【有機薄膜半導体技術の現場】
電気自動車、ハイブリッド車などの低燃費エコカーの普及は、世界最大の民間石油会社
「エクソンモービル」は、国内元売り大手の東燃ゼネラルへの出資比率を引き下げるさ
せ、日本での事業を大幅に縮小させた。エクソンモービルは、子会社を通じて保有する
東燃ゼネラル株の比率を50.5%から22%に引き下げ、国内に約3000カ所ある「エッソ」
「モービル」などのブランドで展開するガソリンスタンドは東燃に譲渡する。エコカー
の普及などでガソリン需要が年々減少する日本での事業を縮小し、売却資金を資源開発
などに振り向ける方針だ。一方、東燃は、原油の調達などエクソンとの協力関係を継続
しながら約三千億円で自社株買いを行い経営基盤を強化する。
簡単に言ってしまえば「地下化石燃料本位制」から「先端技術本位制」への、さらには
「環境リスク本位制」へのシフトの当然の帰結だとはこのブログでも書いてきたことだ
し、技術レベルでいえば、原発や内燃機関などの「バルク制御技術」から半導体やバイ
オ技術などの「ナノスケール制御技術」へのシフトでもある。
それだけでないのだ 。太陽光発電などのように「ナノスケール制御技術」内部でも激
しい競合が起きていて、最近、技術開発ロードマップの予想を上回るペースで、有機
薄膜系の変換効率が急上昇している。下の図は、有機薄膜系の新規考案というより、
初心者向けの教科書といった方が良いかも知れない。ここでは、安価に太陽電池モジ
ュールを製造するため、なるべく大面積の導電性基材上に光電変換層及び電極層を積層
状に成膜した後、切断し太陽電池セルを作製する方法が好ましいが、この積層膜を切断
する際に、上部電極と下部電極である導電性基材とが短絡してしまうという問題がある。
それを防ぐために、上部電極の一部をエッチングやレーザーで除去してから切断するこ
とが行われている。しかし、上部電極をエッチング等のプロセスで除去する方法は、製
造コストが高いという問題がある。従来上部電極はスパッタ等の真空プロセスにより成
膜される為、製造コストが高くなり、かつ連続塗布プロセスの速度は、真空装置による
スパッタプロセスや、レーザーによるパターニングプロセスによる速度よりも一般的に
速いために、効率の良い製造ラインの設計が困難という問題があるのでこれを解決しよ
うとする提案だ。ところで、わたしもすでに同じことを考えていて、例えば、全プロセ
スの加重平均加工温度などを指標に使って、いかに、オープンで常圧、低温の連続生産
方式の開発に腐心していたのだから面白いものだ。
【符号の説明】 1 導電性基材 2 有機薄膜起電力層 3 上部電極 4 補助電極
4a 集電部 4b 櫛状部 5 単位太陽電池部5A 太陽電池 7 太陽電池シート
【フェムト秒レーザーによる酸化グラフェンの非熱的還元法】
ところで、独立行政法人 産業技術総合研究所はこほど、時間依存第一原理計算という
専門解析プログラムで、フェムト秒レーザーを照射した後の酸化グラフェンの構造変化
をシミュレーションし、効率良く酸化グラフェンを還元してグラフェンを作製するのに
適したレーザーの波形を見出した。この還元方法は、化学物質を用いたり、高温で処理
したりしない方法で、パルス幅の広い(~200 fs)フェムト秒レーザーによる還元よりも
、還元反応に伴う発熱を抑制できるため、グラフェンに欠陥が発生するリスクが少ない。
したがって、この還元方法を応用すれば酸化グラフェンの印刷塗布によるグラフェン電
極製造技術への貢献に繋がるという。
つまり、フェムト秒レーザという極小時間の発光を利用し、分子の結合や離反といった
化学反応の進行状況(遷移状態)をストロボ撮影のように観察する、フェムト化学(femt-
ochemistry)を利用して、加熱せず化学反応処理することができるというものだ。勿論、
レーザ発光装置は大変高価だが(量産化段階に入れば逓減するだろう)、反面、化学薬
品を使わないからグリーンプロセスになる。
さてさて、今夜も冷え込みがきついく雪も津々と降っていると彼女が言うのでこの辺で
切り上げるとしよう。技術論的には片っ端からためしてみて、前述したプロセス表現す
る指標を創造し評価方法を定めることが大切だと考えている。今夜はスローなレーザー
に乗り近未来をのぞいてみた。