Zooey's Diary

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中国ではやはり歪められた「時が滲む朝」

2012年02月16日 | 

先日書いた日記「ママ友はいません」の楊逸氏の本が気になって読んでみました。
日本語を母語としない作家の、初の芥川賞初受賞作。

1988年、農村に生まれた主人公の浩遠が、夢と希望にあふれて大学に進学するところから
物語は始まる。
親友の志強とともに勉学に励み、学生たちと議論を重ねるうちに
”愛国”や”民主化”ということを考えるようになり、自然に民主化運動に参加する。
そこに天安門事件が起こり、呆然とした二人は酒の勢いもあって乱闘事件を起こし、
3か月拘留された後に退学処分となる。
何もかも失くした彼は農民工のどん底生活を体験した後、結婚して日本に渡り、
それでも祖国を思って地道に民主化運動を続けている…

残念ながら、それほど感動はしませんでした。
天安門事件から北京五輪前夜までの若者の半生を描くには
この枚数では短すぎて、限界があるようにも思います。
描写が淡々としすぎていて、薄っぺらな印象を禁じえません。
ただ、中国の若者が、どのようにこの20年を生き抜いてきたかを
中国人作家の口から語られたのを聞けたのは、非常に意味があることだと思います。
彼らは、ごく普通の若者だった。
官僚の汚職と腐敗に反対し、「国家興亡、匹夫有責」のスローガンのもと、
愛国者であろうとしただけだった…

そして著者の「あとがき」がとてもよかった。
”頭が自分の首についているにもかかわらず、あの人が悪い人だと教えられれば、
いくら優しくて良い人だと感じていても、「悪人」だ「悪人」だと思い込まなければいけなかったし、
口も、歌いたくない讃美歌を歌わされ、汚い罵倒語を声高々と敵に浴びせるように批判しないと
子どもといえども思想問題になってしまう。(中略)
1989年ー私は二十五歳だった。辛くて忘れたい時代である一方、懐かしくて
忘れるに忍びない時代でもあった。
その時代とその時代を生きた私、その時代に青春を捧げた大勢の中国の無名の小人物の
記念として、「時が滲む朝」は、2008年の春に書き終えた。”(あとがきから)

この小説には、これだけの切なる思いが込められていたのですね。
しかし、中国ではやはり歪めて紹介されたようです。
”残念なことに、日本では「天安門事件で民主化運動に身を投じた青年が大学を追われて
日本に渡る」となっているこの小説の紹介文を、中国のメディアではそうは伝えていない。
「中国の農村から日本に渡った中国人男性が体験した理想と現実の落差を描いた」
などと紹介されている。

”「柏木理佳 とてつもない中国」の最新記事”より
http://diamond.jp/articles/-/1548


違うんですけど…
中身を読めば分かることですが。
しかしこれ、中国では出版されたのかな…?


「時が滲む朝」 http://tinyurl.com/6tepuf5
コメント (2)
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