である。
久しぶりの日本人ジャズマンの登場だが、日本人といえば1976年に渡米中の菊地雅章と日野皓正が結成したバンドに「東風」がある。デイヴ・リーブマンやスティーヴ・グロスマンも参加した意欲的なグループだったが、「Wishes」というアルバム1枚で消滅した。実験的なジャズはいつも逆風が吹く。このバンド名で「こち」という読み方を20歳を過ぎて初めて知った。件の女子アナを嗤えない。
北北西といえば「北北西に進路を取れ」というヒッチコック監督の名作を思い出すが、ここは間違ったついでに「来た来た西」でレコードを探した。西直樹がライブ録音するイイノ・ホールに到着が遅れたので、共演する山口和与と猪俣猛が言ったと仮定しよう(初リーダー作なのでおそらく一番乗りしたと思われる、誤解なきよう)。録音は1980年で、その年のSJ誌国内最優秀録音賞を受賞している。フュージョンが跋扈する時代ならではのヒップなジャケットだが、内容はストレートなピアノトリオだ。当時、まだ日本のジャズは大丈夫だなと思ったのを覚えている。
猪俣のバンド、ザ・フォース時代から注目されたピアニストのデビュー作は期待通りの素晴らしい内容だ。ダイナミック且つ繊細なタッチでグイグイ気持ちよく引っ張る。アルバムタイトル曲をはじめ「Doxy」、「A Train」という王道を行く選曲に加え、「Billy Boy」があった。曲名を聞くだけでマイルス・バンドを去るガーランドの胸中を察したくなるが、西は初めて鍵盤に触れた少年のような驚きで音を重ねていく。手塩に掛けて育てたピアニストの背中を優しく押す猪俣のサポートも見逃せない。ベテランの仕事で最も大事なのは若手の育成である。
久しぶりの日本人ジャズマンの登場だが、日本人といえば1976年に渡米中の菊地雅章と日野皓正が結成したバンドに「東風」がある。デイヴ・リーブマンやスティーヴ・グロスマンも参加した意欲的なグループだったが、「Wishes」というアルバム1枚で消滅した。実験的なジャズはいつも逆風が吹く。このバンド名で「こち」という読み方を20歳を過ぎて初めて知った。件の女子アナを嗤えない。