インパクトには多少欠けるが、久しぶりに爽やかな映画を観ました。
最愛の妻を亡くしたジャーナリストが、家族の再生のために動物園を買い取るという
荒唐無稽な話なのですが、これが実話だというから驚きます。
14歳の息子ディランは、母親の死後、問題行動ばかり起こして退学になる。
彼のスケッチブックには、首を切られた人間など凄惨な絵ばかり。
父親のベンジャミン(マット・ディモン)は、そんな息子の為にも、
また悲しみを忘れられない自分の為にも、仕事を辞めて新しい生活を始めようとする。
ようやく見つけた気に入った家には、なんと閉鎖中の動物園がついていた。
まだ幼い妹は素直に父親に甘え、また父親も彼女を気にかけているのですが
いつもふて腐れている息子は、何を聞かれても“Whatever”(別に)と答えるばかりで
取りつくシマもない。
殻にこもって暗い絵を描いているだけで、何も手伝おうとしない。
そんな息子を父親は、腫れ物に触るように扱い、叱ることもできない。
動物園の再建には莫大なお金がかかり、資金はたちまち底をつく。
クマが脱走したり、トラが死にかけたりと問題は次々に起こる。
疲れ果てた父親が遂に切れて、息子に怒鳴りつけるシーンがあります。
お前も少しは手伝ってくれよ!と。
"Help me with your sister! Help me, dammit!"
それに対して息子も初めて本音を漏らす。
ボクだって助けて欲しいんだ!と。
"Help me, dammit!"
不器用な二人が、初めて本音をぶつけ合えた瞬間だったのでした。
飼育係のケリー(スカーレット・ヨハンソン)に
ド素人のあなたが何故、動物園なんか買ったの?"Why did you buy this place?"
と訊かれて
ベンジャミンは一言、"Why not?"(いけない?)と答えます。
この"Why not?"はまた、ラストシーンに向けての素敵な伏線にもなるのです。
ネタばれになるほどのことではないと思うので、記しておきます。
妻に初めて逢った時、一目惚れしたベンジャミンが
"Why would an amazing woman like you, even talk to someone like me?"
と話しかけると
彼女はにっこり笑って
" Why not?"と。
悪い人が一人も出てこないという、少々出来すぎの気もする話ですが
(しかし何度も言うようにこれは実話だ)
家族の再生を描く、地味ながら幸福感に溢れる映画です。
残念ながら、邦題は酷すぎ。
最近だけでも「幸せの教室」「幸せのパン」「幸せパズル」「幸せへのキセキ」。
”We Bought a Zoo!”(動物園を買っちゃった!)のままでもよいと
思うのですが…
2011年 アメリカ映画 監督キャメロン・クロウ
http://www.foxmovies.jp/sk/