コタツ評論

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秋葉原殺傷事件

2008-06-13 00:23:05 | ノンジャンル
TVは秋葉原殺傷事件を連日流している。

事件2日前の6日、福井市のミリタリーショップで今回の事件に使った凶器のダガーナイフ(短剣、刃渡り約13センチ)などナイフ6本を購入する様子が各局で放映されてきた。たぶん、店の防犯カメラの映像だろう。今日の朝、その映像にはじめて音声が入ったのを視た。

事件直前の加藤容疑者(容疑ではないが)の鮮明な動画画像なので、朝昼晩のニュースで繰り返し流されてきたものだ。今日あたりから、加藤容疑者の掲示板への書き込みの内容と分析に各局はシフトしてきているが、なぜか当初は映像のみで音声は入っていなかった。

どこの局のどのニュースの時間に何というコメンテーターがこの発言をしたか、記憶が定かでないので特定はできない。ただ、この発言があったことはよく覚えている。防犯ビデオに映った加藤容疑者はにこやかにレジカウンターの店員と話している様子だった。そして、加藤容疑者は笑いながら、右手を腰のあたりから何度が突き出すような仕草を店員にして見せた。

そこで、たしか男性のコメンテーターが、「まるで人を突き刺しているような格好ですね」と怖ろしげにいった。ニュースの司会者もレポーターも、横に並んでいた他のコメンテーターも、否定も肯定も口にはせず、固唾をのんで見守っている風だった。いや、「そうですね」という声があったかもしれない。

それを視ていた俺は、やはりびっくりし、怖気だった。嬉しそうに人を刺す真似をしている客に6本ものナイフを売っている店と店員に、だ。その2日後、客は休日の秋葉原の混雑する交差点にトラックで突っ込んで通行人を撥ね、トラックから降りてから、その店で購入したナイフで手当たり次第に、そこにいた人々を刺してまわったのを知っているからだ。

今朝の朝のワイドショーで放映された、音声入りの防犯ビデオ映像と解説を聞いて、俺はもういちど驚いた。ミリタリーショップの店員は女性で、加藤容疑者はそれに気をよくしたのか、故郷の青森の話をしたのだった。「青森で生まれて育った」といった加藤容疑者に対し、「雪が多いところですね」と女店員が応じた後に、加藤容疑者の仕草が出たのだった。

加藤容疑者が右手を腰の辺りからまっすぐに突き出すような仕草を繰り返したのは、人を刺す真似ではまったくなく、雪下ろしを示すものであった。屋根から幅広の四角いプラスチックスコップを使って雪を押し下ろす仕草だったのだ。当初は音声がなかったため、画像だけ見て、俺と同様コメンテーターも、その後の人を刺す場面を想像してしまったわけだ。

いかなTVとはいえ、故意に音声を消してまで放映したとまでは思えないし、思いたくもない。だが、いずれにしろ、同じことではないかという声も聴こえるのだ。7人もの男女を殺した犯人の顔が視たい、その犯人が右手を何回も突き出して、笑いながら人を刺している様、それこそ俺たちが視たい映像ではなかったか。