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喜びは悲しみのあとに

2008-07-27 23:54:51 | ブックオフ本
『喜びは悲しみのあとに』(上原 隆 幻冬舎アウトロー文庫)

タイトルは、キャロル・キングの「Bitter With The Sweet」の邦題からとったものだという。目次の後に、歌詞の全訳が掲載されている。

おもしろいこと、なんにもない
自分は、ほんとうに自分のゲームを
していない
誰もがみんな、そう思ってる
ねえ、でもこれだけはいえる
完璧な人生なんてありえない
だから喜びや悲しみを経験するの

つらい過去を話してくれた友だちが
こういったよ
「人生でやらねばならないことなんて
案外いま、やっていることだったりするのさ」

ね、あなたは暗くならないで
いまはつらいだろうけど
みんなそうしている、あなたも大丈夫
これ知っていればくじけないよ
もう、わかったでしょう
喜びは悲しみのあとにかならずやってくる

それぞれの悲しみを経て、それぞれの人生に喜びを見出した人々の18枚のスケッチである。鶴見俊輔の解説によれば、この50年間に生まれた「新しい日本人の肖像」を描いた「記録文学」だという。以前に紹介した『友がみな我よりえらく見える日は』の続編。http://moon.ap.teacup.com/applet/chijin/archive?b=5

疋田桂一郎のいう「無味無臭の真水」のような文章だが、胸に迫る話ばかりで落涙の怖れがあり、電車の座席などで読むのはお勧めできない。俺にとってとくに印象的なのは、「私小説」的な「インポテンスの耐えられない重さ」だった。
コメント
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