コタツ評論

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韓国映画の話題作続々

2017-02-15 21:58:00 | レンタルDVD映画
金正男暗殺のニュースを聞いて、半島も日本の植民地だった抑圧の記憶が暴力指向につながっているのではないかと思った。以前に、アメリカの植民地といえる中南米の国々に顕著なマチズモを研究した本を読んだことがある。独裁的軍事政権、クーデター、反政府ゲリラ、ギャングなどの暴行、暗殺、拉致、拷問、あらゆる暴力が渦巻いてきた。

もちろん、こうした中南米諸国と韓国はまるで異なる。日本と比べられるくらい韓国は治安のよい国だ。にもかかわらず、韓国映画の暴力性は際立っている。韓国映画といえば甘い甘い恋愛映画か、殺伐とした犯罪映画の両極端に特徴づけられるが、瞠目すべき作品は後者に圧倒的に多い。凄惨きわまる暴力場面や極悪非道な人間悪を容赦なく描く点では、たぶん世界の映画界でも突出しているはず。

韓国の代表的な映画賞である青龍賞の男優助演賞とファンが選ぶ人気スター賞を國村隼が獲得した「哭声コクソン」を皮切りに、「アシュラ」、「お嬢さん」など、韓国の猟奇・犯罪・暴力映画の話題作が今春続々公開される。

すれっからしの映画ファンでも未見ならびっくりするはず。こうした映画がヒットして次々に製作できることにはただ驚かされる。文化人類学のアプローチが必要だとすら思えるほど、ガラパゴス的な到達ではないかと思う。どの国の映画にも似ていない作品群を韓国映画界は再生産し続けている。



もし時間があるなら、「世界のクロサワ」と称されているらしい黒沢清監督の近作「クリーピー 偽りの隣人」と観比べてほしい。暴力と恐怖を扱って韓国映画が独壇場であることがわかるはず。

(敬称略)



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