1955年、ミシシッピ州で14歳の黒人少年が白人女性に口笛を吹いたことで殺された「エメット・ティル殺害事件」を映画化。
50年代、夫を戦争で亡くしたメイミー・ティルは、シカゴの空軍で働きながら一人息子エメットと平穏に暮らしていた。ある日、エメットはメイミーの出身地であるミシシッピ州の大叔父宅を訪れ、食料品店の白人女性キャロリンに軽い気持ちで口笛を吹く。そのことで白人の怒りを買い、凄惨なリンチの上、殺されてしまう。
最愛の息子の変わり果てた姿と対面したエイミーは、この事件を世間に知らしめるべく、大胆な行動を取る。
こんなマイナーな映画を観る人は少ないでしょうから書きますが、エイミーはエメットの顔が見えるように棺の蓋を開いて葬儀を行ったのです。
エメットの顔というのが、画面にハッキリとは現れませんでしたが、言葉を失くすものでした。
片方の眼球を抉り取られ、ボコボコに殴られ、頭を撃ち抜かれ、性器を切り取られ、河に捨てられたので数倍に膨らんでいた(観賞後Wikiで調べたら、映画はまだソフトに描かれていた)のです。
これは、「母が息子を送り出した時と出迎えた時」という2012年のリサ・ウィッティントンによる絵です。
圧倒的な白人優位社会のミシシッピでは、裁判でも犯人もキャロリンもろくに罪に問われないのですが、その後、黒人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなったそうです。
14歳といえば、まだ中学生の子ども。
その子どもが口笛を吹いたというだけで、こんな目に遭ったとは。
それだけのことをしても罪に問われない地域があったとは。
そしてそれが、まだほんの67年前のことだったとは。
「BLM」(Black Lives Matter)運動の、今年の集大成のような映画でした。
「Till」公式HP
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