ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

『わかりあえない他者と生きる』

2024-12-11 08:10:53 | 読書


著者マルクス・ガブリエルは現代のオピニオンリーダーとされる哲学者。
真実存主義の立場をとる。

新実存主義は良く知らないし、この本のすべてに納得したわけではないけれど、他者が居るからこそ自分がいるのであって、わかりあえない他者と共に生きることをあきらめてはいけない。そのために必要なのが対話と民主主義であるということが、ストンの腑に落ちる本だった。

そして大切なのが倫理であって、この倫理というのは宗教的倫理ではなく、他者を非人間化するのでなく、人を人として認めることが根底にある倫理である。
倫理で動く社会をつくるためには、幼少のころから倫理教育が重要で、その教育は上から教えるのではなく、話し合うことで学ぶ。

これが新刊の『倫理資本主義の時代』へ繋がっていくようなので、これも読まねばな。

この人が息子たちとあまり変わらない年代であることを思うと、息子たちも社会の中枢の担い手なのだろうと思う。日々大変そうだが、無理のない範囲で助けたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ただ「いる」だけのこと

2024-11-22 09:03:16 | 読書
『居るのはつらいよ』東畑開人(2019年発行)
気になってはいたものの、漸く読めた

精神障害者のデイケアの場について書かれている。
主人公はセラピストで、そこでケアに関わった。

小説ではないので、主人公という言い方はおかしい。
著者と書くべきだろう。
けれどまるで小説のように読める。
主人公の成長譚でもあるからだろう。

私はボランティアで障害者の方に関わっている。
障害に見合ったケアをされていないと感じることが多々ある。

この本を読んで、 現代の経済社会の仕組みの中で 障害の有無にかかわらず、ケアの場をつくること、ただ「いる」ことを保証する場をつくることの難しさを痛感した。

福祉に関わる人たちも衣食住の生活がある。家族もある。
給料が必要だ。

私が関わっているのは大抵生活保護を受けて暮らしてる方たちだ。
部屋の居心地の良さが家によって全然違う。
ヘルパーさんによって掃除が行き届いている家とそうでない家と。
基本、本人が望まなければしないという前提だが。

例えばベッドの脚周り。
一応掃除機がかけてあっても、そこにべっとりホコリや髪の毛がついていたりする。

そのヘルパーさんの家はどうなんだろう。
おそらく同じように、あるいはそれ以上に片づかない家に住んでいるのではないか。
自分にゆとりがないのに、他人に行き届いたケアができるだろうか。
そして現社会では、ゆとりをもたらすのはまずお金だ。

けれどこの本を読むと
スタッフの給料という単純な問題ではなく
その施設やシステムが利益や成果を生み出さないと維持できないという構造的な問題とからんでいる。
「ただいるだけ」が許されているようで許されない。

何もかもがお金で縛られるこのシステムこそが障害になっている。
斉藤幸平さんのいうコモンズという世界観はそれを打ち破ることなんだな?

障害のあるなしに関係なく「ただいるだけ」でいられる空間をつくっている人がいる。
インプロのすぅさんやかなこさんがそれだ。
あらためてそう認識した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シェア型書店

2024-06-03 13:01:47 | 読書
読んだ新聞記事がきっかけで、シェア型書店に興味を持った。

手始めに、近くの書店へ。
ビルの2階で、面積もさほど大きくなく、棚数はそう多くない。
ひとつひとつを丹念に見て行ったが、それぞれの棚主のこだわりがあり、
本を売る場と言うより、自己表現の場だと感じた。

片隅では8人ぐらいが机を囲み、お互いが読んだ本を紹介し合っていた。

絵画展示用の壁があり、そこを借りて写真や絵を展示することができる。

狭いけれど、インプロのパフォーマンスもできそうだ。
リーディング劇もされたようだ。

東京での要件のついでに、神保町の「パサージュ・ソリダ」と「ほんまる」を見に行った。
「パサージュ・ソリダ」のほうは、棚主の個性が見えにくい気がした。
フランスの通りをイメージして棚を白く塗ってあったが、
私には横文字で書かれた棚列は意味がつかめず馴染みにくかった

「ほんまる」のほうが、近所の店と雰囲気が似ている。
でもどちらも机を囲むというスペースもなく、本を売る場に徹している感じだった。

「ほんまる」では、たまたま棚主が本の入れ替えをしているところに出会って
少し話を聞くことができた。
読んで良かった本、他の人にも薦めたい本を並べているという。
自分が読んだ本は手放したくないので、
同じ本をリサイクルショップで手に入れ、それに少し上乗せして売値を決めている。
棚代を払う必要があるので、とうぜん儲からない。
でも、自分の進めた本を誰かが手に取り、買ってくれることが嬉しいそうだ。
おそらくSNSを通して、手に入れた人の反応が返ってきたりもするのだろう。

本を通しての新たな交流の在り方が生まれてきているようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人よ、花よ、

2024-03-31 08:11:58 | 読書
今村祥吾の新聞連載小説
本日、ついに終了
毎日欠かさず読み続けたのは、これが初めてかも知れない

南北朝時代はよく分からない時代だったが
連載を読みながら調べた
時代の空気を感じた

正行の成長を横で見ているような感覚だった
最後は泣いた

今村祥吾の作品を読みまくっている
その中でも、一番のお気に入りかも知れない
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』

2024-01-06 15:56:40 | 読書


なんとも不思議な小説だった。
最初は翻訳本だと思った。
アメリカのハイスクールから始まる主人公たちのライフヒストリーや振る舞いのリアルさ。
アメリカのリアルなぞとんと縁がないのに、リアルというのも変だが。
その文体もなんとなく翻訳のもので、
にしては作者の名前は日本人そのもので、「あれっ!」と思ったのは事実。

ジュリアン・バトラーといい、アンソニー・アンダーソンといい、実在の人物としか思えない。
というのも、実在の人物がそこかしこに存在するために、誰が創作で誰が実在なのか、
エピソードのどれが実際でどれが創作なのか。
まったく分からず、実際にあったこととして無理なく読んでしまう。

読み終えて、好きな本ではないし、もう一度読みたい本でもない。
けれど、すごい本だとは思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする