セクシャル・ハラスメント(猥褻強要)と自分なりに理解しようとしているが、パワー・ハラスメントを適当な日本語で置き換えるのは難しい。とりあえず、権力(パワー)を背景とした「苛め」と私は整理している。
有形無形の権力的な優位性を意識無意識に背景として、劣位の対象者を「苛め苛む(いじめさいなむ)」わけで、これはパワハラだけでなく、セクハラやレイシズムも同じ構造といえるだろう。
たぶん、第一報はこれ(記事全文)。
福島県警捜査2課の2人、相次ぎ自殺 上司と部下
2014年5月1日13時03分
http://www.asahi.com/articles/ASG5131QQG51UGTB001.html
福島県警捜査2課の男性警視(52)と男性警部(51)が4月下旬に相次いで自殺していたことが1日、県警への取材でわかった。2人は上司と部下で、県警は自殺の理由と関連について調べている。
県警幹部によると、課長補佐の警部は4月28日朝、福島市の県警山下庁舎内で首をつって死亡していた。遺書があり、仕事上の悩みも書かれていた。なりすまし詐欺事件などを担当していた。「事件化するのが難しい」と家族に悩みを漏らしていたという。
同課指導官の警視は29日から行方不明になり、30日午前に山形県内に止めた乗用車の中で首をつって死亡していた。遺書が見つかり、亡くなった警部に寄り添えなかった、との趣旨が記されていたという。
その後、「パワハラによる相次ぐ自殺」と認定されるが、警察発表をそのまま記事にしているため、「パ」の字も出てこない。
捜査二課長を戒告 県警2幹部自殺 パワハラが一因と認定 過酷な勤務、焦燥感も
2014/06/27 10:13
http://www.minpo.jp/news/detail/2014062716546
5/1の第一報から、およそ2か月がたっていることに注目してほしい。たとえ、記者が取材して、パワハラが原因と知ったとしても、書けない。警察が認めなければ、取材の裏が取れたことにはならないからだ。
「裏づけが取れなければ書けません」とは、この場合、記事の責任や取材の倫理に基づくものではなく、警察情報をもらう立場という権力関係の劣位によるものだ。
上の福島民報、下の朝日新聞、いずれの記事も似通っているのは、警察発表という出所が同じだからだ。ただし、事件を隠蔽せず調査して発表した福島県警の姿勢は評価に値する。
職場で執拗に非難、業務も進まず 福島県警パワハラ自殺
http://digital.asahi.com/articles/ASG727W7SG6ZUGTB01N.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG727W7SG6ZUGTB01N
「小学生みたいな文章を作ってんじゃねえ」「何やってんの。あんた本当に警部。国語習ってきたの」
調査結果によると、前課長は昨年12月~今年4月ごろ、決裁をもらうために文書を持ってきた年上の警部を自席の前に立たせ、他の課員もいる中、べらんめえ口調の大声で執拗(しつよう)に非難し、何度も書き直させた。他の課員2人にも昨年5月以降、「あんたは係長以下だ」などと叱責(しっせき)していた。
警部は課長補佐として、なりすまし詐欺事件を担当していた。捜査態勢の変更で警察署との調整に苦労していた今年1月ごろ、同僚に「書類を何度も直されて困っている」「眠れない」と相談していた。
4月からは担当事件が増え、捜査方針も大きく変更して負担が増していた。さらに詐欺事件で逮捕した容疑者が不起訴の見通しになり、警部は落胆した表情を浮かべていた。
4月27日の日曜日。出勤した警部は普段吸わないたばこを吸い、「頼りない補佐でごめんね」と周囲に謝った。電話してきた同僚にも「困ったな。もう駄目なんだ」と話したという。
翌日未明、職場のある福島市内の県警施設に行き、自席のパソコンで遺書を書き、首をつった。机にあった遺書には「来る日も来る日も書類の訂正で、思うように仕事ができませんでした」と書かれていた。
警察庁から昨年3月、県警に赴任した前課長は当初、課内ナンバー2の警視の助言を素直に聞いていたが、次第に耳を貸さなくなった。警視は家族らに「今の課長は全く言うことを聞かない」とこぼしていた。
警部が自殺した直後、警視は号泣した。2日後、山形市内に止めた車の外で首をつった遺体で見つかった。車内にあった遺書には「○○(警部の名前)君、最後まで寄り添うことができず申し訳ありませんでした」、さらに「2課の皆様、最後まで支えることができず申し訳ありませんでした」と書かれていた。
警部が自殺した4月の超過勤務時間は142時間に達し、休日はたった1日だった、というから、精神的に追いつめられてのことだろう。清野課長に、というより、清野課長のおかげで業務が停滞し、課と課員に多大な迷惑をかけているというプレッシャーが大きく重すぎたのではないか。
後を追った警視の自殺は、まず何より、警部と課員へ詫びるためであるが、一死をもって県警上層部へ清野課長を告発したものではないだろう。警視が望んだのは、自らが死ぬことによって、確実に予測できる、清野課長の異動ではなかったか。
後任課長に佐々木氏 パワハラ問題で清野前課長は転出
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140628-00010005-minyu-l07
自殺した警部(51)は、役職としては課長補佐で階級は警部、ノンキャリアだ。後追い自殺した警視(52)は、役職は課NO.2の指導官で階級は警視、やはりノンキャリア。一方、更迭された清野前課長(45)の階級は警視、準キャリアとされる国家公務員Ⅱ種採用である。新任の佐々木課長(31)はやはり警視だが、国家公務員Ⅰ種採用のキャリアだ。
年齢と階級に注目してほしい。ノンキャリアは52歳、準キャリアは45歳、キャリアは31歳の警視である。その上に警視正があるが、ノンキャリアとしては警視は登りつめた階級であり、所轄署の捜査官から仰ぎみられる県警のエリートといえる。したがって、決済書類が稚拙だったり、度々間違えたりするなど絶対といってよいほど、あり得ない。警察文書なら完璧に書けなければ、そこまで上がることはけっしてできない。
自殺した警部と警視は、もっとも熟練した警察官であり、最上の捜査指揮官だったはずであり、2年や3年で異動する準キャリアやキャリアでは、実績や経験では及びもつかないことは自明だ。しかし、準キャリアなら、ノンキャリアを「小学生か」と面罵できる。もっとも、捜査技術や実務を知らず、文章表現に難癖をつけるくらいしかできなかったのだろうが。
役職や階級が下の警部はもちろん、階級を同じくする警視も、課長の理不尽な罵詈雑言に、「お言葉ですが」とはいえなかった。ましてや、清野課長の不適格や不当な要求を指摘することはとてもできなかった。それをすれば、キャリアを頂点とする権力構造そのものを批判することになりかねないからだ。
実力主義や能力主義ではないのはもちろん、階級や役職さえ超越したキャリア社会であることを警察が認め、これをあらためない限り、こうした悲劇は繰り返され、たぶん、今回の事件も、清野隆行前課長への「苛め」で終わるだろう。
戒告処分を受けた清野課長は、「業務指導の範囲内と思っていたが、今はパワハラと認識している。多大なる精神的苦痛を加え、深くおわびします」と謝罪しているという。戒告処分は甘いという批判もあるが、自殺した警部と警視に清野課長へ当てつけの意思はなかったように思う。
ただただ、きちんと仕事がしたいのにそれが叶わなかったことに絶望したのではないか。それほど、清野課長の「業務指導」は、業務を破壊する悪意に満ちていたにもかかわらず、二人が願ったのは清野課長の告発ではなく、「準キャリア」の異動ではなかったか。彼らは、何よりも、仲間と職場を守りたかっただけではないか。
つまり、二人は、捜査2課のNO.2とNO.3として、課員の業務を統括し捜査を指揮する立場であった。同時に、つね日頃から、課の同僚や部下を守る立場を強く意識していた。二人は自死とひきかえに、守るべきものを守ろうとする責任を果たそうとした。その償いの宛先は、やはり、「仲間」だけではない、誰かや何かだったのだと思う。
BABYMETAL - イジメ、ダメ、ゼッタイ - Ijime,Dame,Zettai
(敬称略)
有形無形の権力的な優位性を意識無意識に背景として、劣位の対象者を「苛め苛む(いじめさいなむ)」わけで、これはパワハラだけでなく、セクハラやレイシズムも同じ構造といえるだろう。
たぶん、第一報はこれ(記事全文)。
福島県警捜査2課の2人、相次ぎ自殺 上司と部下
2014年5月1日13時03分
http://www.asahi.com/articles/ASG5131QQG51UGTB001.html
福島県警捜査2課の男性警視(52)と男性警部(51)が4月下旬に相次いで自殺していたことが1日、県警への取材でわかった。2人は上司と部下で、県警は自殺の理由と関連について調べている。
県警幹部によると、課長補佐の警部は4月28日朝、福島市の県警山下庁舎内で首をつって死亡していた。遺書があり、仕事上の悩みも書かれていた。なりすまし詐欺事件などを担当していた。「事件化するのが難しい」と家族に悩みを漏らしていたという。
同課指導官の警視は29日から行方不明になり、30日午前に山形県内に止めた乗用車の中で首をつって死亡していた。遺書が見つかり、亡くなった警部に寄り添えなかった、との趣旨が記されていたという。
その後、「パワハラによる相次ぐ自殺」と認定されるが、警察発表をそのまま記事にしているため、「パ」の字も出てこない。
捜査二課長を戒告 県警2幹部自殺 パワハラが一因と認定 過酷な勤務、焦燥感も
2014/06/27 10:13
http://www.minpo.jp/news/detail/2014062716546
5/1の第一報から、およそ2か月がたっていることに注目してほしい。たとえ、記者が取材して、パワハラが原因と知ったとしても、書けない。警察が認めなければ、取材の裏が取れたことにはならないからだ。
「裏づけが取れなければ書けません」とは、この場合、記事の責任や取材の倫理に基づくものではなく、警察情報をもらう立場という権力関係の劣位によるものだ。
上の福島民報、下の朝日新聞、いずれの記事も似通っているのは、警察発表という出所が同じだからだ。ただし、事件を隠蔽せず調査して発表した福島県警の姿勢は評価に値する。
職場で執拗に非難、業務も進まず 福島県警パワハラ自殺
http://digital.asahi.com/articles/ASG727W7SG6ZUGTB01N.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG727W7SG6ZUGTB01N
「小学生みたいな文章を作ってんじゃねえ」「何やってんの。あんた本当に警部。国語習ってきたの」
調査結果によると、前課長は昨年12月~今年4月ごろ、決裁をもらうために文書を持ってきた年上の警部を自席の前に立たせ、他の課員もいる中、べらんめえ口調の大声で執拗(しつよう)に非難し、何度も書き直させた。他の課員2人にも昨年5月以降、「あんたは係長以下だ」などと叱責(しっせき)していた。
警部は課長補佐として、なりすまし詐欺事件を担当していた。捜査態勢の変更で警察署との調整に苦労していた今年1月ごろ、同僚に「書類を何度も直されて困っている」「眠れない」と相談していた。
4月からは担当事件が増え、捜査方針も大きく変更して負担が増していた。さらに詐欺事件で逮捕した容疑者が不起訴の見通しになり、警部は落胆した表情を浮かべていた。
4月27日の日曜日。出勤した警部は普段吸わないたばこを吸い、「頼りない補佐でごめんね」と周囲に謝った。電話してきた同僚にも「困ったな。もう駄目なんだ」と話したという。
翌日未明、職場のある福島市内の県警施設に行き、自席のパソコンで遺書を書き、首をつった。机にあった遺書には「来る日も来る日も書類の訂正で、思うように仕事ができませんでした」と書かれていた。
警察庁から昨年3月、県警に赴任した前課長は当初、課内ナンバー2の警視の助言を素直に聞いていたが、次第に耳を貸さなくなった。警視は家族らに「今の課長は全く言うことを聞かない」とこぼしていた。
警部が自殺した直後、警視は号泣した。2日後、山形市内に止めた車の外で首をつった遺体で見つかった。車内にあった遺書には「○○(警部の名前)君、最後まで寄り添うことができず申し訳ありませんでした」、さらに「2課の皆様、最後まで支えることができず申し訳ありませんでした」と書かれていた。
警部が自殺した4月の超過勤務時間は142時間に達し、休日はたった1日だった、というから、精神的に追いつめられてのことだろう。清野課長に、というより、清野課長のおかげで業務が停滞し、課と課員に多大な迷惑をかけているというプレッシャーが大きく重すぎたのではないか。
後を追った警視の自殺は、まず何より、警部と課員へ詫びるためであるが、一死をもって県警上層部へ清野課長を告発したものではないだろう。警視が望んだのは、自らが死ぬことによって、確実に予測できる、清野課長の異動ではなかったか。
後任課長に佐々木氏 パワハラ問題で清野前課長は転出
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140628-00010005-minyu-l07
自殺した警部(51)は、役職としては課長補佐で階級は警部、ノンキャリアだ。後追い自殺した警視(52)は、役職は課NO.2の指導官で階級は警視、やはりノンキャリア。一方、更迭された清野前課長(45)の階級は警視、準キャリアとされる国家公務員Ⅱ種採用である。新任の佐々木課長(31)はやはり警視だが、国家公務員Ⅰ種採用のキャリアだ。
年齢と階級に注目してほしい。ノンキャリアは52歳、準キャリアは45歳、キャリアは31歳の警視である。その上に警視正があるが、ノンキャリアとしては警視は登りつめた階級であり、所轄署の捜査官から仰ぎみられる県警のエリートといえる。したがって、決済書類が稚拙だったり、度々間違えたりするなど絶対といってよいほど、あり得ない。警察文書なら完璧に書けなければ、そこまで上がることはけっしてできない。
自殺した警部と警視は、もっとも熟練した警察官であり、最上の捜査指揮官だったはずであり、2年や3年で異動する準キャリアやキャリアでは、実績や経験では及びもつかないことは自明だ。しかし、準キャリアなら、ノンキャリアを「小学生か」と面罵できる。もっとも、捜査技術や実務を知らず、文章表現に難癖をつけるくらいしかできなかったのだろうが。
役職や階級が下の警部はもちろん、階級を同じくする警視も、課長の理不尽な罵詈雑言に、「お言葉ですが」とはいえなかった。ましてや、清野課長の不適格や不当な要求を指摘することはとてもできなかった。それをすれば、キャリアを頂点とする権力構造そのものを批判することになりかねないからだ。
実力主義や能力主義ではないのはもちろん、階級や役職さえ超越したキャリア社会であることを警察が認め、これをあらためない限り、こうした悲劇は繰り返され、たぶん、今回の事件も、清野隆行前課長への「苛め」で終わるだろう。
戒告処分を受けた清野課長は、「業務指導の範囲内と思っていたが、今はパワハラと認識している。多大なる精神的苦痛を加え、深くおわびします」と謝罪しているという。戒告処分は甘いという批判もあるが、自殺した警部と警視に清野課長へ当てつけの意思はなかったように思う。
ただただ、きちんと仕事がしたいのにそれが叶わなかったことに絶望したのではないか。それほど、清野課長の「業務指導」は、業務を破壊する悪意に満ちていたにもかかわらず、二人が願ったのは清野課長の告発ではなく、「準キャリア」の異動ではなかったか。彼らは、何よりも、仲間と職場を守りたかっただけではないか。
つまり、二人は、捜査2課のNO.2とNO.3として、課員の業務を統括し捜査を指揮する立場であった。同時に、つね日頃から、課の同僚や部下を守る立場を強く意識していた。二人は自死とひきかえに、守るべきものを守ろうとする責任を果たそうとした。その償いの宛先は、やはり、「仲間」だけではない、誰かや何かだったのだと思う。
BABYMETAL - イジメ、ダメ、ゼッタイ - Ijime,Dame,Zettai
(敬称略)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます