直島を旅した。
仕事仲間から親友に発展したMさんと一緒に。
Mさんが仕事でくたびれ果てていて、夏休みに気分転換したいという。
最初は自然にかこまれた、観光名所というようなものは取り立ててないところに宿をとった。
私が以前泊まって気に行った所。
ところがその宿がリフォームのために泊まれなくなって、さてどうしよう。
ということで、以前から気になっていて直島が候補に。
相談しながらも、計画・予約は私が担当。
半年以上前にネットで宿をとろうとしたら、「お取り扱いできません」の表示が。
半年前でも宿がとれないのか!と絶望していたら、Mさんが「宿に直接電話してみたら」という。
結局ネットでは半年以内でないと取れないが、直接なら予約できた。
そんなことも経験しないと分からない。
新幹線の座席指定は、帰りは私が取るけれど、行きはそれぞれでとることに。
1ヵ月前に指定席券を買って私の座席を知らせると、Mさんはその隣を確保することができた。幸先が良い。
一日目。新幹線のぞみで合流。
宇野で、昼食。瀬戸内レストランBLUNOにて。
それぞれ9時ごろにサンドイッチを食べていたものだから食欲はなく、パスタを半分ずつ。
接客も食事も雰囲気もとてもよいレストランだった。
昼食を優先してしまって、乗るはずの旅客船が満席になってしまった。
先に乗船券を買っておくべきだった!まさか乗れないとは思っていなかったから。
並んでいた8人ほどが、1時間後のフェリーに乗ることになった。
宮浦港着。さっそく草野彌生の赤かぼちゃなどのオブジェが目に入る。
シャトルバス乗り場が分からず、ホテルに電話。
無事、ホテルに着く。
ホテルは美術館を兼ねている。贅沢だが、そういうところに泊まってみたかった。
フロントに入ると、さっそくジャコメッティの彫刻が迎えてくれる。
少し休んでから、ホテル内の美術館ツアーに参加。参加は私たちともう一人。40分予定だったが延長して50分ほど。
ツアーは本当に良かった。現代アートは分かりにくい。説明してもらうことで、製作者の発想にふれ、面白いと思うことができた。
科学実験と似たところがあって、「こうしたらどうなるだろうか」という好奇心が創作の原動力になっているようだ。創作物がアートでなければ展示に耐えないだろうけれど、過程のほうがずっとエキサイティングなのかもしれない。
説明を聞かなかったら、結果である作品だけを観て、そういうことに発想が及ばなかったかも。
フロントに掲げられたしわくちゃに見える大きな1ドル紙幣の意味や、須田悦弘さんの作品などはそれが作品だとも、気づかなかったかもしれない。
作品は、入れ替えられるものは随時入れ替えられているようだ。
昨日展示したばかりというものもあった。
建物は額縁効果を意識して景色を切り取っている。日本家屋に昔から建物の額縁効果は意識されていたと思うけれど、景色が美しいからこそ生きる。
現在の都会では、美しい景色を切り取ることがなかなか難しいのではないだろうか。
タワマンの上階に住む人は、景色を求めているのだろうな。
などと、発想があちこちをさまい、私たちの会話は尽きない。
ホテルの和食レストランで夕食。
なんとまあ!見た目も味も夢のようなすばらしい夕食だった!
海に沈む夕日の絶景つき!
二日目は予報に反して、雨。
離れた棟の洋食レストランに、車で運んでもらって朝食。
バイキングだったけれど、これがまたどれを食べても美味!
あれこれありずぎて、とても全部を味見することができない。
大満足のあと、ちょうど降りやんでいたので、帰りは歩くことに。
一休みした後、いよいよ美術館巡り。
まずヴァレーギャラリー。
あちこちにハンドボールぐらいの球が。池にも階段状の場所にも狭く区切られた空間にも。
金属なのだろう。表面がステンレスのように光っている。
その球それぞれに見学している人やまわりのものが映りこんでいる。
自分が真ん中に見える。球との位置の関係で、その自分が少しずつポーズを変えている。
見入ってしまう。
ヴァレーギャラリーに着いたころから土砂降りになってきた。
結局李禹煥(リ・ウファン)美術館に入るまでに、下半身びしょぬれ。
李 禹煥美術館は、実は期待していなかった。現代アートに関して私はほとんど情報を持っていなかったし、あまり関心もなかった。
事前に調べてもよく分からなかった。気持ちをそそるものがなかった。
けれど行ってみるものだ。
面白かった!前日のツアーの経験もあり、観る目が養われたのかも。
李 禹煥美術館を出るころには雨が上がっており、野外作品を見つつ、その中のひとつを背景に通りかかった方にふたりの写真をとってもらった。
私たち、旅行に行ってもふたりで写真をとるということがまず無い。
そもそも私は写真を撮る趣味もセンスもない。
良い記念になった。
次はいよいよ、今回の旅のメイン、地中美術館へ。
ここの展示はすべて空間と一体だった。
その空間にあわせて制作されたもの。あるいは空間そのものがアーティストの作品と一緒に制作されたというべきか。
唯一モネの睡蓮の絵は、空間と一緒に作られたわけではないが、モネの絵のための空間がつくられている。
すべて自然光で鑑賞する。
天気によって、時刻によって、見え方が異なるのだろう。
これは写真では全く分からない。
行かないと体験できない。
予想を超える体験だった!
ここで昼食。昼食後、いくつかはもう一度見た。
迷路のような建物で、上に行ったり下に行ったり、スタッフがいないと出口も分かりにくい。
地中美術館を出るとまたどしゃ降り。
次は本村地区の家プロジェクトへ。
気づいたら予約した家プロジェクト南寺の時間に間に合いそうになく、Mさんが電話をして次の回を取り直してくれる。
雨があいかわらず降り続く中、本村ラウンジ&アーカイブに着き、南寺の整理券を入手。
せっかく来たので、雨が降っていてもあちこち見て歩きたいのが私だけれど、Mさんは疲れているので無理は禁物。
さて、その南寺。真っ暗闇の部屋に入る。
何も見えなかったというMさん。
でも私には見えてしまった。
ずいぶん時間が立ってから、まず人が右から左へ歩くのが見えた。
人といっても切れ切れの線だけ。
そのうち、犬か何かの動物も。
画面の下が盛り上がってくる。
なんだろう!と思っていると手前に、大勢の観客の後ろ姿が見える。
時間が来ると、ガイドの方が画面のところまで移動してくださいと言い、その部屋の仕組みが明らかになる。
幽霊や憑き物や、いろいろ見える人がいるし、私のように絶えず虫の声が聞こえる人もいる。
けれど、その「見える」「聞こえる」という体験は否定できないと改めて思う。
さて、雨は小止みだし、バスまでにもう一か所は行けそう。でも、無理しないことにする。
戻って、別棟のテラスレストランで夕食。洋食。
これもすばらしかった!満足!
前面の窓ガラスに向いながら、あいにく雨で景色はほぼ見られなかった。
お天気なら、夜の海と月を見ながらだったのだろうけれど。
けれどその棟にもいろいろなアートが展示されていて、それらを観ることができた。
それにしても、建物のデザインが凝っているというか、迷子になりそう。
雨が上がっていたが、車で送ってもらう。
三日目。
雨も上がり、爽やかな朝。
浜辺の作品を見に、少し散歩したいと思う。
「ちょっとだけ行ってくる。すぐ帰るから」と言うと、一緒に行くと言う。
本当に気持ちの良い散歩だった。
戻ってすぐ食事、帰り支度。あっという間に、チェックアウトの時間。
二泊だったけれど、もっとゆっくりしたかったな。
サービス満点のホテルだった。
ただ、最後の朝食で、「一昨日召し上がっていただいたので、茶わん蒸しの代わりにだし巻き卵をご用意しました」と言われたけれど、私は茶わん蒸しのほうが良かった。どちらがよいか、聞いてくれても良かったのでは?
意外性を演出したかったのかな?
帰りに家プロジェクトに寄るかどうかという話になったけれど、慌ただしいのでパス。
心残りではあるけれど。
宮浦港でお土産と絵はがきを買う。
今回の旅行の情報をくれた香川県在住の同級生にお礼のはがきを書いて投函。
宇野ではすっかりお気に入りになった瀬戸内レストランBLUNOで昼食。
そのあとは何事もなく帰路についた。
誰かと一緒に旅行するということは、必ずしも自分の思う通りには動けないということ。
思う通りにしたければ、一人旅をすればよい。
でも私はひとり旅より、誰かと行きたいと思う。
思う通りにいかないということも含めて楽しみたい。
もちろん、気心知れた友人だからだけれど。
仕事仲間から親友に発展したMさんと一緒に。
Mさんが仕事でくたびれ果てていて、夏休みに気分転換したいという。
最初は自然にかこまれた、観光名所というようなものは取り立ててないところに宿をとった。
私が以前泊まって気に行った所。
ところがその宿がリフォームのために泊まれなくなって、さてどうしよう。
ということで、以前から気になっていて直島が候補に。
相談しながらも、計画・予約は私が担当。
半年以上前にネットで宿をとろうとしたら、「お取り扱いできません」の表示が。
半年前でも宿がとれないのか!と絶望していたら、Mさんが「宿に直接電話してみたら」という。
結局ネットでは半年以内でないと取れないが、直接なら予約できた。
そんなことも経験しないと分からない。
新幹線の座席指定は、帰りは私が取るけれど、行きはそれぞれでとることに。
1ヵ月前に指定席券を買って私の座席を知らせると、Mさんはその隣を確保することができた。幸先が良い。
一日目。新幹線のぞみで合流。
宇野で、昼食。瀬戸内レストランBLUNOにて。
それぞれ9時ごろにサンドイッチを食べていたものだから食欲はなく、パスタを半分ずつ。
接客も食事も雰囲気もとてもよいレストランだった。
昼食を優先してしまって、乗るはずの旅客船が満席になってしまった。
先に乗船券を買っておくべきだった!まさか乗れないとは思っていなかったから。
並んでいた8人ほどが、1時間後のフェリーに乗ることになった。
宮浦港着。さっそく草野彌生の赤かぼちゃなどのオブジェが目に入る。
シャトルバス乗り場が分からず、ホテルに電話。
無事、ホテルに着く。
ホテルは美術館を兼ねている。贅沢だが、そういうところに泊まってみたかった。
フロントに入ると、さっそくジャコメッティの彫刻が迎えてくれる。
少し休んでから、ホテル内の美術館ツアーに参加。参加は私たちともう一人。40分予定だったが延長して50分ほど。
ツアーは本当に良かった。現代アートは分かりにくい。説明してもらうことで、製作者の発想にふれ、面白いと思うことができた。
科学実験と似たところがあって、「こうしたらどうなるだろうか」という好奇心が創作の原動力になっているようだ。創作物がアートでなければ展示に耐えないだろうけれど、過程のほうがずっとエキサイティングなのかもしれない。
説明を聞かなかったら、結果である作品だけを観て、そういうことに発想が及ばなかったかも。
フロントに掲げられたしわくちゃに見える大きな1ドル紙幣の意味や、須田悦弘さんの作品などはそれが作品だとも、気づかなかったかもしれない。
作品は、入れ替えられるものは随時入れ替えられているようだ。
昨日展示したばかりというものもあった。
建物は額縁効果を意識して景色を切り取っている。日本家屋に昔から建物の額縁効果は意識されていたと思うけれど、景色が美しいからこそ生きる。
現在の都会では、美しい景色を切り取ることがなかなか難しいのではないだろうか。
タワマンの上階に住む人は、景色を求めているのだろうな。
などと、発想があちこちをさまい、私たちの会話は尽きない。
ホテルの和食レストランで夕食。
なんとまあ!見た目も味も夢のようなすばらしい夕食だった!
海に沈む夕日の絶景つき!
二日目は予報に反して、雨。
離れた棟の洋食レストランに、車で運んでもらって朝食。
バイキングだったけれど、これがまたどれを食べても美味!
あれこれありずぎて、とても全部を味見することができない。
大満足のあと、ちょうど降りやんでいたので、帰りは歩くことに。
一休みした後、いよいよ美術館巡り。
まずヴァレーギャラリー。
あちこちにハンドボールぐらいの球が。池にも階段状の場所にも狭く区切られた空間にも。
金属なのだろう。表面がステンレスのように光っている。
その球それぞれに見学している人やまわりのものが映りこんでいる。
自分が真ん中に見える。球との位置の関係で、その自分が少しずつポーズを変えている。
見入ってしまう。
ヴァレーギャラリーに着いたころから土砂降りになってきた。
結局李禹煥(リ・ウファン)美術館に入るまでに、下半身びしょぬれ。
李 禹煥美術館は、実は期待していなかった。現代アートに関して私はほとんど情報を持っていなかったし、あまり関心もなかった。
事前に調べてもよく分からなかった。気持ちをそそるものがなかった。
けれど行ってみるものだ。
面白かった!前日のツアーの経験もあり、観る目が養われたのかも。
李 禹煥美術館を出るころには雨が上がっており、野外作品を見つつ、その中のひとつを背景に通りかかった方にふたりの写真をとってもらった。
私たち、旅行に行ってもふたりで写真をとるということがまず無い。
そもそも私は写真を撮る趣味もセンスもない。
良い記念になった。
次はいよいよ、今回の旅のメイン、地中美術館へ。
ここの展示はすべて空間と一体だった。
その空間にあわせて制作されたもの。あるいは空間そのものがアーティストの作品と一緒に制作されたというべきか。
唯一モネの睡蓮の絵は、空間と一緒に作られたわけではないが、モネの絵のための空間がつくられている。
すべて自然光で鑑賞する。
天気によって、時刻によって、見え方が異なるのだろう。
これは写真では全く分からない。
行かないと体験できない。
予想を超える体験だった!
ここで昼食。昼食後、いくつかはもう一度見た。
迷路のような建物で、上に行ったり下に行ったり、スタッフがいないと出口も分かりにくい。
地中美術館を出るとまたどしゃ降り。
次は本村地区の家プロジェクトへ。
気づいたら予約した家プロジェクト南寺の時間に間に合いそうになく、Mさんが電話をして次の回を取り直してくれる。
雨があいかわらず降り続く中、本村ラウンジ&アーカイブに着き、南寺の整理券を入手。
せっかく来たので、雨が降っていてもあちこち見て歩きたいのが私だけれど、Mさんは疲れているので無理は禁物。
さて、その南寺。真っ暗闇の部屋に入る。
何も見えなかったというMさん。
でも私には見えてしまった。
ずいぶん時間が立ってから、まず人が右から左へ歩くのが見えた。
人といっても切れ切れの線だけ。
そのうち、犬か何かの動物も。
画面の下が盛り上がってくる。
なんだろう!と思っていると手前に、大勢の観客の後ろ姿が見える。
時間が来ると、ガイドの方が画面のところまで移動してくださいと言い、その部屋の仕組みが明らかになる。
幽霊や憑き物や、いろいろ見える人がいるし、私のように絶えず虫の声が聞こえる人もいる。
けれど、その「見える」「聞こえる」という体験は否定できないと改めて思う。
さて、雨は小止みだし、バスまでにもう一か所は行けそう。でも、無理しないことにする。
戻って、別棟のテラスレストランで夕食。洋食。
これもすばらしかった!満足!
前面の窓ガラスに向いながら、あいにく雨で景色はほぼ見られなかった。
お天気なら、夜の海と月を見ながらだったのだろうけれど。
けれどその棟にもいろいろなアートが展示されていて、それらを観ることができた。
それにしても、建物のデザインが凝っているというか、迷子になりそう。
雨が上がっていたが、車で送ってもらう。
三日目。
雨も上がり、爽やかな朝。
浜辺の作品を見に、少し散歩したいと思う。
「ちょっとだけ行ってくる。すぐ帰るから」と言うと、一緒に行くと言う。
本当に気持ちの良い散歩だった。
戻ってすぐ食事、帰り支度。あっという間に、チェックアウトの時間。
二泊だったけれど、もっとゆっくりしたかったな。
サービス満点のホテルだった。
ただ、最後の朝食で、「一昨日召し上がっていただいたので、茶わん蒸しの代わりにだし巻き卵をご用意しました」と言われたけれど、私は茶わん蒸しのほうが良かった。どちらがよいか、聞いてくれても良かったのでは?
意外性を演出したかったのかな?
帰りに家プロジェクトに寄るかどうかという話になったけれど、慌ただしいのでパス。
心残りではあるけれど。
宮浦港でお土産と絵はがきを買う。
今回の旅行の情報をくれた香川県在住の同級生にお礼のはがきを書いて投函。
宇野ではすっかりお気に入りになった瀬戸内レストランBLUNOで昼食。
そのあとは何事もなく帰路についた。
誰かと一緒に旅行するということは、必ずしも自分の思う通りには動けないということ。
思う通りにしたければ、一人旅をすればよい。
でも私はひとり旅より、誰かと行きたいと思う。
思う通りにいかないということも含めて楽しみたい。
もちろん、気心知れた友人だからだけれど。