デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

永遠のジャンゴ・ラインハルト

2018-01-21 10:10:00 | Weblog
 偉大なギタリストであることはジャズファンなら誰しも知っている。ジプシーで左手に火傷を負っていること。ステファン・グラッペリとフランス・ホット・クラブ五重奏団を結成していたこと。では、ジャンゴ・ラインハルトの音源をどれほど聴いているのか?なかには千曲近い録音をコンプリートされているコレクターもおられるだろ。また、セルマーのマカフェリで奏法を研究されている人もいるかも知れない。

 一方、60年代から70年代のジャズ喫茶でファンキーの洗礼を受けた世代は、ほとんど聴く機会はなかったと思われる。ジャズ喫茶でかからないのは理由がある。まずLP単位でレコードがないこと。次にヴァイオリン、ギター、ベースという弦楽器だけによる編成はハード志向の本格的鑑賞店にそぐわない。そして、オーディオも売りにしているため録音が悪いものは敬遠された。この世代が名前を知るのはジョン・ルイスがラインハルトに捧げた珠玉のメロディー「Django」や、ジョー・パスのトリコロールのジャケットが印象的なアルバム「For Django」を聴いたからだ。

 そんな方々におすすめの映画がある。「永遠のジャンゴ」だ。映画なので脚色されているが、ジプシーであるがゆえナチスに迫害されながらも戦時下を生き抜いた音楽家の不屈の闘志が描かれていた。エピソードを断片的に切り取った編集なので分かりにくい部分もあるが、ジャンゴという人と音楽を知ることができる。圧巻はドイツ将校の晩餐会でブルースやブレイク、シンコペーション、ソロを制限されながらも、それを無視して自己のスタイルでドイツ兵たちをもスウィングさせるシーンだ。音楽に人種の壁はないことを改めて知る。

 ジャンゴはジョー・パスやジム・ホール、ラリー・コリエルというジャズギタリストばかりか、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス、B.B.キング、カルロス・サンタナ等々、多くのミュージシャンに影響を与えた。伴奏楽器のギターをソロ楽器として使用したジャンゴがいなければ、ギターの系譜は大きく変わっていただろう。それではギターの世界は寂しい。
コメント (6)
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