ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

学校という劇場から―本の紹介

2011-05-31 23:12:51 | お知らせ

教師と生徒をつなぐあらゆるものを教材というなら、この本は教材としての劇・演劇的手法(ドラマ)について述べています。

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本の成立までの経緯(どういう過程を経て最終稿ができあがったか)も面白いけれど、目次にあるように、それぞれの問題意識にまず興味を惹かれる。それぞれのドラマへの思い入れが、それぞれの角度から語られている。

これは、演劇サイドではなくまぎれもなく学校というサイドからドラマを見ている人たちの書いたもので、だから私には共感することも、あるいは逆に「う~ん、私ならこう思う」ということも含めて、とても身近に感じます。

著者の高山先生や小林先生は顔見知りなので、意外な一面を知ることが出来てそれだけでも面白かったし、一番私に受けたのは、平田先生。

「だいたい演技を習いに行くと、自分を開放しろだの、意識を分散しろだの、力を抜けだの、丹田を探せだの、無理難題をふっかけられて、私にはどうしてもついていけないのである。」そうだそうだ。

なのに、ドラマに魅せられて・・・。地域の演劇人とのコラボを追求するのです。

学校をオープンにして、地域の専門家を招きいれることはとても大切。そういう面でも、ドラマは教育や学校を見直す大切なアイテムだと思うのです。

個人的レベルでの絶賛! なのですが、それにとどまらない。学校教育とドラマの関わりの多様性と可能性を感じさせる良書です。

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「学校という劇場から」佐藤信 論創社 2011年

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ドラマ・ファシリテーターとニュートラル

2011-05-19 22:34:10 | 研究会報告

5月14日、応用ドラマ教育研究会がありました。

渡辺貴裕先生が前回に引き続き、イギリスのドラマティーチャー、ジョー先生の実践を報告してくださいました。

渡辺先生の報告の特徴は、要所要所DVDを見せながら、ポイントを押さえて、実に分かりやすく明快なのです。DVDも子どもたちの様子を良く捉えらえているところを見せてくれます。間は説明で補ってくれます。自分で見てきた気になります。

渡辺先生は渡部淳先生から「日本のドラマ教育の未来を背負って立つ人」と評価されていて、応用ドラマ教育研究会の八木延佳事務局長はいつもそう言って紹介するのですが、私もまったくそうだと思います。「演劇と教育」の連載や対談もをみても、とても賢い人で、しかも他人に伝わる言葉を持っています。思いやりもあるし・・・。

さて、本題。

プレイバック・シアターでアクターとしてのニュートラルの大切さを学びました。インプロでは、「用意しないこと」「オープンでいること」「今ここ」などと言われましたが、同じことを指しているように思います。

あれこれ余計なことを考えていると、オファーを受けたり投げたり、即興でやりとりすることがうまくいかない。

ニュートラルの状態にあるとき、無表情になってしまう。けっして、ニコニコ笑ってる状態ではないのです。

ジョー先生を見ていて、これって教師にもドラマ・ファシリテーターにも必要なのじゃないかしら、と思いました。ジョー先生はニコニコしていません。だからこそ、状況に応じて恐い役をしても子どもたちに自然に受け入れられるのでは?ドラマ・ファシリテーターであり、かつティーチャー・イン・ロールをよく使うアクターでもあるから、余計にそう思うのでしょうか。

自分自身をふりかえって、沖縄では、私は授業でしょっちゅう笑っていました。学生のやることなすこと、楽しく思えました。今はあまり笑っていません。でもこれは、ニュートラルを獲得したからではなく、日々の生活があまりにもゆとりがないせいなのですが。残念ながら。

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ホームレスの問題を授業に

2011-05-07 08:46:51 | 授業・教育

香山リカさんが新聞(朝日新聞5月2日付京都版)に「どうして職を失い、不幸な家庭で過ごしているのか。早い話、たまたま何かの弾みでそうなったとしか言いようのない人がほとんどなんですよ」と書いています。

サンデル氏は、ハーバード大学の授業で学生たちに、ハーバード大学に入れたのは、努力だけではないと述べています。

先日、ホームレスの問題を総合演習の授業で取り上げました。

今回の地震・津波のような天災もあれば、原子力発電所の放射能被害という人災も含めて、本人の努力だけはどうにもならず、たまたま何かの弾みとしか言いようのないことで家を失ってしまう。ホームレスになるという事も、「本人の努力」の問題だけにしてしまえないと思います。

5月病ということばがありますが、なんとなく欝っぽいこのごろの私。「がんばれ」「努力が足りない」と言われても、なぜかパワーが湧いてこない。そんなことって、誰にでもあるのでは・・・と思うのです。

授業の内容は、以下の通り。

まず、ワークシートを宿題にしました。

想像力をテーマにふたつのアクティビティをしました。これは、演じるために体をほぐすと同時に、想像力を働かして、何かもしくは誰かになってみる練習でもあります。また、楽しんでやることで、仲間づくりにも繫がっています。

①歩く。教師の声掛けにしたがって、想像力を逞しくして歩く。例えば「都会の雑踏」「沖縄の海辺」「左足が50kgになってしまう」などなど 

②「浦島太郎」に登場する誰かまたは何かになる。3人グループで、Aは浦島太郎に登場する誰かまたは何かになって動作をし台詞をいう。自分が何になっているかは言わない。それを見てBが自分の役割を決めて応対する。Cは見てる。これを順に繰り返す。例えば、A:助けてくれてありがとうございます。竜宮上へ案内します。B:やあ、あのときのカメか。

こういうのもありました。A:ようこそ竜宮上へいらっしゃいました。B:おじゃまします。A:さあ、料理を持って来ておくれ。ここで見ていたCも加わって料理を運び、三人の芝居になっていました。

Aが「いじめないでくれ」と亀になり、BがたたいたりするフリをしているとCも加わっていじめるというシーンが登場したグループも。

そのあと、宿題のワークシートでホームレスの授業に入ったのですが、ワークシートをほとんどの人が忘れ、新たに配りなおし。ホームレスと話したことがある人が3人。一人は京都駅。後のふたりは外国で。

DVD「ホームレス」と出会う子どもたち」(30分)を観て、グループで話し合い。

そのあと、「もしホームレスになるとしたら、どういう状況でそうなるだろう」ということに想像をめぐらしました。

自分がホームレスになってしまったとして、なぜそうなったのか、寒い公園で話すシーンを演じました。私もホームレスで、それぞれに「なぜここにいるのか」と聞きます。それにそれぞれが答えるという方法です。グループ毎にやりました。一つのグループの話を他のグループは観ています。

怪我をして職を失い・・・、事業に失敗して借金を抱えて・・・、家族とうまくいかず家出をしてしまって戻れず・・・など、理由は様々でした。

全体で輪になって、ホームレス襲撃事件の資料を配りました。私の思いを説明し、質疑応答。ワークシート記入。授業前後で意識が変わったか。
計90分の授業でした。

このDVDは、ホームレスの問題を理解するのに、とてもすばらしいです。「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」http://class-homeless.sakura.ne.jp/index.html のHPから申し込めます。

学生たちは、この授業を通して、「ホームレス」について非常に身近な問題となり、自分自身の認識が変わったと書いていました。中には、以前からこういう問題に関心がある学生もいました。

これをきっかけに、格差社会をテーマに学生がリサーチし、それを授業に組みあげるというのが今後の予定です。これまでは様々なテーマを取り上げてきましたが、今年はひとつのテーマを色々な角度から掘り下げようとしています。

こういうテーマは、きれい事ではすまないので、辛いなと思います。でも、学生たちがこのことを通して、何を考え、何を得ていくのか、そう思うとこれからの授業が楽しみです。リサーチは宿題になっているのですが、忘れてないかな?

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息子の旅立ち

2011-05-04 17:34:56 | 日記・エッセイ・コラム

春は別れと出会いの季節ですが

長男が就職のため、神戸から東京へ旅立ちました。

高等学校入学以来、弟(現在私と同居中)と一緒に過ごした2年間以外は一人暮らし。同居してくれる人が早く見つかるといいね。

3月に夫と長男と3人で食べた神戸のハンバーガー。おいしかった。Photo

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免許更新講習講座

2011-05-03 00:07:46 | お知らせ

8月8日に予定しています免許更新講座「コミュニケーションを育むドラマの手法」

おかげさまで定員オーバーの申し込みをいただいています。

昨年は定員に達しなかったのがウソのよう。政権交代で「もう免許更新講座は無くなるのでは」と思っていたのが「無くなりそうにない」となったのでしょうか。2日間の計画を1日に変更したのが良かったのでしょうか。

申し込んでいただいたのに参加できなる方が出てくるものと思われます。その方は申し訳ありませんが、前日、8月7日に、真弓さんのワークショップを予定しています。まだ、場所や時間は決まっていませんが、そちらに参加していただけると嬉しいです。

詳細はまたこのブログで。

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