極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

最新量子スケール光電変換素子技術

2014年03月12日 | デジタル革命渦論


  




日経ビジネスで、「太陽光発電は年金の代わりになる!」がまたちがったかたちで問題となっている。
利殖目当てが目的化していくことに対する警戒からだが、再生可能エネルギー普及のインセンティブ手
段としては洋の東西を問わず共通問題で程度ものとして議論を注視しておけばと考えているが、その批
判の中に気象の極端化による豪雪や強風対策だがこれは重要な改良要因となる。環境省などはもう考
ているだろうが早いところ事例研究した方が良いだろう。それにしても、上のグラフをみて、
ドイツの
先行は段突だ。非石油国にして戦車燃料で石炭合成油を採用、高をくくっていた連合国側を驚ろかせた
国柄はいまもかわりませんねぇ~~。

 



【最新量子スケール光電変換素子技術】

ついでというわけではないが、今夜は量子スケール電子デバイス技術開発の最新情報を掲載してみよう。
と、言ってもこれは、『量子スケールデバイス工学(6)』の続編、シリーズでポストメガソーラを主
題にしていることを確認しておこう。まず、1件めは、有機-無機ハイブリッド接合型の光電変換素子
について(下図参照)。(1)有機半導体薄膜によるEL発光素子の進展に伴い、有機半導体薄膜の合
成や薄膜形成技術の高度化はめざましいが、この背景に有機半導体薄膜でのホール輸送型または電子輸
送型の伝導型制御が着実に進展していることがある。なお、ホール輸送型の有機半導体薄膜を「p*型」、
電子輸送型の有機半導体薄膜を「n*型」と記載することが定着している。(2)有機-無機ハイブリッ
ド構造の光起電力型素子の開発は、有機太陽電池や全有機半導体薄膜の受光素子の研究が進展している。
一方、有機-無機ハイブリッド接合型素子の研究は基礎研究段階。これらの従来の有機-無機半導体複
合素子では、有機半導体薄膜の役割は、半導体機能より透明な有機導電薄膜として利用、無機半導体と
のショットキー接合が多く使用される(半導体用語が多用されるので初めての方には荷の重い話になる
がそこは何とかご辛抱のほど)。つまり有機-無機複合素子は、有機薄膜の役割は窓層としての優れた
透過性と無機半導体との良好なショットキー接合の役割を果たしている。実際、近年、紫外―可視域で
透明な有機導電性薄膜とワイドギャップ化合物半導体との接触による良好なショットキー接触(整流性
)が発見され、
これを利用したZnO(酸化亜鉛)などの有機半導体―無機ワイドギャップ半導体のショッ
トキー接合型
・紫外受光素子も東北大学の研究グループなどから提案されている(例えば、特開2008-2
11203
参照。)。上記の有機-無機半導体のショットキー接合を原理として動作させる半導体受光素子は
吸収損失の大きい無機半導体窓層、例えばp+窓層を吸収損失の少ない有機半導体薄膜で置き換え、外部
からのバイアス印加で形成されるショットキー接合界面に形成される高電界・空乏層領域を利用し動作
させる。

 
JP 2014-42077 A 2014.3.6

現在までに提案されている有機-無機半導体によるショットキー接合型受光素子の問題点は、電流の信
号利得Gが発生しないこと
。つまりは、従来の無機半導体で構成しているp-i-n型受光素子などと同様
に、ショットキー接合
型の有機-無機複合型受光素子の受光感度を支配する外部量子効率ηexの限界値
は、有機窓層の吸収や反射損失を
完全に制御してもηex<百%であり、この制限のために飛躍的な高感
度化に限界がある。


●信号利得を有する従来の半導体受光素子 原理と課題

受光感度の飛躍的な向上には、量子効率の上限である百%を超える信号増倍型の受光素子が要求される
が、この信号利得Gを発現する光起電力型の半導体受光素子には、Si(ケイ素)、Ge(ゲリマニウム)
などの無機半導体で構成したp-n-p型やn-p-n型のフォトトランジスタ素子や雪崩増倍型のAPD素子があ
る。Siなどによるフォトトランジスタ型の受光ダイオードの接合構造は、p-n-p接合あるいはn-p-n接
合である。その動作原理は、n-p-n型では、素子外部から入射した光によりベース領域に微小な少数キ
ャリアである電子が注入され、これらの電子が拡散効果によりベース層からエミッタ側へ流入し、それ
と同
時に、増倍された正孔電流がエミッタからベースに流入し、ベース層を拡散しながら通過し、コレ
クタへ向かう大
きな電流を生じる、バイポーラトランジスタの電流増倍動作を利用するものである。
ところで、"デジタル革命渦論"に位置つけるなら、このアバランシェフォトダイオードは、フォトダイ
オードの価格が数百円程度に対し、従来は百万円していたものが現在では数千円とすさましいまでのダ
ウンサイジングとデフレーションの象徴的なデバイスになる。



しかし、これらの SiやGeなどのフォトトランジスタ型の受光素子は、信号利得Gは発生するが、最大
の欠点は、動作速度が遅いことである。また、暗電流が大きく、高速応答でのS/N比が小さいなどの
欠点もある。素子応答速度がp-i-nやショットキー型と比較して極
めて遅いことは、フォトトランジスタ素子
の動作メカニズムに起因しており、本質的な欠点となっており、それらの応用は狭い範囲に限定されて
いる
。周知のように、例えば n-p-n型フォトトランジスタの応答速度を決定する最大の要因は、光によ
る励起によってベース層で発生した電子などのキャリアがエミッタ層へ移動する移動速度や、また、そ

れが増倍され、エミッタ層からベース層を通過してコレクタ層へ流入する正孔の移動速度が、ベース層
の拡散速度で限定されることによる。この問題を少しでも低減するためにベース層を、極力、薄く設
計したり、ま
た不純物濃度に勾配をつけたりするなどの工夫がされているが、それらの改良においても
数MHz程度が限界
点とされている。また、受光素子のS/Nを支配する暗電流が大きいという課題も
克服されていない。


●APD型の半導体受光素子

信号利得を発現するもう一つの光起電力型の半導体受光素子として、Si、GeなどのAAPD素子。この
素子は 200V以上の直流バイアスを印加し、光電変換層の電界強度をアバランシェ増倍が生じる電界強
度(>106/cm)まで高め、光電流信号をアバランシェ増倍させることにより2~3桁増倍して動作させ
るが、この増倍機能をもつのAPD素子の課題は、
数V~数10Vで動作させるp-i-n素子やショットキ
ー素子と比較し高い動作電圧であり、またAPD素子の製作工程で、放電や暗電流を阻止に、埋め込み

型ガードリングの形成など複雑なプロセスが必要であり、素子の集積化が容易でなく
、コストも高いく、
APD素
子の応用範囲は光通信システムの一部や科学光計測分野などの特殊な用途に限定されている。
上図の新規考
案はこのことを踏まえ、信号利得Gを有しかつ、p-i-nやショットキー型のような優れた
応答性と低い暗電流性を備えた可視-紫外光波帯の高感度の有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素
子を提供である。

●課題を解決するための手段

有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子は、基本接合構造を、素子上部から、ホールのエミッタ層
兼窓層として機能する正孔輸送型の有機半導体薄膜である p*型有機半導体薄膜と、低キャリア濃度で、
高抵抗の無機半導体層であるi型無機半導体光電変換層と、p型無機半導体コレクタ層とからなるp*-i
-p対称接合構造として、数Vから数十Vの直流あるいは交流のバイアス電圧を印加することにより、光
電流の信号利得をえることとし、このの有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子では、基本接合構
造を、素子上部から、電子のエミッタ層と窓層として機能する電子輸送型の有機半導体薄膜であるn*
有機半導体薄膜と、低キャリア濃度と高抵抗の無機半導体層のi型無機半導体光電変換層と、n型無機半
導体コレクタ層により n*-i-n 対称接合構造とし、数Vから数十Vの直流あるいは交流のバイアス電
圧を印加し光電流の信号利得を得る。さらに、有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子では、バイ
アス電
圧の印加方向を変えることで、光電流の信号利得を発生する信号増倍型の受光特性モードと、信
号利得を発生
しない、通常のPIN型の受光特性モードを選択可能にする特徴をもつ。

また、この有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子は、基本接合構造を、素子上部から、正孔輸送
型の有機半導体薄膜である透明 p*型有機半導体薄膜と、低キャリア濃度且つ高抵抗のi型ワイドギャッ
プ無機半導体層と、n 型ワイドギャップ無機半導体層のp*-i-n接合、あるいは、電子輸送型の有機半導
体薄膜の透明 n* 型有機半導体薄膜と、キャリア濃度と高抵抗のi型ワイドギャップ無機半導体層と、p

型ワイドギャップ無機半導体層としたn*-i-p接合とし、この基本接合構造への直流バイアス電圧の印加
よりキャリアの雪崩増倍型の信号利得を発現させる。また、基本接合構造を、素子上部から、電子のエミッタ
層と窓層の機能とした電子輸送型の有機半導体薄膜であるn*型有機半導体薄膜と、低キャリア濃度と高抵
抗の無機半導体層のi型無機半導体光電変換層と、n型無機半導体コレクタ層で構成する n*-i-n対称接
合構造として、数Vから数十Vの直流あるいは交流のバイアス電圧を印加して、光電流の信号利得を発
現する。さらに、本発明の有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子では、バイアス電圧の印加方向
を変えて、光電流の信号利得を発生する信号増倍型の受光特性モードと、信号利得を発生しない通常の
IN型の受光特性モードを選択可能としていることにも特徴を有す。また、本発明の有機-無機ハイ
ブリッド接合型光電変換素子では、基本接合構造を、素子上部から、正孔輸送型の有機半導体薄膜であ
る透明 p*型有機半導体薄膜と低キャリア濃度と高抵抗のi型ワイドギャップ無機半導体層と、n型ワイ
ドギャップ無機半導体層としたp*-i-n接合、あるいは、電子輸送型の有機半導体薄膜である透明 n*
有機半導体薄膜と、キャリア濃度と高抵抗のi型ワイドギャップ無機半導体層と、p型ワイドギャップ
無機半導体層としたn*-i-p 接合とし、この基本接合構造への直流バイアス電圧の印加によりキャリア
の雪崩増倍型の信号利得を発現させる。
さらに、この有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子を同
一半導体基板上に、所定間隔で線状あるいは面状に複数個形成し、全体を反射
防止膜や保護膜などで被
覆して集積型受光素子とし、また、上記有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子または上記集積型
受光素子と、深紫外線や、X線、ガンマ線などの高エネルギー放射線を紫外域や可視光域へ変換する高
効率シンチレーション材料とを組み合わせて構成した光電子増倍管を使用しない全固体型の深紫外や放
射線の高速・高感度の検出装置とする(と、以上はこの新規考案の記載文を恣意的にコピペしたもので
だが、これを理解するにはチョット骨が折れます)。



●量子ドット太陽電池とその製造方法

下図は、多層型化合物半導体系の光電変換素子で、形成した量子ドット層の面内密度が3.0×1011cm-2
5×1011cm-2、高さが1.5~2.0nmの量子ドットとを含むことで、量子効率の向上とキャリアの長寿命化が
実現可能な太陽電池の提案である(「特開2014-041913 太陽電池およびその製造方法」)。


【符号の説明】

11 GaAs基板 12 n+GaAs層(n型半導体層) 13 n型GaAs層(n型半導体層)
14 GaAs層(ノンドープまたはn型半導体層) 15 GaAsSb障壁層 16 InAs量子
ドット 17 GaAsSb障壁(キャップ)層 18 GaAs層 19 p+GaAs層(p型半導体
層) 21 Type-I量子ドット層 22 Type-II量子ドット層 23、24 半導体領域 26 電極 
28 p+AlGaAs窓層(p型半導体層) 29 透明電極 30A,30B 太陽電池

周知のごとく自己形成量子ドット(QDs)を用いた中間バンド型太陽電池により、高い変換効率の実
現が期待されている。従来の量子ドットを用いた中間バンド型太陽電池は、主として量子ドット層を成
長方向に近接して積層(多重化)した、いわゆる縦型構造のものが開発されてきているが、縦型構造の
太陽電池には、以下の問題がある。

(1)多数の量子ドット層を近接して積層方向に積み上げ、量子ドット内の電子を基板と垂直方向に結
  合させてバンド化を実現するため、量子ドット層間を隔てるスペーサ層の膜厚を薄くする必要があ
  る。また歪補償層を必要とするなど、技術的に難しい構造である。
(2)積層方向の中間バンド化の場合、pn接合内の電界効果により量子ドット層間で準位ずれが生じ、
  量子ドット層同士の量子準位を整合させることが難しい。
(3)pn接合に沿ったキャリアの流れ方向と積層化による中間バンドの形成方向が同じであり、キャ
  リア分離効果が得られない。また、積層方向にType-IIバンド構造を導入してキャリア分離効果を高
  める構成を採用した場合でも、キャリアの流れる方向と中間バンドの形成方向が同じであるためキ
  ャリア分離効果は不十分であり、長寿命化の実現が困難である。

※1 A. Luque and A. Marti, "Increasing the Efficiency of Ideal Solar Cells by Photon Induced Transitions at
    Intermediate Levels", Phys. Rev. Lett. 78, 5014 (1997)

※2 N. Kakuda, et al, "Sb-mediated growth of high-density InAs quantum dots and GaAsSb embedding growth
    by MBE", Applied Surface Science 254 (2008) 8050-8053"

このため、量子ドットの面内密度を高めると、量子ドット内電子の波動関数が基板と平行な面内で結合
して重なり合い、量子ドットの伝導帯と価電子帯の中に中間バンドが形成される。面内(基板)と平行
な方向に結合した中間バンドを利用することで、量子ドット層を比較的厚いスペーサ層を介して複数層
積み上げて、実用的な太陽電池を実現できる。面内結合型の太陽電池は製造が容易であり、従来の縦
型構造の太陽電池よりもはるかに少ない積層数で高い変換効率を実現することができる。

量子ドットの面内密度を高めると、量子ドット内電子の波動関数が基板と平行な面内で結合して重なり
合い、量子ドットの伝導帯と価電子帯の中に中間バンドが形成される。面内(基板)と平行な方向に結
合した中間バンドを利用することで、量子ドット層を比較的厚いスペーサ層を介して複数層積み上げて、
実用的な太陽電池を実現できる。面内結合型の太陽電池は製造が容易であり、従来の縦型構造の太陽電
池よりもはるかに少ない積層数で高い変換効率を実現することができる。また、量子ドットの面内密度
と高さを制御することによって、キャリアの長寿命化を実現することができる。

具体的には、太陽電池は、

1.第1の導電型の半導体層と、第2の導電型の半導体層と、この第1及び第2の導電型の半導体層の
 間に配置される半導体領域と、を含み、
2.この半導体領域は、 第1の導電型の半導体層に隣接する第1半導体層と、第1半導体層上に形成さ
 れる量子ドット層を含み、
3.この量子ドット層は、第1障壁層と、第1障壁層上に形成され面内密度が3.0×1011cm-2~5×1011cm-2
  高さが1.5~2.0nmである量子ドットとを含むことを特徴とする。構成例として、量子ドット層はType-I
  バンド構造を有するものであってもよいし、Type-IIバンド構造を有するものであってもよい。Type-II
  バンド構造とする場合は、量子ドット上に第2障壁層を配置して、第1障壁層と第2障壁層で量子ドッ
  トを挟み込む。Type-Iバンド構造の量子ドット層を配置した場合、量子ドットからの発光の減衰時間
  (注入されるキャリアの寿命)は波長1,000nm以上の光に対して3~6nsある。Type-IIバンド構造の
  量子ドット層を配置した場合、量子ドットからの発光の減衰時間(注入されるキャリアの寿命)は波
  長1000nm以上の光に対して3~10nsである。

この提案により、太陽電池に高密度かつ一定の高さ範囲の量子ドットを用いることによって、面内方向
に中間バンドを形成し、量子効率の向上とキャリアの長寿命化を実現
することができるという。

 JP 2014-41913 A 2014.3.6

以上、今夜は、特開2014-042077 有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子 国立大学法人鳥取大学
特開2014-041913 太陽電池およびその製造方法 国立大学法人電気通信大学の2件を掲載してきたが
紙面の都合上、下記に今夜の作業背景の資料を参考に掲載してみた。このことから、時代はメガソーラ
ーから→ポスト・メガソーラに着実に移行してきていることの、またこの先端技術の研究と開発のトッ
プランナーに日本に位置していることのご理解の一助になれば幸甚の至りと思う次第である。
る。


●出典(参考)


 

 


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