ふかふかと 万葉粥を頬張りつ 春日の山の金木犀
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母親のショートスティ休暇で彼女と奈良興福寺へ早朝
車を飛ばす。目的の「興福寺国宝特別公開2009―お堂
でみる阿修羅」が開催中ということで「阿修羅像」の
拝観は、待機時間4時間半(平日は2時間)というこ
とで断念することに、祝祭日は9時には拝観手続きを
済ましていなければならい。増して雨天時などはこれ
は酷なこととなるというほどの人気ではあるが、もう
少し工夫が欲しい。
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普段は興福寺の国宝館などに展示されている阿修羅像
をはじめとする八部衆・十大弟子像の現存14体すべ
てが仮金堂に安置され堂内には、江戸時代に造られた
本尊・釈迦如来像や鎌倉時代の薬王・薬上菩薩像、四
天王像も安置され、それぞれの時代を代表する仏像の
美を拝観できるという。仕方なく、鎌倉時代の仏師・
運慶の傑作とされる無著・世親両菩薩像、四天王(国
宝)などを安置されている北円堂と南円堂の拝観に切
り替えることに。
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セットアッパーとはいえ、仏像の精緻さや作士の気魄
は存分にうかがえることになったものの予定が狂う。
そこで向かったのが春日大社。正午前だが折からの七
五三で子ども達の晴れ姿で混雑するが、外国の白人の
中年女性がしきりに七五三の参拝者を撮影していたが、
やはり珍しいのかと感心する。平成27年の60回目とな
る造替のための御殿用檜皮(ひわだ)の奉納寄進をさ
せて頂いた。
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万葉集に詠まれた植物を植栽する国内最古の萬葉植物
園として 開園された区画で現在も開園当時と変わるこ
となく、万葉名で詠まれた植物の8割以上の標本展示園
として作られた萬葉園に向かう。会津八一、折口信夫、
島崎藤村、宮柊二らの歌碑と万葉集が散りばめられた
植物園。池には鯉がいて餌をやると映画「崖の上のポ
ニョ」様に口を開けた鯉がいまにも池から飛び出して
こようかとする光景に驚く。
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ところで、植物園の正門横には春日荷茶屋がある。こ
こで休憩とる。万葉集にちなんだ四季折々の野草を使
った粥のセットメニュー。この季節きのこ。昆布だし
に、白味噌仕立てのお粥の湯気をふかふか立てながら
歓談に溢れた茶屋の光景を歌にする。江戸時代末期に
春日大社境内において、てんびん棒に茶箱と茶釜をか
けて、赤膚焼の皿に「火打焼」という餅菓子を火吹き
竹で火をおこし、参拝客に茶を振る舞っていた「荷茶
屋」が「大和名所図会」など紹介されている。
ふたりは蓬(よもぎ)団子を屋外の庭園でよばれるこ
とに。小倉小豆が奈良の鹿繋ぎで面白いと感心しなが
ら茶屋で憩う旅人を観察しつつ?花言葉を繋ぎ即興で
歌を描くという離れ業を遂行しながら、ふたりだけの
時間を楽しんだ。肝心の金木犀というと花の季節も終
わり植物園で確認したぐらいだったが。
金木犀(学名:Osmanthus fragrans var. aurantiacus)はモ
クセイ科モクセイ属の常緑小高木樹で、ギンモクセイ
の変種。中国南部が原産で江戸時代に渡来した。中国
では正しくは丹桂がこれに当る。しかし桂花は木樨属
におけるひとつの種名であり、金桂(ウスギモクセイ)
銀桂などを含む全ての亜種・変種・品種を総括する。
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庭木として観賞用に植えられ、秋になると小さいオレ
ンジ色の花を無数に咲かせ、芳香を放つ。芳香はギン
モクセイよりも強い。雌雄異株であるが、日本では雄
株しか入っていないので結実しない。雄しべが2本と
不完全な雌しべを持つ。花冠は白ワインに漬けたり(
桂花陳酒)、茶に混ぜて桂花茶と呼ばれる花茶にした
り、蜜煮にして桂花醤と呼ばれる香味料に仕立てたり
する。
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桂花蟹粉(芙蓉蟹の別名)、桂花鶏絲蛋、桂花豆腐桂
花火腿などのように鶏卵の色をキンモクセイの花の色
に見立てて名づけられた卵料理は多く、正月用の菓子
である桂花年糕のようにキンモクセイの花の砂糖漬け
を飾るなど実際にこの花が使われる料理もある。
香りの主成分はβ-イオノン、リナロール、γ-デカラ
クトン、リナロールオキシド、cis-3-ヘキセノールなど。
このうち、γ-デカラクトンなどはモンシロチョウな
どへの忌避作用があることが判明している。
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平安京とは異なり平城京の建造物は、中国の影響が色
濃いという印象をもち(→京都は朝鮮の影響が濃い)
帰路につくが、話しの尾鰭つきがスタートする。阪奈
和道→京滋バイパス→名神→自宅に着くと暫くして、
阪奈和道のインタ山田川付近に住む従兄弟ご夫婦が、
信楽の陶器の買い付け(信楽焼の方が伊賀焼よる庶民
的でカジュアルだとの理由で)の帰りに立ち寄るとの
電話が届き、自宅で消息や近況を話されて、時間を見
つけて「近鉄学園前」の喫茶店にお邪魔する約束をし
て帰っていただいたが、細かな話しはこうした面談が
一番だなと思いを腑に落とすこととなる。
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