極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

萩と新制度派経済学

2009年11月01日 | 政策論


車から田園の終の棲家を眺めれば 遠き旅路の萩の花かな



 

【新制度
派経済学とは


 Elinor Ostrom

自由市場原理が崩壊した場合の経済協調を探求した
米国の
エリノア・オストロムElinor Ostrom教授とオ
リバー・
ウィリアムソン(Oliver Williamson)教授が、2009
年のノーベル経済学賞を受賞した。フランスのある
大学教授は、昨年の経済崩壊を考慮すると、2人の
受賞は「タイムリー」だと話す。伝統的な市場理論
が、昨今の金融・経済の混乱には当てはまらなかっ
たために信頼を失ったと考えられているためだと評
価する。両氏とも「統治(ガバナンス)」に関する
業績が評価。オストロム氏は共有財産の管理に関す
る研究、ウィリアムソン氏は企業と市場による問題
解決の研究が受賞につながった。

 Oliver Williamson

ウィリアムソン教授は、「欠陥を生み出す企業の構
造」に焦点を当てた研究で受賞した。ロンドン
Lon-
don
のシティ大学City Universityのクラウス・ザウナ
Klaus Zauner教授(経済学)によると、ウィリア
ムソン氏はその取引費用理論で経済学に「革命」を
もたらし、その理論は今や世界中のビジネススクー
ルで教えられているという。


取引費用理論によると、企業は市場主導のオプショ
ンの方がコスト安に見える場合でも、スポット市場
での取引とは異なり、長期的な経済協力関係による
コスト節約の方に重きを置くと考えられている。経
済を良くするのは市場ではなく「人」とする。一方、
オストロム教授は、共有財産をめぐる争いで最良の
解決をもたらすものは市場の力ではなく人間である
と結論付ける研究を行った。

 キハダ

フランスのエコノミスト、マルタン・アントナ(M-
artine Antona
)氏によると、誰にも属していない共有
財産を集団で管理すべきと
唱えた学者は、オストロ
ム教授が初めて
。そして、「炭素も生物多様性も人
類の共有財産」だと世界中の人々が唱えるようにな
った昨今では、こうした考えはますます重みを持っ
てきているという。例えば、世界中で乱獲されてい
るマグロのような共有資源は、各当事者が自己の利
益しか考えない
場合、過度に使用してしまうことになる。



その解決策は、当事者間で競争するのではなく、協
力することだ。「市場によらない非公式な協力関係
がすべての人々にとってより良い解決策になる場合
もあることを示してくれている」という。言い換え
れば、この「非公式な協力関係」は、市場の失敗を、
エコノミストたちの予想以上に、そして政府の介入
を必要としないほどに、修正できる可能性を秘めて
いるという。 

 Douglass Cecil North

彼らの立脚する経済学系譜は、主としてアメリカで
19世紀末から1930年代にかけて展開された経済学の
流れの「制度学派」(創始者であるTh.ヴェプレン、
さらにW.C.ミッチェル(W.C.Mitchell,1874-1948)、
J.R.コモンズ(J.R.Commons,1862-1945)、J.M.
クラーク(J.M.Clark,1884-1963)など)の理論を
転倒させた経済学派で「新制度学派」「現代制度学
派」など呼ばれている。

 Thorstein Veblen

制度学派の特徴は
、経済現象を歴史的に進化・発展
する社会制度の側面からとらえる
点にあり、古典派
経済学の功利主義とホモエコノミクス概念を批判し、
人間の習慣や思考様式などの社会心理学的側面を重
視し、経済現象を累積的因果の関係として分析し、
演繹的・理論的分析よりもむしろ帰納的な歴史的研
究を重視した。



この学派が成立した時代背景として、独占の成立と
農民・労働者階級の貧困化があり、彼らは社会改良
主義を主張し,ニューディール政策にも影響を与え
たが、1930年代にはケインズ経済学の影響により学
派としての意味は次第に薄れた。

 Geoffrey M. Hodgson

ジェフリー・ホジソン(G.M.Hodgson)は、新古典派
経済学の特徴の次の三点を批判し(『現代制度派経

(1)あらゆる経済主体が合理的な最大化行動をと
  るという考え。外生的に与えられた選好にした
  がって最適化を行うと想定する。
(2)深刻な情報問題が発生しないとし、将来につ
  いての根本的な不確実性、複雑な世界の構造や
  媒介変数についての無知の広がりや、共通の諸
  現象を認識時の個人ごとの相違は存在もしない
  とする。
(3)歴史的時間で進行する変化の連続的過程より
  も、動きのない均衡状態或いは、それに向かう
  運動に理論の焦点をあわせる。

済学宣言』)、人間の「合理性の限界」を認識し、
現実には不確実性があるため、すべての経済制度は、
その経済制度が機能するために少なくとも一つの構
造的に異なった部分制度に頼らなければならない。
社会構成が全体として変化に対応できるためには構
造的な多様性が必要であり、それには常に複数の生
産様式の併存が必要であるとする。いわば「制度が
経済を決定」→「経済が制度を決定」へ転換させた
のが新制度学派である。

Yagi.jpg 八木紀一郎


【混成性の原理:inpurity principle

各システム(あるいはサブシステム)には、システ
ム全体を支配はしないとしても、そのシステムが機
能するためには不可欠な『非純粋性』が含まれてい
るという考え方(『現代制度派経済学宣言』)
で、
経済過程が自己調整的ではなく「累積的因果」の過
程にあると考える。この「累積的因果連関」は、

 神野直彦

ミュルダール(K.G.Myrdal)によって不均等発展が深
化する過程を説明するのに使用された概念で、カル
ドア(N.Kaldor)によって規模に関する収穫逓増と結
びつけられ、製造業が成長と生産性上昇との相互促
進的関係を通して「成長のエンジン」としての役割を
演ずるモデルへと発展して行く。


 金子勝

このように、不確実な環境下の合理的な個人の行動を
理論化することで、人々の経済活動を支える社会的規
範や法的規則などの制度的側面を解明し、経済学の対
象と方法を拡張しようとする現代経済学の潮流(→新
帝国主義の補完→ポスト世界分業交易資本主義?)で
あると腑に落とす。

【注釈:プリンシパル=エージェント



プリンシパル=エージェント関係(principal-agent rela-
tionship
)とは、行為主体が、自らの利益のための労
務の実施を他の行為主体に委任すること。このとき、
行為主体をプリンシパル(principal)、行為主体をエ
ージェント(agent)と呼ぶ。



エージェンシー・スラック(agency slack)とは、エ
ージェントが、プリンシパルの利益のために委任さ
れているにもかかわらず、プリンシパルの利益に反
してエージェント自身の利益を優先した行動をとっ
てしまうこと。エージェンシー問題(agency problem
とは、プリンシパル=エージェント関係においてエー
ジェンシー・スラックが生じてしまう問題のこと。



プリンシパル=エージェント理論(principal-agent the-
ory
)とは 経済学においてプリンシパルがエージェ
ンシー・スラックを回避するために、どのようなイ
ンセンティブ(誘因)をエージェントに与えれば良
いのかについて、主として報酬を対象に考察する研
究のこと。また、政治学においては、主として、プ
リンシパル=エージェント関係にありながらプリン
シパルの利益に沿ってエージェントが行動している
政治現象を、エージェントに対するインセンティブ
や監視の形態などから説明するアプローチのこと。


Lespedeza ja03.jpg

遠い昔の出来事を語り合いランチ帰り車中、
良き集
落形成に一役を担えたかなと歌う。秋の七草のトッ
プ「ハギ」。花言葉は「思い」「清楚」。

コメント
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