コタツ評論

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コートにスミレを

2014-10-19 03:06:00 | 音楽
すてきなタイトルですね。たとえばオードリー・ヘプバーンのような娘が、襟にスミレをつけた丈の短い薄手のトレンチコートの裾を返して、都会を闊歩する姿が見えるようです。恋して恋される娘の輝く瞳のクローズアップ! 

John Coltrane Quartet - Violets For Your Furs


でも、原題は ”violets for your furs ”「あなたの毛皮にスミレを(買った)」です。コートではなく毛皮となるとずいぶんイメージが変わります。紫が映えるとなると、黒いミンクではなくシルバーフォックスでしょうか。とすれば、ゴージャスで妖艶な女ですね。毛皮を着る冬にスミレを買うとはキザな伊達男でしょうか。

でも、武骨なコルトレーンの演奏は、スミレを贈る内気な男心に寄せているかのようです。もともと女を賛美する男視線の歌なんです。たいていのジャズ・スタンダード曲がそうであるように、フランク・シナトラの歌唱が白眉ですが、今回はハドリー・フレーザーで。

Hadley Fraser "Violets For Your Furs"


ビリー・ホリディは”violets for my furs ”と女心に歌い替えています。自ら買ったのか、以前の男が買ってくれたのか、毛皮への執着がうかがえますから、あまり裕福とは思えない男女です。四季をともにしているからたぶん同棲しているのでしょう。たった一度、男がスミレを買ってくれたことを想い出しているのは、いまがあまり幸せとはいえないからでしょうか。いや、幸せだったときに戻って陶然としている女を歌っています。

Lady in Satin Billie Holiday & Ray Ellis - Violets For Your Furs (Columbia Records 1958)


You bought me violets for my furs
And it was spring for a while, remember?
You bought me violets for my furs
And there was April in that December

The snow drifted on the flowers and melted where it lay
The snow looked like dew on the blossoms
As on a Summer day

You bought me violets for my furs
And there was blue in the wintry sky
You pinned the violets to my furs
And gave a lift to the crowds passing by

You smiled at me so sweetly
Since then one thought occurs
That we fell in love completely
The day you bought me violets for my furs

You smiled at me so sweetly
Since then one thought occurs
That we fell in love completely
The day you bought me violets for my furs

(敬称略)
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