アメリカとの国境近くにあるメキシコ・マタモロスの小学校。子どもたちは麻薬や殺人といった犯罪と隣りあわせの環境で育ち、教育設備は不足し、教員は意欲のない者ばかりで、学力は国内最底辺だった。6年生の半数以上が卒業を危ぶまれるなか、出産のため辞職した6年生の担任の代役として、マタモロス出身の教師フアレスが赴任してくる。子どもたちはフアレスのユニークで型破りな授業を通して探究する喜びを知り、それぞれの興味や才能を開花させていく。しかし、思わぬ悲劇が彼らを襲い…
(映画comより)
マタモロスの小学校で2011年に起きた実話を描いた本作は、本国で300万人を動員し、2023年No.1の大ヒットを記録したといいます。
メキシコがいかに危ない国であるかということは今までに観て来た映画や本などから、そして実際に少し旅行したことから多少は分かっていたつもりですが、しかしここはあまりにも酷い。
麻薬、殺人、犯罪、児童虐待が蔓延していて、何しろ本当に死体が転がっている。
悲惨な環境の中で教師も事なかれ主義、当然親は教育に無関心、教育委員会は業界と癒着していて、学校に届くはずのパソコンが届かなかったりする。
そんなところにやって来た熱血教師ファレスは、子供達の可能性を信じ、それを様々な手段で引き出そうとするのです。
「しかし、君たちは世界中のどんな子どもたちにも引けを取らないものを持っている。それは可能性だ」と。
“But you do have one thing that makes you the equal of any kid in the world, Potential.”
ゴミ山の麓の掘っ立て小屋に父親と住み、ゴミを拾って生活をしているが数学の天才である少女パロマ。
ギャングの下っ端である兄に続いて自分もそうなるつもりで、運び屋もどきのことをしている少年ニコ。
無計画に子供を産み、外で働いている母親の代わりに弟妹の面倒、家事すべてをこなしている少女ルぺ。
この中で、教師ファレスとパロマが実在の人物なのだそうです。
実際にパロマは数学で全国一位の成績を取り、雑誌「WIRED」に掲載されたフアレスとパロマを取り上げる記事がきっかけとなって、映画化の企画が立ち上がったのだと。
そしてパロマ本人が、この映画の大学図書館の司書役で出演しているのですって。
(パロマ本人)
ラスト近くで起きた悲劇にはもう、言葉もない。
これが現実ということか。
そしてこの大きな悲劇のみならず、この映画には他にも小さな悲劇が散りばめられている。
冒頭、やせ衰えたお婆さんをリヤカーのようなものに乗せていた緑のシャツの少年。
ラストではそのリヤカーにゴミを乗せて、小学校の門の外から覗いているのです。
どう見ても就学年齢であろうに、学校にさえ行けない子がいるということも現実なのかと胸が痛くなります。
原題は「Radical」です。☆4
「型破りな教室」 公式HP