『激怒』
RAGE(1972年アメリカ)
監督 ジョージ・C・スコット
脚本 フィリップ・フレイドマン
ダン・クレインマン
出演 ジョージ・C・スコット
リチャード・ベースハート
マーチン・シーン
■ストーリー■
羊飼いのダンは息子クリスとキャンプに出かけるが、朝起きると、クリスは意識不明になっていた。そして大量の羊たちの死骸も発見するのだった。病院で精密検査を受けるダンだが、息子のクリスは死んでしまうのだった。ダンはクリスの死を知り、また今回のこの事件にアメリカ軍の化学兵器が関わっていることを知るのだった。病院を脱走したダンの孤独な戦いが始まった。
■感想■
ジョージ・C・スコット監督、主演の社会派映画です。
ジョージ・C・スコットと言って思い出される1番有名なエピソードは『パットン大戦車軍団』(1970年)でアカデミー賞主演男優賞の受賞拒否の件です。
「アカデミー賞みたいな賞が俳優たちを競争させてるとかなんとか」で批判的な意見を持っていたらしいですけど。カッコ良すぎです!
で、そのジョージ・C・スコットが自分で自ら監督、主演したのが、今作『激怒』です。
このストーリーだと、ハリウッド製の娯楽ハードアクションなんて思いがちですけど、製作年度が1972年で、監督がジョージ・C・スコットなんでアクション映画ではありません。
タイトルとおり、まさに怒りの映画です!
ジョージ・C・スコットは、やることもかっこ良ければ、作る映画も骨太な作品。アクション映画を期待して見たら、見終わってから「なんだ、これは!」と思っちゃいますね。でも、見終わってから、考えさせられる作品です。
アメリカのTVシリーズ『Dr刑事クインシー』だったら軍の不正を裁判で暴いて勝訴して終わりなんだろうけど、みんながお茶の間で観るTVシリーズじゃないので、そうはいかないです!いつもの1970年代初頭感がプンプン匂ってくる作品です。
ジョージ・C・スコットといえば、プロの逃走屋を描く傑作サスペンス『ラストラン殺しの一匹狼』(1971年)、リアルな警官物『センチュリアン』(1972年)、特に派手なシーンはない地味目な動物SFなのに見終わったあと感動する『イルカの日』(1973年)等、1970年代は、感動させてくれるような作品にバリバリ出演しまくっていましたっけ。
娯楽作品なのに、今のハリウッドの作品みたいな知能指数を低下させるような作品でなく、“男を描く”ズーンとくるような映画ばかりでした。なんで、ハリウッドも、最近は知能指数低下作品ばかり作るのか、疑問に思っちゃいます。まぁ、万人に受けはするでしょうけどね。
今作もテーマがテーマだけに、“スカッ!”とくるようなアクション映画にできただろうに、あくまでも主人公の“怒り”を中心に物語が描かれていきます。こうした方が、主人公の怒りがより一層、見てる観客に訴えかけてきます。
これが、悪い奴らを、皆殺しにして終りだったら、単なるアクション映画で終わっちゃいますもんね。今作も吹き替えつきでDVD化されないですかねぇ。
まぁ、時代的にそういう作品ばっかりだったっていうこともありますけど、1970年代のニューシネマ風の反骨精神にあふれた作品です。 55点