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忌野清志郎が喉頭がんで入院

2006-07-20 11:44:40 | ノンジャンル
たしか、深夜枠のバラエティ番組「11PM」だった。「最近の若者の言葉の乱れを憂う」という趣旨で、当時少し売れ出していたバンドを集めて、その歌詞をあげつらうという企画だった。忌野清志郎は「雨上がりの夜空に」、桑田佳祐は「勝手にシンドバッド」を歌い、軽く扱われ、実際に軽いにいちゃんだった。テレサ・テンも来日したばかりの頃は、出稼ぎに来た台湾クラブのねえちゃん扱いされていた。歌番組の司会者は尻を触らんばかりだった。


で、当時キャスターをつとめていた藤本義一は、「勝手にシンドバッド」を「歌詞が聞き取りにくい、わからない」といい、「雨上がりの夜空に」を「稚拙」と評した。俺はもちろんどちらもいいと思っていたが、当時、藤本義一を「人肉サラダ」というべらぼうに面白い小説を書く人だと尊敬していたので、自分の感想と違って少しがっかりした。言葉をリズムに乗せるために工夫を凝らした「勝手にシンドバッド」は「人肉サラダ」の大阪弁の小気味よさにも通じるし、「雨上がりの夜空に」は、まず走り屋のにいちゃんの歌であり、学園経験に偏った詞を書いていた「フォークシンガー」だった清志郎がその持ち味である叙情性を、ロックに乗せてみせた挑戦をわかっちゃいないな、でもはるかにオヤジで上方落語好きの藤本義一なら仕方ないなとも思った。検索してみたら、傑作「人肉サラダ」は廃刊になっていて、古本でしか買えなくなっていた。

いま読んでみると、「雨上がりの夜空に」はたしかに清志郎らしくない稚拙な歌詞だと思う。しかし、清志郎が追悼されるとすれば、この歌を代表曲としてメディアは流すのだろうな。ただ、「雨上がりの夜空に」は、車とドライブに擬して、女とセックスを歌ったとも思える。「11PM」は新人扱いしていたが、当時、「知る人ぞ知る」忌野清志郎は桑田佳祐よりはるかに年長、大人だったのだから、ロックで売れ線を狙った「雨上がりの夜空に」にそのくらいの企みがあってもおかしくない。「こんな夜に発射できないなんて~」。
コメント
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