極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ブルーを制すれば世界を制す。

2012年06月06日 | 新弥生時代

 




【ブルーを制すれば世界を制す】

高級な鉢物として重要なランの一種であるコチョウランにおいて、遺伝子組換えにより、従来存在しなか
った青色の花色をもつ品種の作出に世界で初めて成功した。この研究は、千葉大学大学院園芸学研究科植
物細胞工学研究グループの三位正洋教授及び陳東波特任講師と石原産業株式会社との共同研究の成果であ
り、単離したツユクサ由来の遺伝子をコチョウランの培養細胞に導入し、個体再生および開花にに成功し
たばかりだが(2012.02.29)、今度は最近急激に切り花や鉢物として人気が増しているダリアで、遺伝子
組換えにより、従来存在しなかった青色の花色をもつ品種の作出に世界で初めて成功したという。



コチョウランと同様、ダリアには花弁に青色色素のデルフィニジンをつくりだす遺伝子がないためである。
まず、ダリアにおいて遺伝子組換えを行うために必要な、細胞から植物を効率よく再生する方法や、遺伝
子を組み込む方法を開発し、それらの成果を元にツユクサの青色遺伝子を、濃桃色の花を持つ一重の切り
花用品種「大和姫」に組み込んだ。その結果、昨年4月18日に、青紫の花色を持つ初花が開花した。研究
を開始してから6年目のことである。その後、すぐにこの個体をピンクの淡い花色を持つ大輪の八重の品
種と交配し、得られた種子をすぐに播いた結果、様々な花型の青から紫の花色を持つ子供達が、4ヶ月後
に開花した。中でも花弁の重ねが多く、形の整った八重の個体はすぐにでも商品化できそうな優れたもの
である。これら一連の青色品種群は、今年も開花期を迎え、前年と変わらぬ色調を維持しており、組み込
んだ遺伝子が安定して働いていることが示されている。このように、ダリアでは交配によって簡単に次の
世代の個体が1年以内に得られることから、多様な品種を交配の相手に選ぶことによって、さらに多様な
青色品種の作出が期待される。



この成功には石原産業の前駆成果がある。青い花色の作出には、青色色素(デルフィニジン)の合成酵素
の一つのフラボノイド3',5'-水酸化酵素(F3'5'H)が大きな役割を果たすが、その酵素をより高
発現するF3'5'H遺伝子を、青色コチョウランの作出を可能にする高発現型F3'5'H遺伝子を見出し
たことが大きい。これは、ツユクサ由来のF3'5'H遺伝子が既知遺伝子を上回る効果を示すことを見つ
けたこと、そしてこの遺伝子をコチョウランに導入し青系の花色に改変できることを発見したことによる。
考えてみる、自然界で青色を発光、配色することはと手強いことは、有機エレクトロニクスでも、無機エ
レクトロニクスでも生物工学でもこれまで常識だったが、中村修二の青色発光ダイオードのブレークスル
ーを代表として全面突破前夜模様に入っているんじゃないかと、またも誇大妄想を刺激するニュースだ。

特開2008-253250

 

図2 歪補償技術による量子ドットの積層構造作製の概念図

 

【量子ドットを制すれば世界を制す】

先日(2012.06.04)、物質・材料研究機構の研究グループは、独自の半導体量子ドットの自己形成技術で
ある「液滴エピタキシー法」の高度化を進め、従来報告された値を上回る世界最高クラスの面密度を持つ
量子ドットの新形成技術の開発と、形成した量子ドット集団から強い光励起(フォトルミネッセンス: PL)
発光を観測し、この技術が優れた結晶品質の実現することを発見したことが報じられた。量子ドット型太
陽電池は、従来のバルク型半導体材料以上の 60%を超す高変換効率の実現可能性が提案されている。量子
ドットの利点を生かしデバイスの特性向上を図るには、量子ドットの高密度化が求められ、量子ドット面
密度について、これまでの最高値は
×1011/cm2だったが、(1)高い指数面を持つ基板の利用(2)室温
付近でのガリウム液滴形成と結晶化(3)照射ガリウム量の最適化で、液滴の合体現象の抑制導入し、格子
歪みの無いガリウム砒素量子ドットで7.3×1011/cm2の約8倍の密度を実現する。

 

ここで、液滴エピタキシー法は基板結晶との間に格子歪みのない量子ドットを自己形成可能な唯一の手法
として注
目され、原理的に歪みによる結晶性劣化の制約を受けず、成長方向に多数の高品質な量子ドット
層を近接して配
置できる利点がある。また、同日には東北大流体科学研究所の寒川誠二教授(知的ナノプ
ロセス工学)の研究グループが、微細で格子状の半導体「量子ドット」をシリコンで作り、高密度で配置
したチップ状の太陽電池の試作に成功したと発表した。実験では、太陽光のエネルギー変換効率は12.6%
に上り量子ドットを使った同種の電池としては世界最高を記録しているが、量子ドットの単層で太陽光エ
ネルギーの変換効率を測定していて、同種の太陽電池の変換効率はこれまで、オーストラリアの研究者ら
が量子ドットを15層重ねたタイプで10.6%を記録したのが最高だ。寒川教授らは今回、量子ドットの配置
密度を高めるなどしたことで、単層でも記録を超えることができたと話す。


【符号の説明】

10・・・中性粒子ビーム処理装置 12・・・ビーム生成室 14・・・処理室 16・・・コイル
18A・・・電極 18B・・・メッシュ電極 20・・ガス導入口 22・・孔 24・・被処理物
26・・・基板 28・・・有機薄膜

さて「核燃料物質のバルク制御技術から量子ドット制御技術への時代」とはこのブログでも掲載したこと
がある(「マルチエキシトンな僕たち」)。これは9割方正論だと思っているのだが、高変換効率の量子
ドット型太陽電池の開発速度は、今回の福島の事故により加速しているように見受けられるが「2020年を
目標とする実用化に大きな弾みが付いた」(寒川誠二)。従って、前述の青色エレクトロニクスと同様、
量子ドットを制すれば世界を制するといえそうだが(勿論、この場合、蓄電池技術とセットであるが)、
このフィールドでも我が国の知的生産力はトップクラスにある。

 

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