コタツ評論

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頭突きされてきたジタン

2006-07-14 23:54:30 | ノンジャンル
ジタンは一見白人に見えるが、フランスの旧植民地アルジェリアの非白人であるベルベル人のイスラム教徒らしい。この複雑な出自によって、ジタンに強固な後ろ盾となるような民族集団や宗教組織及び政治勢力はないという。その一方、フランスの階級社会と軋轢を生んでいる多様な民族や宗教を持つ移民社会の融和のシンボルとして扱われてきたようだ。家族を侮辱されたとジタンはいっているが、ならば本質は差別の問題なのかもしれない。サッカーは貧民の貧民のための貧民によるスポーツである。無知無教養な貧乏人に偏見の持ち主や差別主義者は珍しくない。そういえば、中田はセリエAでは出番が少なかったな。

ジタンの頭突き

2006-07-14 00:26:12 | ノンジャンル
マテラッツィは何語でジタンを罵ったのだろう?
ジタンはTVインタビューで、少年ファンたちに謝罪し、しかし後悔はしていない、といったそうだ。大人なら理解できるはず、が言外か。たかがサッカー選手なのに、このレトリック! 日本の外務委員会にゼシ欲しい人材である。政治や外交とは、したがって戦争も、まず言葉ありきなのだ。つねにマークする相手のユニホームを引っ張り続け、罵倒を浴びせ続ける粘着に、イタリアの守備の凄さの一端を垣間見た気がする。専守防衛とは、相手を挑発して暴発させ、退場させるような、こうした地道な努力と技術の積み重ねなのだ。換言すれば、平和とは、戦争をしないという強い意志の下、戦争の一歩手前まで、対手を叩きのめす政治外交を尽くすということか。対手を叩きのめす実力があってこそ、はじめて妥協が有効に作用する。罵倒があるから美辞麗句が生きる。マテラッツィもジタンのサッカーについてマイクを向けられれば、偉大な選手と試合できたことを誇りに思う、と心からいうだろう。ところで、ジタンとマテラッツィは何語でやりとりしたんだ? どうして金正日に朝鮮語で話しかける外交官や議員が一人もいないのだろう。かつて、国際的な仕事をする日本人は、露華鮮の言葉に通じていなければならなかった。6カ国協議とは露華鮮であり、日本が位置する極東の国際社会である。この時節に、小学校から英語教育をはじめるという。ああもうね、パパはなんだかわからない。

オリバー・ツイスト

2006-07-06 19:48:13 | レンタルDVD映画
書き直そうと思っていたら、元の文を消してしまった。

ようするに、オリバー少年をどう見るか。主人公でありながら、存在感が希薄で弱々しい印象に終始する。それはどうしてなのか。オリバー少年が貧しい孤児だからだ。
この映画は、マルクスの盟友エンゲルスが「イギリス労働者階級の現状」という有名なルポを書いた19世紀のロンドンを舞台としている。そこでは年端もいかぬ子どもたちが、狭いカイコ棚ベッドに寝かされ、長時間の重労働に酷使されていた。おかげで若年層の発育不良は著しく、徴兵検査の基準身長を引き下げるほどだったとエンゲルスは報告している。オリバーの境遇はさらにそれ以下だった。努力すれば、一生懸命やれば道は開けるとは、民主主義的な夢想であっても、絶対的な貧困下においては現実ではない。19世紀のイギリスが野蛮な弱肉強食の時代だったからか。むしろ、今日とさほど変わらぬ市民社会と法治が築かれていたと描かれている。ただ、オリバーはその市民社会には決して入れず、法治なるものはひたすら冷酷にオリバーを扱うだけだった。誰も庇護者がいない無知無力な子どものオリバーはおずおずとか細い声で話す。社会的弱者のひとつの現実である。

ロンドンで飢え死に寸前のオリバーを拾って食事を与えたのは、少年窃盗団のボスであり、盗品の故買屋を兼ねるフェイギン老人だった。少年窃盗団の一員として生き延びる道がオリバーに開ける。そこで、オリバーに悪事に対する忌避感を見て取ることはできない。飢えを満たされ、庇護者と仲間を得たオリバーは幸福そうにさえ見える。これもひとつの現実である。現実とはありふれた事実の追認でしかない。ならばなぜ、オリバーの物語なのか。そうした疑問がずっと残っていく。一方、フェイギン老人は、子どもを利用した悪事で稼いだ金品を老後の蓄えとして隠し持ち、派手な散財などせず、少年たちを疑似家族として、つましく暮らしている資本主義的精神に富んだ人物である。体制や権力への反逆の心はフェイギン老人にもその少年窃盗団の子どもたちにもない。警察に逮捕されて絞首刑にされることを「ブランコ」と呼び、ひたすら恐れている。彼らもまた、今日を生き延びることができたというだけの社会的な弱者に過ぎない。

ところが、ひとつの事件を契機にオリバーは、階級と階層を超えたもうひとつの現実を見せる。仲間がスリをするのを見ていたオリバーが犯人と疑われ、えん罪が晴らされて裕福な市民ブラウンロー氏に引き取られる。フェイギン老人と悪党仲間のビル・サイクスたちは、オリバーに手引きさせてブラウンロー宅に押し入ろうと計画する。結局、土壇場でオリバーが泣き叫んでこの非道を止めようとして、ビル・サイクスに撃たれることで計画は失敗し、フェイギン老人一党の破滅を招く。ここでもオリバーは、犠牲となるのを恐れず身を挺して悪事を止めたというより、大騒ぎして撃たれてしまった愚図な子どもにしか見えない。つまり、オリバーがなけなしの勇を奮い起こしたことはさして重要なことではないのだ。そして、オリバーは清く正しい子として、改めてブラウンロー家に迎え入れられ、幸福に暮らすことになる。ここでジ・エンド、にはならない。唐突に場面は切り替わって、オリバーはブラウンロー氏に付き添われて、フェイギン老人の獄窓を訪ねる。絞首刑に怯えてフェイギン老人は錯乱している。オリバーは、開口一番、フェイギン老人が自分を拾ってくれて、面倒を見てくれたことに心からの感謝を述べる。ブラウンロー氏への感謝とまったく等価に。そして、ともに神に跪いて祈ろうと促す。さらに錯乱するフェイギン老人。

ここでオリバーとは何だったのか、ようやく明らかにされる。出逢ったすべての大人たちや子どもたち、フェイギン老人やビル・サイクスを、オリバーがどのように見ていたのか。見られている人々がオリバーに何を見い出して、鏡を見るように少し不思議そうな表情になるのか。まったく特別には見えないオリバーが特別であることを、そして特別ではないことを、観客は最後に知る。オリバーは祈りだった。だからこそ、何の取り柄もなさそうなオリバーに、狡猾なフェイギン老人は溜め込んだ金品を見せてしまった。だからこそ、ナンシーは自分の天使の心を止められなかった。そのナンシーを殺したビル・サイクスは死ぬまでオリバーを離さなかった。弱々しい祈りだとしても、人はそれを手放せない。ポランスキのまぎれもない傑作。

成分解析

2006-07-06 00:35:13 | ノンジャンル
知人の49%は汗と涙(化合物)で出来ています
知人の37%は鍛錬で出来ています
知人の9%は濃硫酸で出来ています
知人の3%は成功の鍵で出来ています
知人の2%は心の壁で出来ています

他人の成分は笑えるのに、自分のだとマジに考え込むバカ

成分解析
http://seibun.nosv.org/

橋龍死す

2006-07-05 00:36:36 | ノンジャンル
もうとっくに過去の人だったから、新聞もおざなり。ただ、この人がエリツィンとぶち上げた北海道とロシアをつなぐ架橋プロジェクトは実現したらいいなと期待していた。東アジアの公共圏をつくる公共事業しかないと思うがな、日本の未来は。全面講和はいまだ道遠しだが、プーチンは日本にもっと手を組もうやとシグナル送ってきているらしい。