Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

ゴッホの死の謎「リボルバー」

2022年03月22日 | 


アート史上最大の謎とも言われる「ゴッホの死」を題材にした、アートミステリー小説。
ゴッホやゴーギャンの絵に幼い頃から魅せられた高遠冴(たかとおさえ)は、彼らの世界を深く知るためにパリへ行き、美術史の博士号を習得し、パリの小さなオークション会社で働いていた。
ある日、冴のもとに一人の女性が訪れ、ゴッホの自殺に使われたという古い拳銃(リボルバー)を差し出した。
冴えはその錆びついたリボルバーが本物かどうか、調査を始める。
リボルバーが誰のものであったのか、誰によって使われたかを調べるにあたり、ゴッホの死の謎が一段と深まる。
ゴッホは自殺ではなく、ゴーギャンによって殺されたのか…?

ゴッホについては同じ著者の「たゆたえども沈まず」を面白く読んだので、こちらも楽しみにしていました。
しかし前半はストーリーがあまりに絵空事のようであり、パリで飛びまわる冴の活躍ぶりが少々鼻につくところがなきにしもあらずだったのですが、後半、ことに終盤に近いゴーギャンの独白辺りから、私には俄然面白く感じられました。
ゴッホがアルルでゴーギャンと暮らし始めたものの、2ヶ月で喧嘩別れし、耳を切り取って精神病院に送られ、その後ついにピストル自殺してしまうのは有名な話ですが、この本によれば、ゴーギャンはゴッホに嫉妬し、壮絶な劣等感を抱いていたというのです。

この本の表紙の絵は、ゴーギャンが最も好きだったという「ひまわり」ですが、これについてゴーギャンはこう言っています。
”もっとも目を引いたのはすべてが黄色すぎるほど黄色のタブローだった。濃い黄色、強い黄色、柔らかな黄色、淡い黄色、背景もテーブルも壺も、てんで勝手にほうぼうを向く花々も、複雑な色調の黄色で描き分けられている。にもかからわず、ちっとも騒がしくなく、むしろ静謐で、完璧な調和をたたえていた。”

そして
”私はもはや我慢の限界に達していた。フィンセントがうっとうしくてたまらなかった。
私にはアルルで描くべきものが何もなかった。それに対してフィンセントは、私と創作を共にした二ヶ月ほどのあいだに格段に進歩した。彼はどこまでも成長するひまわりで、私は彼に無条件で光を与える太陽に過ぎなかった”
そしてゴーギャンはゴッホに別れを告げるのです。
置き去られたゴッホは絶望して…

嫉妬や劣等感は誰もが持つ感情です。
膨大な資料を基に書かれた小説とはいえ、何処までが史実なのかは分かりませんが、天才画家であってもこんなにもそうした感情に苦しんでいたのかと思うと、少々身近に感じられました。

「リボルバー」 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする