ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

ただ「いる」だけのこと

2024-11-22 09:03:16 | 読書
『居るのはつらいよ』東畑開人(2019年発行)
気になってはいたものの、漸く読めた

精神障害者のデイケアの場について書かれている。
主人公はセラピストで、そこでケアに関わった。

小説ではないので、主人公という言い方はおかしい。
著者と書くべきだろう。
けれどまるで小説のように読める。
主人公の成長譚でもあるからだろう。

私はボランティアで障害者の方に関わっている。
障害に見合ったケアをされていないと感じることが多々ある。

この本を読んで、 現代の経済社会の仕組みの中で 障害の有無にかかわらず、ケアの場をつくること、ただ「いる」ことを保証する場をつくることの難しさを痛感した。

福祉に関わる人たちも衣食住の生活がある。家族もある。
給料が必要だ。

私が関わっているのは大抵生活保護を受けて暮らしてる方たちだ。
部屋の居心地の良さが家によって全然違う。
ヘルパーさんによって掃除が行き届いている家とそうでない家と。
基本、本人が望まなければしないという前提だが。

例えばベッドの脚周り。
一応掃除機がかけてあっても、そこにべっとりホコリや髪の毛がついていたりする。

そのヘルパーさんの家はどうなんだろう。
おそらく同じように、あるいはそれ以上に片づかない家に住んでいるのではないか。
自分にゆとりがないのに、他人に行き届いたケアができるだろうか。
そして現社会では、ゆとりをもたらすのはまずお金だ。

けれどこの本を読むと
スタッフの給料という単純な問題ではなく
その施設やシステムが利益や成果を生み出さないと維持できないという構造的な問題とからんでいる。
「ただいるだけ」が許されているようで許されない。

何もかもがお金で縛られるこのシステムこそが障害になっている。
斉藤幸平さんのいうコモンズという世界観はそれを打ち破ることなんだな?

障害のあるなしに関係なく「ただいるだけ」でいられる空間をつくっている人がいる。
インプロのすぅさんやかなこさんがそれだ。
あらためてそう認識した。
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