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豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

マルチエキシトンな僕たち

2012年01月09日 | 省エネ実践記

 



【マルチエキシトンな僕たち】



原子力発電の核分裂反応利用技術が典型的な“バルク技術”であるように太陽光発電技術
にも、従来のシリコン結晶系太陽電池のようなバルク離れが加速し(『バルクな技術の終
』)、ここでも『デジタル革命』の第2則(「個人史としてのデジタル革命」)のダウ
ンサイジング、つまりは、量子効果が発露する第三世代への交代がはじまろうとしている。
その1つが、米テキサス大学オースティン校の化学科教授であるXiaoyang Zhu氏が主導す
る研究チームが進めている「マルチエキシトン(多重励起生成)・ホットキャリア方式量
子ドット型
」なのだ。"quantum shadow-state(量子影状態)"と呼ばれる量子状態の発見
により、太陽電池の変換効率を倍増できる可能性が出てきたという。朱教授らの研究チー
ムは、有機プラスチック半導体材料であるペンタセンを用いれば、太陽光の光子1個から
取り出せる電子の数を倍増できることを確認する。


これにより、プラスチック半導体を用いて太陽電池を製造することには大きな利点が幾つ
かあるが、その1つは低コスト。分子設計や分子合成を組み合わせれば、太陽エネルギー
変換における斬新なアプローチを生み出すことができる。太陽電池の効率を、飛躍的に高
められる可能性がある。シリコン(Si)材料を使う既存の太陽電池における理論上の変換
効率は、最大でも31%だが、
太陽電池に当たる光エネルギーのほとんど利用可能な電力に
変換できる波長ではない。そうしたエネルギーは熱となって失われてしまうが、朱教授ら
は熱励起したホットエレクトロンのエネルギーを捉えることができれば、太陽光を電力に
変換する際の効率を66%まで高められる可能性がある。



そのために、(1)単接合のシリコンの変換効率が低いのは理由の1つ、励起エネルギー
より小さいエネルギーの太陽光か透過しする材料固有の損失の抑制(シリコン系半導体は
全太陽光エネルギーに対して15~19%が損失)。(2)もう1つは、全太陽光エネルギー
の約30%を失う要因になっている熱エネルギー損失の抑制だが、高いエネルギーをもつ電
子とホールか対となって生成した後、数10fs(フェムト秒)から数ps(ピコ秒)の非常に短い
時間にそのエネルギーが熱となって失われてしまうというもので、>電極などで外部にエネ
ルギーを取り出そうとしても熱になるまての時間か短いために取り出せない。そして、光
が透過する損失と熱エネルギー損失という、結晶シリコン系太陽電池が抱える方法として
考えられているのが量子ドットで、直径が数nmと小さい半導体のナノ結晶の周囲は、厚く
て高いポテンシャル障壁で囲まれ、「量子サイズ効果」や「中間バンド」「キャリアのエネル
ギー緩和時間の増大」といった量子効果を生み出す(ここまでの理解には専門的な知識を要
する)。この量子効果を活用することで、幅広い波長の光や、高いエネルギーの光の利用
が可能となる。

具体的には、(1)量子サイズ`効果を活用するタンデム方式、(2)中間バンドを活用する中
間バンド方式
、(3)キャリアのエネルギー緩和時間の増大を活用するMEG(Multi-Exciton
Generation :マルチエエキシトン生成)方式とホットキャリヤ方式
の3つが考えられてい
る。つまり、(1)タンデム方式と、(2)中間バンド方式は、幅広い波長の光の吸収を狙って
単接合太陽電池で太陽光の透過損失を少なくする一方、(3)MEG・ホットキャリヤ方式は、
高いエネルギーの光の活用を狙い、熱エネルギーの損失を少なくするたに量子効果を用い
る。ここへきて各国での研究開発競争がより拍車がかかってきている。



朱教授らの研究チームは既に、半導体ナノ結晶を用いてホットエレクトロンを捉えられる
ことを実証し、その成果を2010年にSience誌で発表していたが、通常の太陽光パネルに当
たる自然光ではなく、集光太陽光が必要になり、この手法は実用的には実現するのが難し
いとし、ペンタセン中で、光子が1個当たり1つのquantum shadow-stateを作り出す(上
々図参照)。この状態では2個の電子を高い効率で捉えることができ、より多くのエネル
ギーを生成できる。光子が吸収されるとエキシトン(励起子)を生成し量子力学的に結合
し、マルチエキシトンと呼ばれるquantum shadow-stateを形成。そしてマルチエキシトン
が電子受容体へ転移する際に、2個の電子を効率よく生み出す。今回の実験では電子受容
体として、60個の炭素原子から成るフラーレンを用いた。研究チームによると、フラーレ
ンを使うことで太陽光を集光させず、入射光、散乱光を固定パネルとして受光し、ペンタ
センを利用した太陽電池の変換効率を44%まで高めることができるというものだ。

  

 


つまり、3つの太陽光発電の量子効果適用技術が加速することで太陽エネルギーの恩恵を
享受できる理想的な社会システムが構築できれば、資源争奪の醜い歴史に休止符、いや、
終止符が打てると、エグザイルの『ライジングサン』を聴きながら、小さなチカラしかも
ちあわせていない僕たちでも、僕たちの中で惰眠しているマルチエキシトンを形成し、少
しでも現状克服をと、誓うこととなった1つの記事だった。

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