コタツ評論

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スリー・ビルボード

2018-05-17 22:54:00 | レンタルDVD映画


最近はTUTAYAのビデオレンタルより、CATVのオンデマンドで観ることが多いですが。

噂にたがわぬ秀作。筋にさわるとネタバレ必至なので書きにくいが、二転三転するストーリーがすべてのような作品。ただし、あきらかなミスキャストが、巧緻をきわめた脚本を台無しにした。

フランシス・マクドーマンド 、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、いずれも名優なのだが、サム・ロックウェルを起用したのは大失敗でした。無知無教養で差別的な南部の警官が登場して、あっ、「月に囚われた男」のサム・ロックウェルだ!と気づいたときから、この映画の主役は3人だとわかってしまう。

ゲイリー・オールドマンのスパイ映画「裏切りのサーカス」でも、さてこのメンバーのうちで犯人は誰なのか?と映画が語りかけても、コリン・ファースがそこで映されたら、ル・カレの原作を読んでいない人だって、こいつが犯人だとすぐにわかってしまう。ゲイリー・オールドマンに匹敵するスター俳優は彼だけなのだから。

たとえば、殺人事件が起きて、刑事たちが目撃者を探しているとき、聞き込みにまわった一人が犯罪現場近くの駐車場のガードマンで、それを役所広司が演じていたら、珍しく端役やちょい役で出ているのねとはだれも思わないでしょ。その他大勢的な扱いでも、スターや名優が登場したなら、観客はすぐに犯人か、あるいは事件のカギを握る重要人物だと思う、あれです。

主役が3人なら、ストーリーも三通りに決まっている。娘をレイプ殺害された母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)と彼女からいまだ捜査の糸口さえつかめぬ怠慢と追及される警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)、それぞれの仕事や家庭が描かれ、二人の軋轢にからんで暴発する部下のディクソン(サム・ロックウェル)というわけだ。

競馬でいうと先行するのが、やや体重重めの牝馬ミルドレッド、中盤で馬力をみせつけて追い上げてあれよという間に先頭に位置する差し馬がウィロビー、発走直後からドタドタと見苦しい駄馬の走りで最後方にいたはずなのに、ゴール直前ではなんとミルドレッドと鼻差で競っているディクソンということになる。

なるほどね、やっぱりディクソンの再生の物語が全体の伏線なのかと納得しかけると、反目していたはずのミルドレッドとディクソンがゴールを目前にして立ち止まり、なかよく踵を返し引き返すのだ。ミルドレッドとディクソンの道行き、コースどころか、競馬場すら後にして。ここだけは意外な展開だった。

結局、盛大にネタバレしちゃった感もあるが、あなたは、サム・ロックウェルを知らない? フランシス・マクドーマンドやウディ・ハレルソンも? それはよかった。それなら、私の2倍3売、この映画を楽しめるでしょう。ずいぶん興趣をそがれた気がしますが、そんな私でも、たぶん今年観た映画のベスト級になるだろうと太鼓判を押すことを厭いません。

(止め)
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1 コメント

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Unknown (karanotomo)
2018-05-18 05:44:51
劇場に観に行こうかと思ってるうちに、公開が終わっちゃいましたね。

フランシス・マクドゥーマンドの出てた映画は、「ファーゴ」から「マデライン」まで4本は思い出せますが、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルが出てきた映画ってのは思い出せないので、多分楽しめると思います。顔見たら思い出しちゃうかもしれないけど。
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