デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

根室のジャズ喫茶サテンドールをやってみないか

2018-02-11 09:32:08 | Weblog
 北海道の最東端に位置する根室市のジャズ喫茶「サテンドール」をご存知だろうか。根室といえば最も早く朝日が昇る納沙布岬がミツバチ族の聖地になっていて、この地を訪れたライダーが寄る店だ。70年代後半にオープンしたころ行ったことがある。構えも店内もジャズ喫茶然ではなく居心地が良かった。新聞報道で知ったのだが、オーナーの谷内田さんが高齢を理由に今年の3月で閉店するという。

 この店は全国的に有名なネムロ・ホット・ジャズ・クラブの事務局にもなっている。このクラブが主催した数々のライブは、スリー・ブラインド・マイスからレコード化されているので聴かれた方もおられるだろう。なかでも76年に録音された日野元彦の「流氷」は、日野の代表作であるとともに日本ジャズの傑作でもある。山口真文と清水靖彦の2テナーに、渡辺香津美、井野信義という当時としては最高のメンバーだ。日野グループとTBMのプロデューサー、藤井武、そして根室のジャズを愛する人たちの思いはアムール川から流れてくる氷を溶かすほど熱い。

 店名のサテンドールはエリントン・スタンダードだが、喫茶店を略した茶店とかけて珈琲専門店が全盛の70年前後は、ジャズ喫茶でなくてもこの店名が全国にあった。多くのカバーがあるので「Mood Indigo」や「Sophisticated Lady」、「In a Sentimental Mood」、「Solitude」、「Take the 'A' Train」と同じく40年前後の曲にみえるが、作曲したの53年で、ビリー・ストレイホーンとジョニー・マーサー共作の詞が付いたのは58年というから比較的新しいエリントン・ナンバーである。チャーミングなメロディーと浮き浮きする歌詞、この店名なら迷わずドアを開けたくなる。

 閉店に伴い根室市は日本最東端のジャズ喫茶を存続させようと総務省の地域おこし協力隊制度を使って全国から後継者2人を公募している。市の非常勤職員として最長3年間雇用され、15万円の報酬と住居を用意してくれるという。「地理的に最果てであっても、文化的な最果てにあらず」を掲げる根室でジャズを発信する若者はいないか。今月28日まで多くの手が上がるのを待っている。
コメント (10)
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