ある病院の病棟開設に当たって、看護師さんのチームワークづくりのワークショップを依頼されました。
事前に看護師長Mさんと打ち合わせ。開設までの経過やどのようなチームをつくりたいのか、Mさんの思いを聞きました。その中で、むしろ仕事を離れて、普段のそれぞれを知り合うワークショップにしましょう・・・ということに。
当日。会場へ行ってみると、すでに集まった何人かで、和気あいあいと肩こりを治す体操をしていました。私も一緒に体操。身体が伸びる気がしてとても良い気分。
そのままのなごやかな雰囲気の中、Mさんに紹介されワークショップがスタート。13人のうち、4人は他の仕事があり不参加でした。
簡単な自己紹介のあと、「Mさんの師長としての願いは『質の高い医療を提供するために、質の高いチームワークをつくりたい』ということだと伺いました。話し合った中で、この時間は仕事を離れて、普段のお互いについて知り合うことにしました。またその中で、ひょっとしたら自分自身についても気がつかなかった面を発見するかもしれません。ちょっと子ども気分に戻って、ゲームを楽しみながらチームワークをつくっていきましょう」。
最初は自己紹介。名前と現在住んでいるところと好きな食べ物。
フルーツバスケット。「私は○○です」と自分に当てはまることを何か言って、同じ人は動きます。休んでいる人の分も椅子を用意し、荷物を置いておきます。最初は「できるだけ多くの人が動きそうなこと」、次は「一人か二人しか動かないようなこと」、そして「仕事を離れた生活に関すること」とテーマが変わっていきます。笑い声や足音がうるさかったらしく、途中で覗きに来る人があり、スローモーションで動くことに。
今度は好きな食べ物で「わたし・あなた」。それぞれが何か一つ食べものを決めます。私は味噌汁。「味噌汁、もち」と自分の食べものに続けて他の人を指しながらその人の食べものを言います。言われたら、また「もち・焼肉」と次へつなげます。相手の食べものが分からない時は、「もち・なに?」と相手を指しながら、聞きます。繰り返しているうちに、相手の食べものを覚えてしまいます。これは、名前を覚えるときにも使えます。みんなが覚えた頃に、こんどは言葉ではなく、視線を繋いでいきます。視線を送るときの表情がそれぞれ豊かで笑ってしまいます。
ひとしきりやったあと、出身地で北から南へ順に並びかえ。看護師はまだまだ女性の職場で、参加者のうち男性はMさんともうひとりだけ。その二人だけの男性と私が県外生まれ。他は県内でした。
ここで三人一組に分かれ、Aさん、Bさん、Cさんを決めました。それぞれが順に1分ずつ、「私がほっとするとき」を語ります。趣味でもいいし、ホッとするような状態のときでもいい。1分ずつとは言ったものの、話がはずむので、実際はすこしずつ時間を延ばしていきました。グループ代表が三人のホッとするときをみんなに披露します。
誕生日順に並び替え。
二人一組で背中でおしゃべり。背中を合わせて立つ、座る。パートナーを変えて、三回やりました。「やってみてどうでしたか?」「背中が温かい」「相手にゆだねたほうがうまくいく」「背中で話すことなんてないので親近感が湧く」などなど。
今度はA・B2グループに分かれて、相手にイヤと言わせることをいろいろ出し合います。つまり、自分が嫌なことでもあります。もとのペアに戻って、相手にイヤを言わせます。イヤをいう練習です。「イヤだけで終るのはどうかなあ」と思い、イヤをたっぷり言った後、今度はOKと言うこともしました。
円になって、誰かが「○○しよう」ということに、「いいね!いいね!」と言ってそれをする真似をしました。一通り回ったところで、「では今度は自分の本音にしたがって、やりたくないことは『うんうんうんうん』と言いながら後ろへ退いていきましょう」。それぞれの興味のありどころが分かります。
名前のアイウエオ順に並び替え。
三人一組で「チームワークにとって大切だと思うこと」の話し合い。全員で輪になってシェアリング。
「では、さっそくチームワークを発揮してみましょう」。三人で見えない縄跳び。
「じゃあ、今度は全員のチームワーク」。新しいA・B2チームに分かれて、見えない綱引き。
第1回目の勝負。どちらも勝つ気満々で、綱がどんどん延びていく結果にみんなで大笑い。
「綱は延びないよ。相手のチームを良く見て、もう一度」。お互いが前に出たり、後ろに下がったりするものの、どうも今度はチームがばらばら。
3回目。今度は、「前へ。後ろへ」と号令をかける人が出てきて、それなりに格好はできてきたものの、「なんだかうそっぽ~い。もう一度やってみましょう。今度は、各グループでこの人に注目して動こうという人を決めてみて」。ということで、最後には押したり退いたりの綱引きをやったのでした。勝負はどちらともいえないなあ。やはり負けたくはないようで。
最後に円になって、この2時間を振り返っての感想と、未来への不安や希望をひとりずつ語り、ちょうど2時間で終了しました。「うまくいかないことがあっても、何度も経験を重ねていけば、うまくいくようになるんだと思いました」とMさん。1月28日午前、参加者9名のワークショップでした。
看護師という職業柄か、みなさんとっても穏やかなやさしい雰囲気。この職場は初めてというOさんが、「未来は?」という私の問いに「明るい!」ときっぱり言われたのが印象的でした。
もし何かあって入院しなければならないとしたら、この病院に入院したい。
実は、時々人が覗きに来るので、私たちの笑い声がよほど大きいのかと思っていたら、マイクのスイッチが知らない間にONになっていたのでした。予想もできないことが、いつも何か起こります。